【実録】「それっぽい正論」では人は動かない。優秀な若手の罠と、1通の絶縁メールから現場を立て直した話
こんにちは、SHINです。 大手企業で新規事業マネージャーを務める傍ら、仕事の修羅場や人生の失敗から得た泥臭い「一次情報」を使って、現場やキャリアを「立て直す」ための実践知を発信しています。
先日、私のチームから一人の非常に優秀なメンバーが、新たな挑戦のために旅立っていきました。 彼は圧倒的に前のめりで、目標意識が高く、泥臭い努力も厭わない。間違いなく、私たちの事業を力強く推進してくれたエースでした。
しかし一方で、彼はその優秀さゆえの「危うさ」も抱えていました。
転職に向けた有休消化の際、残されるチームへの事前相談なくスケジュールを入れたり。他部署との調整において、直属のメンバーを差し置いて上の役職者と直接話を進めてしまったり。あるいは、後輩が「なぜできないのか」が理解できず、指導がおろそかになってしまったり……。
ルール上、あるいは効率という面において、彼の行動はデータ上「正しい」のです。 しかし、その「綺麗事の正論」を振りかざす不器用な彼の姿は、リーダーになりたての頃の「かつての私」と痛いほど重なりました。
今日は、私が過去の修羅場で犯した痛烈な失敗と、優秀な彼が次の職場でつまずかないよう最後に贈った言葉を、自戒を込めて書き留めておきます。
「すべてが見えている」という傲慢
私が初めてチームリーダーになった時のことです。 当時の私は、傲慢にも「自分は仕事のすべてが見えている」と勘違いしていました。現場のメンバーの動き、資料の不備、論理の穴、そのすべてが瞬時にわかり、的確に指摘できる状態でした。
ある時、私の尊敬する先輩がチームの支援のために来てくれました。 先輩の仕事は素晴らしかったのですが、当時の私の目には、ほんのわずかな方向性のズレや、言葉の選び方の甘さが気になりました。
私はあろうことか、その些細なズレをみんなの前で指摘し、あえて「笑い」のネタにしました。
私と先輩は昔からの仲でした。だから、これは場を和ませるリーダーとしての「ユーモア」だと思い込んでいたのです。しかし、それは私が勝手に作り上げた「綺麗事」の幻想に過ぎませんでした。
綺麗事が通じない現場の一次情報:「1通の絶縁メール」
ある日、突然1通のメールが届きました。 あの先輩からでした。
そこに書かれていたのは、私との関係を断つ「絶縁」の言葉。
「リーダーとして、人を茶化したりそんな態度であるなら、人は誰もついてこない」
怒りではなく、静かな、そして決定的な失望でした。 私は、自分のために泥臭く動いてくれた恩人のプライドを、自分の未熟な承認欲求と「勘違いの笑い」のために、公衆の面前で傷つけていたのです。
私はそこで、骨の髄まで思い知りました。 個人の能力が高く、データや論理で正解が見えているからといって、人が動くわけではない。「それっぽい正論」だけでは、人は絶対についてこないのだと。
人生における大きな失敗でした。しかし、この強烈で泥臭い「一次情報」こそが、その後の私のマネジメントを根底から立て直してくれました。
優秀な若手が現場で孤立しないための「3つの約束」
最終出社日の1on1で、私は彼に自分のこの「絶縁メール」の失敗談をすべて話しました。
「君は優秀だ。だからこそ、周りが『なぜできないのか』もどかしくなったり、話の早い上の立場の人とだけ仕事を進めたくなる気持ちは痛いほどわかる。でも、自分の『正しさ』や『能力』だけで突っ走ると、必ずどこかで、私のように大切な人を傷つけ、誰も助けてくれない壁にぶつかる時が来る」
商談やチームメイクの修羅場に飛び込む彼に、キャリアをしっかりと立て直していくための3つのアクションを約束してもらいました。
1. 焦らず、まずは現場の「泥臭い情報」をとりにいく
転職先に入ったら、すぐに成果を出して自分の実力を証明したくなるもの。しかし、絶対に急ぎすぎないこと。周囲を飛び越えるのではなく、まずは同じグループのメンバーとよく話し、彼らを知り、相談する関係性を作ること。
2. 主役は自分ではなく「相手」にする
インサイドセールス、SE、カスタマーサクセスなど、これから自分の成果を共に泥臭く実現してくれる皆さんと同席した際は、自分をアピールしないこと。「相手の話に耳を傾け、笑顔で接すること」に徹すること。
3. どんな時も「挨拶」という最強の基礎を怠らない
どんなに能力が高くても、挨拶や謙虚さがなければ信頼の土台は築けない。毎日しっかり挨拶をすること。
さいごに:「正解」が早く見える時ほど、一番危うい
人が動いてくれるのは、そこに「相手への敬意」がある時だけです。
相手に寄り添い、現場の泥臭い声を聞き、周囲に相談すること。それは決してスピードを落とす足かせではありません。周囲の「心」を味方につけ、事業をより大きく前進させるための、リーダーとしての高度な「器量」なのです。
そしてこれは、今回旅立った優秀な彼だけの話ではありません。
ビジネスで経験を積み、マネジメントの立場に近づくほど、私たちは現場の「正解(データ上の正論)」が誰よりも早く、クリアに見えるようになります。
しかし、自分の目に正解が早く見えている時ほど、実は一番危うい時なのです。
「正しいのだから、言う通りに動くべきだ」 「なぜ、こんな論理的なことがわからないんだ」
もし今、あなたの頭にそんな苛立ちがよぎっているとしたら。 それは、かつての私のように、知らず知らずのうちに現場の「心」を置き去りにし、大切な信頼を切り捨てているサインかもしれません。
今、あなたが職場で振りかざしている「正論」には、相手への敬意が伴っているでしょうか? 効率や正しさを優先するあまり、身近な味方のプライドを「いじり」や「配慮のない指摘」で削っていませんか?
かつて私が修羅場で負った痛烈な傷が、彼の、そして今この記事を読んでくださっているあなたの現場を「立て直す」ための、小さなヒントになれば嬉しいです。
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