プライドを捨てた試行錯誤。絶望の冬と共に運転資金は尽きた。【どん底編④】
この記事の続きです。
予定よりも恐ろしいスピードで減っていく運転資金。
不安と焦り……いや、もはや「恐怖」に支配されていた私に、ある知り合いの男性がこんなアドバイスをしてくれました。
「商売としてやっていけなきゃ(利益が出なきゃ)意味がないでしょ? コンセプトとか想いの前に、まずはその施設に来るお客さんに求められてるものを提供すればいいんじゃない? それは何も悪いことじゃない。もっとラクにやりなよ」
その言葉を聞いて、複雑な思いはありましたが、妙に腑に落ちる自分もいました。
「そうだよね……お店を続けられなかったら、何の意味もないもんね」
プライドとコンセプトを捨てる日
私はついに、ある程度のこだわり(プライド)を捨て、ニーズに合った「無理せず出せて、利益が出そうなメニュー」をメインに据える決断をしました。
これまで色々な理由で提供できていなかった「ご飯もの」などのしっかりした食事メニューを、業務用の製品を上手く活用することで提供し始めたのです。
もちろん、最後まで可能な限りこだわりの部分は残したつもりです。
しかし、オープンにあたって全面的にバックアップしてくれた「有力者の方々」にとって、これは到底受け入れがたい方向転換だったと思います。
私の中にも、申し訳なさ、罪悪感、そして大きな恥ずかしさがありました。心苦しくてたまりませんでしたが、背に腹は代えられません。「スタッフの給料を払うため」「借金を返すため」と、前向きに捉えて必死に割り切りました。
元々、協力していただいた有力者の方には本音を言いづらい状態だったため、この頃にはもうほとんど相談することもなくなり、双方ともにフェードアウトしていきました。
先方にとっても、自分が関わったお店が上手くいっていないことや、コンセプトからズレたことをしている状況は、周りに知られたくない事実だったと思います。
束の間の幸せに忍び寄る「冬」
このなりふり構わない方向転換が功を奏したのか、たまたまお客様が増える時期と重なったこともあり、売上は少しだけ回復しました。
スタッフの問題も落ち着き、こんな最悪な状況の店を支えてくれるみんなには感謝の気持ちでいっぱいでした。
さらに、プライベートでは好きな人ができたりと、大変なことは続きながらも、私の精神状態はどん底からだいぶ回復してきていたのです。
「これでなんとか、立て直せるかもしれない」
……しかし、それは残酷なほど「束の間の幸せ」でした。
当初から恐れていた季節がやってきたのです。
その公共施設にとって、来場者がガクンと減る「冬」の到来でした。
底をつく資金、そして地獄の「家族会議」
もう、本当に、びっくりするほどお客様が来ないんです。
毎日が「大赤字」の垂れ流し。
ギリギリで回していた運転資金がついに完全に底をつき、誰かからお金を借りないと支払いができない状態に陥りました。
その窮状を知り、複数の友人が「貸してもいいよ」と声をかけてくれました。
「友人にお金を借りてはいけない、そもそも貸してくれる人なんていない」と思い込んでいた私にとって、その優しさは涙が出るほど有り難く、感動しました。(※最終的に1人の友人から借り、のちに完済しています)
……ですが、それは単なる「焼け石に水」でした。
友人に借りたお金もあっという間に消え、すぐにこの冬を乗り越えられないことが明白になりました。
施設側に掛け合っても良い返事はもらえず、私は再び、深く暗い絶望感へと引きずり込まれていきました。
精神的に追い詰められ、息をするのも苦しい毎日。
そしてついに、家族にすべてを説明せざるを得なくなったのです。
家族には一切相談せず、勝手に2号店を出して多額の借金を背負い、首が回らなくなっている私。
親やきょうだいからは猛烈に責め立てられました。
さらには、きょうだいの配偶者まで巻き込んだ「家族会議」が開かれる事態に。
私は申し訳無さと惨めさと後悔で、苦しくて仕方ありません。
逃げ場のない針のむしろで、ただ下を向くことしかできませんでした。
(つづく)
