【後編】なぜ選挙制度を変えなければならないのか ~具体的な改善策編~
↑これの続きです
前編の概略・前置き
前編においては、現在の日本の選挙制度とその問題点について主に論じた。後編では、これらの事実を踏まえた上で具体的な選挙制度改革案とその内容について説明する。
選挙制度改革において、障害となるのが日本国憲法である。これがある限り、根本的な改革は難しい。少なくとも、
・衆院は任期4年、解散あり
・参院は任期6年、解散なし、半数改選
・衆院の優越は首班指名・予算及び条約の承認、又は三分の二を以て再可決した法律案に限る
・双方とも一票の格差を無視出来ず、また全て民選でなければならない
という大枠は変えられない。
よって、ここでは現行憲法下においての改革案と、改憲を前提とした抜本的改革案の二つを提示する。
現行憲法下での改革案
衆議院
再可決が三分の二を要する以上、衆議院の選挙制度は第一党に莫大な議席を与え得るものであるべきだ。よって完全小選挙区制を採るべきである。定数は現在が465であることを鑑みて、450~500程度でいいだろう。
これによる副次的な効果で、選挙区数が289から1.5倍以上飛躍的に増えることにより、鳥取や島根等の選挙区の人口が極めて少ない問題や、北海道の奥地等で選挙区の面積が広くなりすぎる問題が解消される。また、れ共社や参政党等の極端な勢力をほとんど放逐出来るのも良い。恐らく自民・立憲(尻尾を振るなら国民)・維新の三大政党制になるだろう。
参議院
こちらも、現行の過半数を極めて得にくい状況を改善しなければならない。それを踏まえた上で、都道府県毎の地方の意見の反映、中選挙区単記非移譲式という歴史上稀に見る最悪のカスなゴミ制度を破壊するという点を鑑みると、定数200で半数改選が100、全て選挙区というのが適当だろう。選挙ごとに見ても、現行の74から26も増える。これならば鳥取・島根や徳島・高知の合区を廃止することが出来る。また、中選挙区完全連記制にすることで、大政党有利かつ共倒れを防止する。これによって、単独過半数を獲得し得る状況にする。
改憲する場合
具体的な内容
まず改憲するとなった時、具体的な条項はどれかとなると、
憲法第四十三条「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」(一票の格差)
憲法第四十五条「参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する」(半数改選)
憲法第五十九条「衆議院可決後に参議院で否決され返付された衆議院議決案を衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再可決すれば法律となる。衆議院可決案の受領後六十日以内に参議院が議決しない場合、衆議院は参議院が法案を否決したとみなすことができる」(衆議院の優越)
これらを改正する前提で、選挙制度に関し完全にフリーハンドを得た上での案を以下に記す。
衆議院
前提として、衆議院は議院内閣制に基づき政権選択かつ政権を構成する院であり、参議院はそれに歯止めをかけ、他の視点を提供する院であるべきだ。
それを鑑みた上で、前編でも記した通り衆院は過半数を獲得しやすくすべきだ。しかし、今回の場合は改憲が前提なので衆院の再可決には三分の二を要しない。別に五分の三でも過半数でも良いわけで、こうなると別に前編のような単純小選挙区制にそこまでこだわらなくても良くなる。
むしろ、ある程度多様な民意の反映というのも考慮すべきで、そうなると現行の小選挙区比例代表並立制が最適解となる。
ただ、制度の中身については更に吟味したい。まず、現行は前編でも記した通り定数465の小選挙区289比例176だが、この定数をまず国会の物理的な収容人数の限界の635議席まで増やし、一票の格差の完全な解消を目指す。
そして小選挙区500、比例135と割り振り、現行より選挙区の割合を拡大して過半数を獲得しやすくすべきだ。
また、比例代表制についても、これまた前編でも述べた通り、同じ党内で比例復活出来る惜敗率に格差をもたらし、またブロック間で当選できる足切りの得票率に著しい格差をもたらす全国11ブロック制を廃止し、代わりに全国公平に、かつ多党分立を防止する阻止条項5%を設けた全国比例を設けるべきだ。これならば過度な多党分立を防ぎつつ、イギリスやアメリカのような二大政党への極端な偏りを防ぐことが出来る。これは、ブロックごとによって当選ラインたる惜敗率は違うという問題をも同時に解決出来る。
参議院
参議院は「良識の府」と呼ばれているが、現在は犯罪者と芸能人と利権議員の巣窟と化している。本来このようなことを想定して参院は作られたわけではない。
参院は果たすべき役割は、
・衆院では拾いきれない少数の民意
・人口の少ない地方の意見の代弁
・任期が固定であることを活かした安定的で専門的な議員の見識の提供
であるはずだ。
これを鑑みて、参院の選挙制度を三つに分けることを提案したい。
第一に、都道府県選出の議員である。地方の意見を反映することを目的として、都道府県毎に1議席ずつ割り振り定数47とする。都市部の都道府県が文句を言うようなら3くらいは割り振ってそこだけ定数2にしてもいいかもしれない。
選出方法は、都道府県議会での互選や直接選挙が考えられる。直接選挙の場合は、都道府県知事の選出方法を首相と同様にした上で、現行の知事の選挙をそっくりそのまま参院議員選挙に入れ替えるという案も考えられる。この場合、任期は四年が良いだろう。統一地方選と同時に行えば投票率の向上やコスト削減も見込める。
第二に、全国比例代表の議員である。定数は100とし、あえて阻止条項は設けない。多様な民意を汲み取ることを目的とし、これと第一の選挙制度と合わせ衆院選挙制度改革議論で必ず現れる地方の意見ガー論者と少数意見の尊重ガー論者を完全に粉砕する。非拘束名簿式とするが、あらかじめ特定の団体の推薦を受けることを禁止し、利権団体の排除に繋げる。
任期はこちらも四年が適当だろう。六年はあまりにも長すぎる。なにしろ執筆時点(令和八年一月)の六年前といえば、武漢で謎の新型肺炎がどうも出たらしい、というような頃である。とんでもない昔だ。
第三に、勅選の議員である。定数は200ぐらいだろうか。まあそもそも「勅選」とは何ぞやという話だが、要するに天皇が選ぶのである!
「は?お前頭Empire of Japanかよ!?」
と思った方もいられるかもしれないが、落ち着いて欲しい。
勿論天皇が自由意志で全国民から選ぶわけではなく、いわゆる職能議員の形をとる。これは参院の前身の貴族院の例がある。先の大戦の後、GHQが進駐してきてからは貴族院の名の通り議員の大半を占めていた貴族、つまり華族の議員はほとんど姿を消した。
代わって頭角を現したのが新たに貴族院議員に任命された議員達である。この議員達と元からいた有識者の勅選議員は、法学等の専門家だったり元官僚であったりで、当時行われていた日本国憲法の議論にも携わっていた(勿論GHQの絶大な圧力はあるが)。
このような、衆院の意向とは必ずしも一致しない専門家の見識を安定的に供給することこそ、第一院の暴走を防ぐという二院制においての第二院の最大の役割を果たすことに繋がる。
理想はイギリスの貴族院である。かの国には「壊れていない物は直すな」という格言があるように、未だに勅選による貴族院が存続している。そしてその中身は、大半が一代貴族、つまり何かしらの専門家である。これらによって庶民院(下院、日本で言う衆院)から降ろされてきた法案を専門的見地から徹底的に吟味することで法案が完成される。これこそ、まさに「良識の府」であり、参院がめざすべき理想像ではないだろうか。
まとめ
・衆院は定数635議席とし、小選挙区500・比例135と割り振る
・参院は定数347議席とし、勅選200・比例100・小選挙区(若しくは都道府県議会の互選)47と割り振る
なぜ選挙制度を変えなければならないのか・完
次回は多分「Wikipediaは本当に信頼出来ないのか?」で書きます
Coming Soon…
