【前編】なぜ選挙制度を変えねばならないのか ~現行制度の問題点編~
現行制度
選挙制度改革を考える上で、まずは現行制度を知らないと話にならない。まず現行制度とその問題点をおさらいしてみよう。
衆議院
小選挙区(289議席)、拘束名簿式比例代表制(全国11ブロック、ドント式、小選挙区との重複立候補あり、176議席)からなる小選挙区比例代表並立制
任期4年、解散あり
参議院
小選挙区&中選挙区単記非移譲式(148議席)及び非拘束名簿式比例代表制(100議席)
任期6年、3年ごとに半数改選、解散なし
現状の問題点
ではこれらを踏まえた上で一体何が問題とされているのだろうか?それはズバリ、どのような議会を構成したいのか、そうする為にはどのような選挙方式であるべきなのか、という意志の不足である。我が国が議院内閣制を採る以上、下院たる衆議院の役割は内閣の選出であり、上院たる参議院の役割は衆院の補助である。しかし、このどちらも十分に役目を果たしているとは言い難い。
衆議院
衆院は、93年に起きた政権交代によってそれまでの中選挙区単記非移譲式から小選挙区比例代表並立制に変更された。二大政党制の樹立を目指し、最悪とも言っていいそれまでの制度からまともになったこと自体は良かったのが、問題はこれを行ったのが自民党政権ではなく9党連立の細川護熙政権だったということである。
この結果何が起きたか。それこそが過剰な比例枠であり、今もなお尾をひく問題なのだ。現在衆院の総議席数が465議席なことは先述したが、当初は500議席だった。この内比例代表が200議席、小選挙区が300議席である。そう、なんと二大政党制を目指して小選挙区制にしたはずが比例が40%も含まれていたのである!
一応全国11ブロックに分けた上でドント式でやや大政党有利ではあるものの、これでは二大政党制なぞ成立するわけもなく、小政党達も元気に生き残ってしまった。その結果、現在の衆院はアカ共等の10会派が乱立する地獄絵図となってしまったのだ。
挙句の果てには、「政権交代可能な二大政党制」という目標すら達成されず、第一党が単独過半数を占めたのは今までの96年・00年・03年・05年・09年・12年・14年・17年・21年・24年の総選挙10回の内05年~21年の5回と半数に留まってしまっている。
しかも、この内09年は民主党に強烈な風が吹いている時であり、他は公明党のバックアップを受けた上で自民党がなんとか取っているだけで実は平場かつ独力で特定政党が単独過半数というのは何と一回も起きていないのだ。ウェストミンスターシステムなら有り得ない話である。最大600万票とも言われる創〇票が無ければ選挙が成り立たないほど自民党を弱体化させたのもまた現行制度なのである。
また、比例のブロック制度もおかしい。ある程度の足切りになるように設定されたことは理解出来るが、定数が最も多い28議席の比例近畿ブロックと、定数が6議席しかなく最も少ない比例四国ブロックでは当選難易度に天と地ほどの差が生まれてしまっている。
例えば24年衆院選では近畿で3.3%の得票を得た日本保守党は、比例名簿一位の島田洋一衆院議員が当選している。しかし、3.3%では四国ブロックだと箸にも棒にもかからないのだ。四国ブロックで6.7%の得票を得た維新が0議席に留まっているのがその証拠である。
しかも比例復活があるので、例えば惜敗率95%だったが四国ブロック内の選挙区だから比例の議席が無く落選という候補者がいるのに、同じ党内で惜敗率20%なのに近畿ブロック内の選挙区だから復活当選とかいうアホみたいなことが起こってしまうのだ。
他にも、少数政党だと比例ブロック内に数人、酷い場合は一人しか立候補しておらず供託金没収ラインかつ比例復活ラインの20%を超えさえすれば自動的に当選ということさえ有り得てしまう。24年衆院選の国民が顕著だ。
また、ブロックに分けることでそのブロック内の候補が足りず議席が他党に配分されるという事態も起きている。全国区ならば余っている候補もいるにも関わらずだ。05年衆院選の自民、24年衆院選の国民の例がある。
いずれにしろ、比例なのに何故か11ブロックに分けるという謎制度によって引き起こされた問題だ。
また比例制度自体も問題である。拘束名簿式なので、有権者の意志に関わらず名簿上位から当選するシステムだ。いつもは重複立候補した候補が先に当選するので余り顕在化しないが、必ず当選させたい候補を単独1位に据えて選挙前からほぼ当確という芸当が出来てしまう。12年衆院選の維新が比例東京ブロック単独1位に石原慎太郎を据えたのが分かりやすい例だ。
拘束名簿式の問題点は、重複立候補している候補が全員当選して比例単独下位で立候補した議員が当選した場合、全く無責任な議員が生み出されることにもある。小泉旋風が吹き荒れ、議席が比例単独下位候補にもこぼれ落ちて来た05年衆院選において比例南関東ブロック単独35位で出馬し当選、失言を連発した杉村太蔵氏の言葉を贈りたい。
「僕が一番おかしいなと思うのは、僕は議員になりましたけども、『誰だこんな杉村みたいなアホ議員に投票したのは』ってやつがいるんですけど、誰もいないんです!」
「誰ひとり『杉村太蔵』って投票してないのに、衆院議員杉村太蔵が誕生してしまった。この選挙制度は明らかにおかしいんですよね」
参議院
こちらはそもそも憲法に規定されている選挙制度自体が欠陥を抱えている。現行憲法上、必ず3年毎に半数ずつ改選しなければならない。
例えば、A党という新興政党があり、衆院で過半数を獲得し首尾よく政権を獲得したとする。その後の政権運営もそつなくこなし、支持率も好調であとは参院で過半数を得て公約の法案を通すのみとなって参院選を迎え、無事改選124議席の過半数を得た。しかし、これでも過半数には達しない、何故なら3年前の選挙の議席が無いからだ。これはおかしい。
何もこのことは新興政党に限った話ではない。ここで25年参院選終了時の勢力図を見ると、

自民が101議席、維新が19議席で与党で120議席を得ていることが分かる。なお現在自民は100議席だが、元N党の齊藤健一郎議員は自民会派入りしていたこともあり実質与党みたいなものなので変わらない。一見すると過半数まであと5議席でもうちょっとに見えるが、内訳まで探ると話は変わってくる。
現在の参議院は2028年改選組(偶数)と2031年改選組(奇数)に二分されるが、自民党100議席の内28年が61議席、31年改選組が39議席になっている。維新も同様に、28年が12議席、31年が7議席となっている。つまり、自維の議席は双方とも22年参院選の勝利と25年参院選の敗北によって構成されているのだ。
これがどのような結果をもたらすかと言うと、次回の選挙において自民は比例で全50議席中20議席くらいを取り、東京や千葉、北海道等の3人以上の複数人区である程度は2人通した上で、一人区の大半で勝ち、維新は大阪(2人)・京都・兵庫・神奈川・東京で議席を確保した上で25年参院選で野党トップだった国民に匹敵するレベルで比例票を取って初めて現状維持のスタートラインに立てるのだ。
その上で改選過半数ではなく全体の過半数を狙うなら、更にここから沖縄や岩手等の野党の牙城を陥落させ更に比例票だけで与党で過半数取ってやっと届くかどうかである。いかに無理ゲーであるかが分かるだろう。
つまり、次回の選挙の与党は圧勝でやっと現状維持で、改選過半数を獲得し勝っても負けという意味不明な状態になっているのだ。こんな馬鹿げた状況になっているのも半数改選のせいである。
また過半数獲得のハードルも著しく高く、しかも時を経るにつれて複数人区の定員がどんどん増えていくので余計難しくなる。結果特定政党が過半数を占めているのは、89年参院選に自民党がピンクザウルス総理の不倫で大惨敗を喫してから、16年に平野達男が入党しギリギリで過半数を回復するまでなんと26年間の間無かった。しかも、その後の19年参院選で自民党は単独過半数を失ってしまった。その後現在に至るまで過半数を得た政党はいない。
しかもこれでまだ衆院や行政権側でゴリ押せるならともかく、参院は衆院の3分の2を持って再可決しない限り法案を拒否出来る権限を持っているので、一回与党が参院選で負けたら政権交代でもしない限り6年の政治停滞、つまりねじれ国会確定という最悪仕様なのだ。仮に政権交代したとしても結局半数改選なのでどの党も過半数を持っていないという状態になってしまう。もはや詰みだ。
顕著な例が10年参院選で与党で過半数割れしてから12年衆院選で自民党が政権奪還するまでの民主党政権で、通常8割台から9割台の成立率の閣法が思うように成立せず、挙句の果てには、野田内閣で最重要法案と位置付けた消費税増税法案を衆院解散をダシに自公の賛成を仰いで成立させる羽目になった。つまり参院は政治空白製造装置なのだ。
また選挙制度の中身も問題だらけである。
選挙区は、定数74で小選挙区と中選挙区単記制の混合になっているがまずそれが問題である。異なる選挙制度をごちゃ混ぜにしたことで選挙区の定数がたまたま多かったから当選ということが起きてしまう。
例えば25年の京都選挙区(定数2)では、1位の維新候補が2位の自民候補に得票率にして約12%、票数で約19万票の圧倒的な差をつけて勝利し、自民候補が3位の共産候補に対し得票率の差約3%、票数にして約3万票差で辛勝した。
しかし、考えてみると仮にこれが定数1ならば維新のみが当選し自民は当然落選していて、定数3なら共産候補も当選しているのである。つまり、選挙区の定数によって当選難易度が制度として全く変わってきてしまうのだ。これはいただけない。
また選挙区の投票方式そのものも曲者で、複数人区は全て中選挙区単記非移譲式だ。これがどのような結果を招くかと言うと、例えばこうなる。

まず見ての通り、当選者が自民・参政・国民・公明・国民・共産で補欠当選が立憲である。しかし票数を見て欲しい。立候補者の獲得票数を合計すると、
国民ː約122万票(東京選挙区はルッキズム全開なので元女子アナを持ってきた国民が1位なのはそこまで驚くべきことでない)
自民ː約107万票
立憲ː約88万票
参政ː約67万票
公明ː約61万票
共産ː約56万票
となり様相は一変する。つまり本来は立憲が6枠に入り共産が補欠当選枠に回されるべきということになる。ではなぜアカが正規で当選してしまったのか。これはつまるところ中選挙区単記非移譲式のせいである。
この制度の問題点は票数だけで当選者の数が決まらないということである。一体どういうことか。今回の例で言うと、立憲は複数候補を出していることが原因なのだ。ここで票が中途半端に割れてしまった為に両者共倒れの憂き目に合ってしまった。票数なら余裕で一人上位当選させられるにも関わらずだ。
一方自民は高齢でかつ反サロの集中砲火にあった武見敬三が惨敗し、元スポーツ庁長官で見た目が良い鈴木大地がルッキズムの風に乗り票が偏った為一人当選している。そして国民は両方見た目が良く票割りがうまく行った為二人通せている。
つまりこの制度、何人擁立させるかと票割りで大半が決まり、何なら票数よりこっちの方が大事なのだ。こんな馬鹿な話は無い。こんなふざけた制度は即刻廃止すべきである。
そもそも93年の政権交代後の政治改革において、衆院でも採用されていたこの中選挙区単記非移譲式が同一党の候補同士の争いによる汚職を招き、金権政治の温床となるとして廃止されたのに、何故か現在に至るまで参院では生き残っていることの方がおかしいのだ。
また参院は全体として選挙制度の限界を迎えている。比例50・選挙区74の枠組み内で調整をした場合、一票の格差に配慮した定数の調整が最早不可能になってしまった。この結果、選挙区は原則都道府県単位なのにも関わらず、一票の格差が3倍を超過した為に人口ワースト4位の鳥取・島根と徳島・高知で合区が発生してしまっている。
また現在人口が定数比最小の福井選挙区と定数比最大の宮城選挙区では一票の格差が既に3倍を超過しており、既に違憲状態判決もチラホラ出ている以上、惰性で現行制度やその焼き直しで誤魔化すことは困難である。
比例区においても、まず非拘束名簿式である為、知名度と組織票が猛威を振るい、タレント議員や労組等の圧力団体の組織内議員だらけである。おまけに定数50で阻止条項の類が無い為、政党要件の得票率2%付近の得票で一人当選者を出せてしまう。これが問題で、新興極端政党メーカーとなっているのだ。因みに参院比例で初めて政党要件を得た政党と、参院比例で当選した主な議員は以下の通りである。
・NHKから国民を守る党
・れいわ新選組
・参政党
・チームみらい
・立花孝志(前科持ち・拘留中)
・ガーシー(前科持ち)
・アントニオ猪木
・水道橋博士
・伊勢崎賢治
・神谷宗幣
・安藤裕(不倫・ハゲ)
・百田尚樹(ハゲ)
・北村晴男
・自見はな子(日本医師会)
・福島瑞穂
・ラサール石井
・安野貴博
…もう何も説明しなくても分かるだろう。一応言っておくが、この項にチームみらいを中傷する意図はない。ただ巻き込まれただけである。
いずれにしろ、参院の根本からの選挙制度の改革は急務である。そもそも選挙制度的に過半数を取りづらい・3年毎に半数改選なので変化しにくい・拒否権が強いの三重苦を早急に改善しなければならない。
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