【特別編】補助金行政の転換点に立って──補助金等適正化法・行政手続法を読み解いて見えた提言
私たちは今、補助金行政の大きな曲がり角に立っています。
事業再構築補助金を巡る一連の訴訟、そしてその中で読み解いた「補助金等適正化法」と「行政手続法」の条文。これらを弁護士と共に徹底的に読み込んだことで、これまで漠然と感じていた「おかしさ」が、明確な法的な問題として輪郭を帯びてきました。
今回は、その気づきをもとに、補助金制度が今後どうあるべきかを、現場に関わる支援者の一人として、提言の形でまとめたいと思います。
「採択=交付されるわけではない」の欺瞞
事業再構築補助金では、公募申請→審査→公募採択→交付申請→交付決定という段階的なプロセスが採られています。
一見すると透明で公平な制度に見えますが、問題は「公募採択後」で起こります。
交付申請に進んだ後、「補助金交付候補者」という法的根拠のない中間的な地位に置かれた事業者が、以下のような理由で補正の機会も与えられず、申請自体を辞退させられるケースが後を絶ちません。
既存事業にも転用できるのではないかという懸念
経費項目に不適切な点があるとされた
事業期間に間に合わない「おそれがある」という予断
しかし、「補助金交付候補者」などという地位は、補助金等適正化法にも行政手続法にも一切登場しない概念です。
またそもそもこの後にも説明しますが、コンペをする「公募申請」という行為は、補助金適正化法のどこを読んでも出てこない行政手続きなのです。
行政手続法・補助金等適正化法の観点から見た問題点
実務を追っているだけでは見えてこなかったことも、法律を照らし合わせると明らかになります。
● 理由提示義務の不履行(補適法第21条の2)
補助金等適正化法では、交付をしない・取り消すといった決定には理由を記載した文書を交付しなければならないと明記されています。
しかし、実際には採択後に辞退を誘導されたり、却下された事業者に対して正式な文書通知が届いていないケースがほとんどです。
また、公募不採択についても同様に何ら書類の通知がありません。
● 不服申立ての教示欠如(補適法第25条)
不服がある場合は行政不服審査法や行政事件訴訟法による申立てが可能であることが定められていますが、その旨の教示が一切ない。
交付候補者に留め置くことで、制度的に処分対象にしないまま排除している実態があります。
● 補正の機会の未提供(行政手続法第8条)
本来、公募申請であろうと交付申請であろうと申請に不備があれば、まずは補正を求めることが義務づけられています。
しかしながら、公募申請者も交付候補者にはこの「補正の機会」すら与えられていないという例が多数確認されています。
また支援者のみなさんも経験した交付申請中の「事業計画書の修正は認めない」という事務局の発言も違法な手続きの可能性があります。
他省庁の補助金制度との比較で見える「異常性」
経済産業省の補助金(例:事業再構築、ものづくり補助金)は、あたかも「競争型公募」が当然のように運用されています。
ですが、以下のような他省庁の補助金と比較すると、むしろ異常なのは経済産業省型の方です。
農林水産省の補助金(の多く)では、申請前に地方自治体や担当官庁との打ち合わせ(補正)を経て交付申請が行われ、申請=交付という形が基本です。
エコカー補助金などの一般型補助金も、「申請要件を満たせば原則交付」であり、ディーラー等による補正や事務支援が前提になっています。
このような他制度では、補助金が権利性を帯びた「給付」であるという本来の趣旨が明確にされているのに対し、経産省型補助金は採択=抽選・選抜の演出のもとで、法律上の根拠なき拒否が多数行われているのです。
私たち支援者が提案する「補助金制度の構造改革」
とはいえ、あれだけの膨大な件数を逐一公務員が補正せよというのは、無理もありますし、補助金行政の効率な運用が図れないことには、経済対策としての政策的な意義も薄くなってしまいます。
そこで現場で中小企業を支援する中小企業診断士、認定支援機関として、私は次のような制度改革を提言します。
◎ 採択・交付の段階を分離する制度からの脱却
採択は「審査」ではなく「事前相談」へ
交付申請時点での適否判断が明確にされるべき
◎ 補助金等適正化法の徹底適用と手続保障の導入
交付却下・取消には必ず理由提示を行う
不服申立ての教示義務を明記する
審査過程での補正の機会を保証する
◎ 中小企業診断士・支援機関の制度内位置づけの明確化
専門家による事前補正支援を制度化し、補助金の公正な執行を担保
新たな支援市場としての発展性を確保(異議申立支援等)
これらが実現すると私たちの業界や中小企業支援政策の一台転換点となりうる大きなこととなり、チャレンジしてみる甲斐はあると思います。
補助金制度の信頼回復に向けて
補助金行政の世界は、制度設計をする省庁、実施を担う機構、そして現場で悩みながら申請・辞退・不服申立てを繰り返す事業者で構成されています。
私たち支援者は、現場の声を言葉にし、構造的課題として提起して、常に良いものに変えていく責任があります。
法に沿って、透明に、そして公正に──。
それが、補助金が本来持つはずの「支援」という使命を全うするための唯一の道であると信じています。
