【#創作大賞2024】ドシャえもん最終話
いえね、最初からちょっと訳アリなのはわかっていました。でもまさか、あんた、自分の亭主を殺しているなんて思うわけないじゃないですか。
このアパートは夫が世間に受け入れられにくい人のためにって建てたものなんですよ。だから自然と訳アリなのが集まって来るんです。どこかで受け皿がないと、はみ出した人達の行き場がなくなるでしょ。お役所にばかり頼ってたって生きていけやしないんですよ。自分で生きて行こうって気持ちが必要なんです。だからせめて衣食住の「住」だけは提供してやろうと。住めるところは用意してやるから後は自分の力でなんとかしろって。夫はそういう人だったんですよ。だから、私もそれを守って入居者は断らないようにしています。
もちろん、入居させました、はいおしまい、だなんてことはしませんよ。ちょうどいい塩梅のところで声をかけてやるんです。自分で生きて行く気力が出やすいように。世の中の理不尽に負けないようにってね。そうやって守ってきたアパートでねえ、こんな事件が起きるなんて。さすがの私も今回ばかりは弱りましたね。
あの親子ですか?なんか役所の方で世話をするって言ってましたね。父親に少し発達の遅れがあるとか言ってましたけど、あの子はちゃんと子どものことは可愛がってましたよ。でもね、誤解されやすいんです。きっと損ばかりして生きてきたに違いませんよ。可愛がり方とか社会のルールとか知らずにデカくなったんでしょうねぇ。子どものうちに親じゃなくてもいいから大人が声をかけてあげれば、誤解されるような人生は歩んで来なかったはずです。もしね、あの親子が一緒に住むっていうならうちで引き受けてもいいんですが、私がそれまで持つかどうか。
市川さんにもインタビューがしたいですって?このアパートには深沢さんと向井さんしか住んでいませんでしたよ。いくら安くても古くて幽霊が出そうだって若い人が最近、近寄らないんですよ。え?向井さんが市川さんに深沢親子に関わるなと言われたって弁護士に言っているですって?やだもう、記者さんったら。うちは本当に2部屋しか貸して……。
だって、ほら、市川さんって何年も前に。
……。
そろそろ建て替えるか手放すか考えないといけないのかねぇ。
おわり
