「二度と戻りたくない」 24席の店に100人が押し寄せた日。大パニックのオープン初日。
借金1300万円、手作り(すぎる)開業計画書、そしてオープン1ヶ月前の彼氏との破局。
あらゆるものを背負い込み、ボロボロになりながら迎えた20年前のあの日。
ついに、私のカフェがオープンの日を迎えました。
「感動の涙で前が見えない」
……なんて優雅なものではありません。
その日、私が流したのは「冷や汗」と、あまりの過酷さに心が折れかけた「複雑な涙」でした。
この記事↓の続きです。
「田舎だし、平日だし」という油断
オープン当日は火曜日。しかも仏滅ならぬ「大安」でしたが、ど平日です。
場所は、看板も出していない、夜になれば真っ暗になるような田舎の道沿い。
お金をかけた宣伝は一切していない。
「まあ、初日だし、ボチボチやっていこう」
「そんなに忙しくはならないだろう」
私はそう高をくくっていました。
前日まで準備が終わらず、ほぼ徹夜明けの身体でしたが、「なんとかなる」と思っていたのです。
しかし、開店時間の少し前。
外を見たスタッフが慌てて飛んできました。
「凛々子さん、お客様がもう待ってます……!」
24席の店に、100人の来襲
ドアを開けた瞬間から、悪夢(いや、嬉しい悲鳴なのですが)が始まりました。
オープンと同時に満席。
その後もひっきりなしにお客様が来店され、田舎の何もない場所に車が溢れかえりました。
テラス席を含めても24席しかない小さな店に、その日訪れたのは推定100名以上。
なぜ、看板も出していない、わかりにくい場所にこれだけの人が来たのか?
理由は1つではありません。私がやれることは全部やっていたからです。
• 出張カフェ時代の顧客リストへのDM
• 建設中の建物に「オープン日」をデカデカと貼り紙
• 知人のお店に置かせてもらったチラシ
• ブログでカフェができるまでのストーリーを投稿
「田舎には需要がない」なんて言われましたが、建設中の建物を見て「何ができるんだろう?」と気にしていた近隣の方や、ブログを読んで遠くから来てくれた方など、あらゆる「種まき」がこの日に一気に芽を出したのです。
しかし、ここで致命的な問題が発覚します。
「オペレーションが、追いつかない」
崩壊する厨房
スタッフの人数は確保していました。
でも、開業準備に追われすぎて、肝心の「調理・接客トレーニング」がほとんどできていなかったのです。
結果、どうなったか。
「全てのメニューを作れるのが、私しかいない」
オーダーの紙が、見たこともない量で並んでいく。
スタッフはパフェやドリンクの作り方もわからない。
私が指示を出しながら、やれそうなことはやってもらい、料理を作り、盛り付ける。
どう頑張っても物理的に手が足りません。
「料理、まだですか?」
「食後のコーヒーお願いします」
お客様からの催促の声。
焦れば焦るほど手元が狂う。
メニュー数を絞っていたにも関わらず、現場は大混乱に陥りました。
「もう、明日から店を開けられないかも」
ようやく最後のお客様をお見送りし、片付けが終わったのは深夜。
心身ともに限界を超えていました。
7年越しの夢が叶った日なのに、達成感なんて微塵もありません。
あったのは、お客様を待たせてしまった申し訳なさと、自分の準備不足への情けなさ。
「こんなんじゃ、続けていけない……」
厨房の片隅で、大きな不安に押しつぶされそうになりながら、半泣きでパソコンを開きました。
すると、東京で飲食店を経営していた友人や、妹からメールが届いていました。
『オープンおめでとう!』
『凛々子なら大丈夫だよ』
その文字を見た瞬間、張り詰めていた糸が切れ、私は店の中で1人、号泣しました。
何の涙だったのか、明確にはわかりませんが、ひとしきり泣いて、私はまた明日から頑張ろうと気持ちを切り替えたのです。
「奇跡」と「警告」
こうして、私のカフェ店主としての人生は、ドタバタと幕を開けました。
ちなみに、「こんな田舎じゃ無理」「需要がない」という周囲の予想は見事に外れました。
看板も出していない、迷う人続出のわかりにくい場所でも、「価値がある」と思えば人は来てくれる。
それを証明できたことは、大きな自信になりました。
(ただし、「カフェは儲からない」という忠告だけは、悲しいほど的中していましたが……笑)
最後に、未来のオーナーさんへひとつだけ警告を。
私は「運転資金ゼロ」の状態でスタートしました。
これは自殺行為です。絶対にマネしないでください。
もし最初の3ヶ月でお客様が来ていなかったら、即閉店していたでしょう。
奇跡的に10年以上続けられたのは、支えてくれたお客様と、あの初日の地獄を一緒に乗り越えてくれたスタッフがいたからこそ。
ここから先は、夢物語ではありません。
毎日が戦いの連続。
そんな私の「カフェ店主としての12年間のリアル」を、これから少しずつお話ししていこうと思います。
(つづく)
