KOKAMI@network vol.20 「朝日のような夕日をつれて2024」(2024観劇感想その3心に残った舞台①)
10年ぶりの朝日再演!
2024年最大のニュース!
(私界隈ではそうだったので。小劇場好きの皆さんもきっと。)
それでもお金とか時間の都合で観劇は一度きり。
(何度も通われている強者な方々もいらっしゃったようです。いいなあ。)
なので。ちょっと記憶が曖昧だったり、間違って覚えていたりもあるかもしれません。
でもやっぱり、演劇って縁のない人の方が多いかも?
なので。
こんな面白いものもあるんだ!って知っていただければ嬉しいなと思って。
思い切ってお話しすることにしました。
拙い文章ですがお付き合いいただけると嬉しいです。
紀伊國屋ホール開場60周年記念公演 KOKAMI@network vol.20
「朝日のような夕日をつれて2024」
・作・演出 鴻上尚史
・出演 玉置玲央、一色洋平、稲葉友、安西慎太郎、小松準弥
・2024/8/11(日・祝)~9/1(日) 東京・紀伊國屋ホールにて
「朝日のような夕日をつれて」は、第三舞台という劇団の旗揚げ公演です。
1981年に初演、その後2014年までに7回再演。
第三舞台の代表作。作、演出の鴻上さんの代表作と言ってもいいかな?
いわゆる「小劇場」系の舞台の基本というか、ここで一つのスタイルを見せたというか。影響を受けた作品も多いと思います。すごい作品です。
前回もお話ししましたが、
膨大な量のセリフとか時事ネタパロディとか。それをスーツ姿で汗だくになってたった五人で演じます。
運動量もすごいので、演じられる役者さんがなかなかいなくて、という舞台。
今回。全キャスト一新。満を持して10年ぶりの再演です。
1 役者さんのこと。
まずは役者さん。
一新ですから。
後でまた詳しくお話ししますが、物語は二つの世界が交錯して進みます。
「ゴドーの世界」と「おもちゃ会社の世界」。
登場人物は。
「おもちゃ」の方は社長、部長、マーケッター、研究員、医者。
「ゴドー」の方はウラヤマ、エスカワ、ゴドー1、ゴドー2、少年。
なので役者さんはそれぞれ二つの役を受け持っています。
五人の役と役者さんを公式サイトの配役順でお話ししますと。
・部長=ウラヤマ役を玉置玲央さん。
この役は初演からずっと第三舞台の大高洋夫さんが演じてらして。部長と言ったら大高さん!なのですが。
玉置さんはシュッとしてスマートで動きも若い!って感じでしょうか。でも社長におもねるところとか、ちょっとずるい感じとかもいい味出てました。大高さんに近いなと感じたところと、やっぱり玉置さんらしいかなというところとあって魅力的で。
ちなみに玉置さんは2014年版では少年役を演じています。10年前ですね。この中で唯一の「朝日」経験者です。
少年役の時の彼と今と。比較したらまた面白いかも。
・医者=少年役は一色洋平さん。
一色さんは元々「朝日」の大ファンだそうです。もし出られるなら出番の少ない少年役以外がいいなあとおっしゃっていたとか。で。ちゃんと少年役になっちゃうところがいいですよね。
でも少年。出番は少ないけれどキーパーソンで。見せ場もしっかりあって。色々なキャラになりきったりもします。名前は忘れましたがヴァーチャルな女の子のキャラとかすごくナチュラルに可愛く演じてらして。なんかすごいなあと思いました。
一色さんは春に上演された「漸近線、重なれ」の二人芝居も素晴らしくて。そちらでは静かな、あまり心の中を外に出さない朴訥な感じの青年だったので、全然違っていて。その辺りは次回。お話ししますね。
・マーケッター=ゴドー2役に稲葉友さん。
仮面ライダーマッハをされていた方ですよね。そのパロディもちょっとあったみたいです。
声がちょっと低めな感じかも? で他の方達に負けず劣らず全力だけど、何というかおおらかな演技をされる方だなあと思いました。なかなかよかったです。
この役。私は1987年版の筧利夫さんの印象が強いです。すごく力が入った全力のギャグとか。あ、97年版の松重豊さんも全力でしたね。
2014年版ではミュージカルなどにも出演されている伊礼彼方さんがこの役を演じています。またちょっと違った雰囲気があって。
再演を繰り返すと役者さんそれぞれの異なる解釈が見せていただけて楽しいです。
・研究員=ゴドー1役には安西慎太郎さんです。
特にこのゴドー1。セリフ量とか速さとか。本当にすごいので。
この役をできる人はいないかと探して、安西さんの名前が上がったとか。
烏滸がましいかもしれませんが、本当に上手な人だなあと思いました。
安西さんも以前舞台で拝見したことがあるのですが、その時は暗くて悲しい役だったので朝日とは全然違う役で。
一色さんもそうですが、全然違う性格の人物を色々と演じ分けることができるってすごいですね。
・社長=エスカワ役に小松準弥さん。
この役は2回めからずっと第三舞台の小須田康人さんが演じられていました。
小須田さんもそうですが小松さんはさらにスマートな感じかな。ちょっと上品かも?
部長と社長で掛け合いが多いので、玉置さんと二人でテンポよく笑わせてくれました。
五人とも。
とにかくセリフは多いし掛け合いのテンポも早くて。ギャグとかパロディの応酬とかも、ものすごい勢いと力強さを持ってぶつけ合うみたいな。
難しいと思うのですが、みなさん素晴らしく。
キャストが変わっても、変わらない熱量とか強い想いが感じられてよかったです。
2 時代を映すもの。
パロディが多い舞台で、いわゆる時事ネタみたいなものもたくさん入ります。
過激なギャグも多くて。
確か昔のDVDでは、著作権の関係か、映像にできなかったものとかあったようです。
最近の再演では流石にそこまでのネタはないかな?
ゲームやアニメの名前とか、政治的なお話なんかもパロディにしていたり。
今回はマッチングアプリとかVチューバーとか2.5次元舞台とか。
時代を反映していて。
再演するたび、時代に合わせ常に新しく、面白く、過激に。
これ。本当は毎年再演してほしい。
その時々の時代の雰囲気とかみたいなものが見えてきて面白いので。
そんなにやってられないよ大変なんだよって鴻上さんには怒られそうですけど。
3 原点回帰?
群唱とか謎にかっこいい音楽とかダンスとか。
シンプルというか何にもない舞台とか。
その辺は変わっていないなと思いました。
どなたかがブログで、むしろ昔の感じに近くなったとおっしゃっていた方がいました。
原点回帰というか。
キャストの方は一新なので、その辺りの演出は意識してらっしゃるかもしれません。
4 孤独と退屈
物語はサミュエル・ベケットの「ゴドーを待ちながら」が下敷きになっているそうです。そこに、オモチャ会社・立花トーイの物語が交錯して進むのですが。
ベケットの舞台は二人の男性がゴドーを待ち続けるというお話。
ゴドーがどんな存在か明らかにはされないまま、二人はもう行こうか、もう行くよと言いながら、それでもやっぱりゴドーを待つ。でもゴドーは来ない。
という不条理劇。
私は舞台の方は残念ながら観ていなくて。脚本を読みました。
なんというか、残酷な社会や暴力や死を匂わせるセリフや、かなり厳しい皮肉も多く、苦しくて辛い物語でした。
ゴドーは来ない。
救いもありません。
でも。
ゴドーが来ちゃったらどうだろう?
と考えて、鴻上さんは「朝日」を作ったとか。
それも一人じゃなく、二人も。
もうこれだけで面白そうですよね。
面白いけれど。
ゴドーは来たけれど、辛く苦しい気持ちみたいなものは「朝日」の物語の中にも私には強く感じられます。
冒頭。五人は並んで、お客さんに向かって詩のような文章を声を揃えて叫びます。群唱です。
その詩は美しく、孤独が滲んでいて。
物語を象徴していると思います。
朝日のような夕日をつれて
僕は立ち続ける
つなぎあうこともなく
流れあうこともなく
きらめく恒星のように
p.10
おもちゃ会社の物語は、ゴドーの不条理世界に対して、この物語の中の現実世界のように存在している感じなのですが。
(表現が難しいです。二つの物語は交錯していくので。)
朝日では、孤独と同じくらいに退屈という苦しみも強く感じられて。
(ベケットのゴドーも「待ち続ける時間」をどうするかという感覚はあったかな? でも現代の方が退屈という苦しみの負荷は大きい気がします。)
社長や社員たちはおもちゃの開発をする。
それは人が夢中になれるもの、孤独と退屈を紛らわすことができるのものを探しているようにも見えます。
孤独と退屈を紛らわすおもちゃの行き着く先に仮想世界があって。
87年だとちょっとSF的だったかもしれません。それが再演を繰り返した結果、現実世界が追いついてしまったみたいな。脚本もそれに合わせておもちゃの名前とか細かいシステムなどを変えてきているようですが。
現代だと仮想世界のバリエーションがいくつもあって、仮想の世界はより身近になってわかりやすく。むしろ過剰になって飽和しているかも。
ですが人の苦しみは。
孤独と退屈は変わらずに。
激しく馬鹿馬鹿しく諷刺の効いたセリフで大騒ぎしながらも埋められない紛らわせられない孤独と退屈。
舞台上で騒げば騒ぐほど、観る人は大いに笑わされながら、時折見せつけられる痛みに胸が苦しくなる。
言葉の嵐と役者さん五人の全力に殴られる感じ。
初めて見た時の衝撃は長く心に残って。
そんな舞台だと思います。
人々の孤独と退屈は簡単にうめられるものではなくて。
それは何度再演しても変わらない。
そんな気持ちになります。
最後の場面。
再び群唱。
五人は舞台に並んでお客さんに向かって言葉を投げ続けます。
その言葉と役者さんたちの熱量に圧倒されて。
胸に迫ります。
5 みよこさんの孤独
この物語には一人だけ女性が出てきます。
社長のお嬢さんの「みよこ」さん。
これまで私はあまり意識していなかったのですが。
今回、私の感じ方が変化したようで、彼女のことがとても気になりました。
五人の男性の舞台で、唯一の女性。
みんなの大好きなみよこさん。
彼女のことを男性キャストの誰もが好きで。
(社長のお嬢さんなので、社長は父親として愛情を持っているわけですが。)
みよこさんと自分はどれだけ親しいかと互いに比べたり、みよこさんが使ったストローで大騒ぎしたり。
色々と話には出るのですが。
彼女は舞台上には出てきません。
彼女抜きで彼女について大騒ぎする男性たち。
それは意中の異性について語り合う同性の馬鹿騒ぎみたいな楽しさおかしさがあって、笑いどころでもあるのですが。
彼女は語られるだけの存在で。いつも一人で。
新商品開発のアイデアもモニターも影では彼女が動いているのでは? と仄めかされているのですが。
この彼女の孤独。
物語の終わりには彼女の言葉が語られるのですが、そこには圧倒的な孤独があって。
厳しいです。
6 再演なので。
私はDVDで1987年と1997年と2014年版を観ています。
いずれも楽しく面白く。
どれがいいとか比べられるものでもないのですが。
でも再演ですから。そこは比較して楽しむのが醍醐味ですよね。
ということでちょっとだけ。
わたしが大好きな場面があります。
シーン9。ト書きには「休憩時間」の文字。ゴドー1と2が舞台両端に椅子を持ち出して座り、会話を始めます。最初はゆっくり、戸惑いながら、だんだんとテンポよく。でも途切れたり。また盛り上がったり。
ここの掛け合いが良くて。
ゴド1 何か話していいんですよ。
ゴド2 何か話していいんですね。
ゴド1 何から話しましょうか。
ゴド2 何から話しましょうね。
ゴド1 楽しい話はどうでしょうか。
ゴド2 楽しい話はどうでしょうね。
ゴド1 疲れない話しがいいですね。
ゴド2 疲れない話はいいですね。
ゴド1 重たい話は嫌ですね。
ゴド2 重たい話は嫌ですか。
ゴド1 付き合いだけの話は嫌ですか。
ゴド2 付き合いだけの話は嫌ですね。
こんな感じ。
私が初めてDVDで観たのはゴドー1に勝村政信さん、ゴドー2に筧利夫さんでした。
勝村さんはドラマや映画でご活躍されていてご存じの方も多いかな。安西さんのところでお話ししましたが、この役ができる人ってやっぱりすごい人です。
筧さんも力の入った全力のギャグが素晴らしいのですが。
(後の再演で筧さんもゴドー1を演じてらっしゃいます。)
この場面。
掛け合いのテンポの良さはそのままに、すごく穏やかに、優しく、互いに相手を思い合っているような、でもためらいがあったり、時々興が乗ってきたり。
緩急も素晴らしく。
なんだかすごく切なくなってくるのです。
この場面だけでもぜひたくさんの方に観て欲しいのですが。
またこれって。
役者さんの演じ方で印象が結構変わってくると思います。
再演の度に私はここが楽しみで。
今回は安西さんと稲葉さんでした。
勝村さん筧さんとは違った味わいがあって。本当によかったです。
どんな感じか。機会があったらぜひ見てほしい。
ちなみに社長と部長の「休憩」もあるのですが、そちらはこれまでほとんど大高さんと小須田さんだったので。
今回違う役者さんということですごく楽しみでした。
これもぜひ見ていただきたいです。
7 お客さんのこと。
10年ぶりの再演ということで、私の周辺でも大騒ぎでしたが。
初演は1981年の伝説の舞台。
なので年季の入った年配のファンの方が会場にたくさんいらしていました。
開演前に色々とお話しする声が聞こえてきて。なかなか皆さんマニアで。
それはそれで嬉しいのですが。
若い方達はどうかなと。
でも若い人も結構いらしていたかな。
今流行りの2.5次元舞台をギャグにしていたのでその辺どう思うのかなとか心配しましたが。
結構笑ってくださっていたようで。
ものすごく衝撃を受けたという若い方のつぶやきとかもあって。
嬉しいです。
若い方、年配の方。
いろいろな方に観て欲しいです。
8 始まりと終わり
『深呼吸する惑星』のDVDを会場で購入して帰宅後に拝見しました。
第三舞台の封印解除&解散公演です。
第三舞台 封印解除&解散公演「深呼吸する惑星」
・作・演出 鴻上尚史
・出演 筧利夫、長野里美、小須田康人、山下裕子、筒井真理子、高橋一生、大高洋夫

長い休止があって、その後10年ぶりの新作。第三舞台の最終公演でもありました。
演出脚本はもちろん鴻上尚史さん。紀伊國屋ホールで2011年に収録されたものです。
実は上演当時にライビュで観ていたのですが。
久しぶりに観たいなと。
第三舞台の団員の他に、10年以上前のまだ若い高橋一生さんが出演されています。
団員と高橋さん。
年齢の差があって、高橋さんは若さの象徴のような存在で。
過去の幻想として現れる若い頃の輝きと、年老いた現実。
そこになんとか折り合いをつけて、生きていく人たち。
そんなイメージ。
旗揚公演「朝日」から解散公演「深呼吸」へ。
不思議な感覚になりましたが。
やはり「朝日」は若い。
そう思います。
その強く激しいエネルギーと痛さに、尋常ではないそのパワーに、良くも悪くも衝撃を受ける。
忘れられない舞台です。
あ、変わらないものがもう一つありました。
開場した入り口で、お客さんが入っていくのを見守る鴻上さん。
いつもそうしていらっしゃるようです。
私が拝見した時は床に落ちたゴミを拾ってらして。
その続けていく姿勢みたいなものに頭が下がりました。
次回は心に残った舞台②『漸近線、重なれ』です。
朝日の一色さんともう一人、小沢道成さんの二人舞台。
小沢さんは鴻上さんがプロデュースしていた虚構の劇団の方なので鴻上さん繋がりでもありますね。
(小沢さんは『深呼吸する惑星』にも出演されてます。)
脚本は須貝さん。
この舞台。
本当に美しくて切なくて。
宝物のような舞台です。
次回。
2024年観劇感想文その4 心に残った舞台②
一色洋平×小沢道成「漸近線、重なれ」(2024年12月17日公開予定)
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