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9月の月は赤い月【ゆるっとリレー小説1年A組|書く部スピンオフ・第1話】

このお話は、以下の企画、その第一話となります。



下駄箱や机の中にそっとしまわれていたとか、皆が下校した夕方に二人っきりの場面で手渡されるとか。

それならロマンがあるというもの。でも現実はいつも理想を裏切っていく。このやりきれなさを、どこにぶつければいいのか。

「なーに、ブツブツ言ってるの?学校で壁打ち? 啓太、文化部じゃん。いつから体育会系にクラスチェンジしたわけ?」

校内一、分かっていないヤツに、そう言われた。

「お前……これはなんだ」
「見ればわかるでしょ?メッセージ、お手紙、別名・呼出状?」
「果たし状かよ」

陽子が俺に差し出したのは、レポート用紙。それを半分に折った紙。「今日の放課後、部室で待っている」、その内容を書いた紙切れを、その部室で渡してどうするつもりだ。

「机の中に入れておくとか、そういうのはないのかよ」
「まどろっこしくない?そういうの」
「待つと指定した場所で手渡す手紙の意味は?」

俺の言葉を聞いて、陽子はカラカラと笑い声をあげた。陽子の答えは、

「結果オーライ、でいいじゃない」

やっぱり、意味が分からなかった。

陽子が笑いを止めて押し黙る。少しうつむく表情。それは、これまでに見たことがない顔だった。

どうした、と声をかける前に、陽子が俺の名を呼んだ。

「あのさ……啓太。ううん、水野部長。教えてほしいの、月の撮り方。皆既月蝕かいきげっしょくの撮影方法」
「皆既月蝕?突然どうしたよ」
「うん。9月に皆既月蝕があるでしょ?今回はどうしても自分のカメラに収めたいんだ。赤い月を」

啓太、小学生だったのにバッチリ撮ったじゃない。2018年冬の皆既月蝕。あれ、すごく綺麗だったから、私も撮りたいの。

7年前の冬。寒空の下で、寒さも忘れて夢中でシャッターを切り続けた。相棒はお年玉をつぎ込んだ一眼レフ。あの冬、あの夜が、俺の天体写真、そのはじまりだった。

「啓太にとっては、月撮影は星を撮る内に入らないんだろうけどさ」
「何言ってんだ、陽子。いいか、月は【肉眼で観ることができる】、1番俺たちに近い星なんだ。……師匠と仰ぐフォトグラファーの受け売りだけどな」

俺の言葉に陽子は笑ってうなずいた。「そうだったよね」と言って。彼女のいつもと変わらぬ声に少しほっとして、俺は申し出を受けようと、陽子へと一歩足を踏み出す。天文部部長・水野啓太として、部員・町田陽子の言葉に応えるために。

その時、カタン、と小さな音がして、何かが揺れた。

細長く幅の狭い部室の机から、落ちそうになったもの。反射的に出た手でそれを受け止める。

「あ……それ」
「あ、悪い。傷とかはついてないと思う。落ちそうだったから」

勝手に触って悪い、と謝ろうとする前に、陽子の言葉が続けられる。

「あれが入ってるんだ、この中に。あの冬、啓太の写真、SDカードにコピーして私にくれたでしょ?そのカードが入っているの」

綺麗な模様で彩られた、宝石箱のような箱。俺が差し出した箱を受け取って、陽子の言葉が続いた。

「開けてみて?一緒に観たい、あのときの赤い月」


(本文1213字)

第二走者のきりんさんへ:
星ネタ、等盛り込みましたが(あくまで舞台小道具的なので)、囚われず自由にお書きくださいませ(*ᴗˬᴗ)⁾⁾ よろしくお願い申し上げます。


目次記事:


参考:
拙い撮影ですが、2018に私が撮影した皆既月蝕の写真を貼っておきます👇


時間を変えて撮影した月の写真を一枚に連結合成したものです。 旧Olympus OM-E-10 MarkⅡ にて撮影。

2025.09の皆既月蝕、解説をしておられるXのポストを👇

#ゆるっとリレー小説

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春永睦月 拙稿をお心のどこかに置いて頂ければ、これ以上の喜びはありません。ありがとうございます。