No.3:古民家を「簡易宿所」にしたい人が、覚悟しておくべき話――民泊より自由。でも、その分だけ責任が重い
これは 「本気で古民家を“宿”としてやりたい人」向けの深掘り編です。
民泊新法との違いを明確にし、
簡易宿所で“止まる人・通る人”の分かれ目を、現実ベースで書きます。
古民家 × 簡易宿所は、
地域にも、建物にも、相性がいいケースが多い。
でも――
ここで、はっきり言っておきます。
簡易宿所は、
「民泊の延長」ではありません。
まったく別の世界です。
1.簡易宿所とは何か(民泊との決定的な違い)
まず整理します。
簡易宿所とは
旅館業法に基づく「宿泊施設」
年間日数の制限なし
営業としての宿
つまり、
「住宅の延長」ではなく、
「公に人を泊める施設」
として扱われます。
民泊新法との一番大きな違い

👉自由度が上がる代わりに、責任も一段階上がる
2.簡易宿所で一気に厳しくなるポイント
① 「不特定多数」が前提になる
簡易宿所では、
誰が泊まるかわからない
建物を知らない
夜間に避難が必要な可能性
これが前提です。
その結果、
建物を見る目が変わります。
② 建築基準法の扱いが重くなる
簡易宿所は、
用途上「特殊建築物」扱いになるケースが多い。
これが意味するのは、
避難
内装制限
区画
階段
などが、
住宅よりも厳しく問われるということ。
3.200㎡の壁は、ここでも効いてくる
簡易宿所でも、
延べ面積200㎡は一つの分かれ目です。
200㎡以下の場合
建築確認が不要なケースもある
ただし「協議なしでOK」ではない
200㎡超の場合
建築確認がほぼ必須
設計・申請の難易度が一段上がる
👉「古民家は小さいから大丈夫」
この思い込みは、かなり危険です。
4.2階建て古民家が、最大の難所になる理由
簡易宿所で最も止まるのが、
2階建て古民家です。
問題① 階段はほぼ確実に指摘される
幅が足りない
勾配が急
蹴上・踏面が不適合
手すりがない
住宅では黙認されていた階段が、
簡易宿所では「不適合」として表に出ます。
問題② 2階に客を泊めるかどうか
ここが最大の判断ポイントです。
2階も客室にする
→ 要求水準が一気に上がる2階は完全に使わない
→ 施錠・表示・運用まで求められる
👉「2階をどう扱うか」で、
事業の難易度が変わる
問題③ 避難のリアリティ
簡易宿所では、
「実際に逃げられるか」
が問われます。
夜
雨
初めて来た人
高齢者・子ども
これを想定した時、
昔の造りが、そのまま通ることは稀です。
5.簡易宿所は「消防」が最大の関門
正直に言います。
簡易宿所の最大の壁は、
建築より 消防 です。
よく求められるもの
自動火災報知設備
誘導灯
非常照明
消火器
区画(場合によっては)
これらは、
建物規模
客室数
階数
によって変わります。
👉事前に消防と話さない簡易宿所計画は、ほぼ破綻します。
6.古民家簡易宿所で、よくある「失敗パターン」
❌ 失敗①
民泊と同じ感覚で進める
→ 要求水準が違いすぎる
❌ 失敗②
「最低限で通そう」とする
→ 消防・保健所で止まる
❌ 失敗③
工事してから相談
→ やり直しが発生
7.それでも、簡易宿所を選ぶ価値はあるか?
答えは、
YES。ただし条件付きです。
向いているケース
平屋中心
客室数が少ない
地域性・物語性が強い
長く続ける覚悟がある
向かないケース
2階建てフル活用
最小コスト重視
短期回収前提
8.正しい進め方(これは順番が命)
民泊ではなく簡易宿所を選ぶ理由を明確に
建物の階数・規模を整理
保健所・消防に事前相談
その結果を踏まえて設計
それから工事
👉「設計より前に、相談」
これが簡易宿所の鉄則です。
9.最後に、一番伝えたいこと
簡易宿所は、
古民家を
「使わせてもらう」のではなく、
「預かる」覚悟が必要な事業
です。
自由度が高い分、
責任も、目線も、一段上がる。
まとめ
古民家を簡易宿所にするということは、
建物を直すことではなく、
“他人の夜を預かる場所”をつくることなのだと思います。
HIROHOUSE 一級建築士事務所 代表:原口 良裕
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