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【#シロクマ文芸部6月②】真保町のポンコツ魔女・1

シロクマ文芸部の1カ月の全お題を使って一つの物語を作っています。レギュラー部員は月初めにお題を全部教えてもらえるので思いつきました。第1回目は20字小説、2回目以降は文字数制限のないお話というスタイルで毎月挑戦中です。

上記プラス、おばあさんが読み聞かせをするというスタイルを今年は取ることにしました。そのため、シロクマ文芸部のお題から始まる部分が読み聞かせとなり、その後に会話が続く形で物語が展開します。2025年、12個のお話を上手く完成させられるか、お付き合いいただければ幸いです。

6月の物語1回目はこちら👇

海の猫、ウミネコがハンカチから出てくるはずだったのに。出てきたのは海の家で飼われている

「ぎゃはは!また失敗してる!」
「確かに海の猫かもしれないけどさw」

友達の魔女、ドリーとエルも大笑い。

「そんなに笑わないで!」

リドルは頬を膨らませた。ここ真保町は美しい砂浜と海で夏場は多くの人で賑わう。夏以外も夕焼けに映える海の美しさが人気で、1年中一定数の観光客が訪れる。そのため、複数の海の家が1年中浜辺で営業していた。常設店舗なので、犬や猫などペットを飼う店もある。看板犬や看板猫見たさに、訪れる客も少なくない。今回リドルのハンカチから出てきたのは、その中の1匹というわけ。

「wwwww……お腹痛いぃ」
「どうせ、焼きそば食べたいとか思っていたんでしょw」

「……違うもん」

ハンカチに魔法をかける時に、確かにソースのかぐわしい香りが鼻をくすぐりはした。と同時に「焼きそば用意しておくね!」というおばちゃんの声も蘇ったのだ。魔法の修行が終われば、おばちゃんの焼きそばを……猫のミュウを撫でながらゆっくりと、なんて思ったことは、この2人には口が裂けてもいえない。

ひとしきり笑うと、ドリーとエルは真面目な顔に戻り、リドルに言った。

「今はいいよ、でももうすぐ花火大会なんだよ」
「それまでにはきちんと魔法を使えるようにならないと」
「うん……」

この真保町は美しい砂浜と海以外に名物がある。それは魔女。真保町の女性は魔女として生まれる。なぜそうなるのかわからない。わからないけれど、真保町の人々はそれを受け入れて生活していた。女の子が生まれれば魔女、男の子なら人間。それを自然と受け入れ、普通に結婚し真保町で幸せに暮らす。特別視するものは誰もいない。

ただ、せっかく魔法が生活の一部となっているのなら、観光客のおもてなしに使ってもいいのではないか。どこからともなく発生した考えが評判を呼び、真保町は人気の観光エリアとなった。

魔法を使った「おもてなし」は真保町のいたるところで行われ、海の家のメニューも最後の一振りで魔法のスパイスが振りかけられている。絶品焼きそばに心を奪われ、リドルが魔法を失敗してしまったのも、わからないではない。

浜辺と海と魔女、これが真保町の名物なのだ。特に6月末に選ばれた魔女が美しい魔法の花火を、花火大会の最後に打ち上げるイベントは一番人気だった。幻想的な花火は真保町の人達も観光客も楽しみにしている。今年最高の魔女が打ち上げる花火ということで、6月の花火大会は多くの客が集まった。

美しい魔法の花火はサマーシーズンの幕開けとなる。その後続く小規模の花火打ち上げの幕開けともなる大切なものだ。その大切な役目を担う魔女は毎年、占いで決まる。それが今年はリドルだった。占いを知った人々は驚く。

ええ!リドル?

リドルは真保町ではポンコツ魔女として知られていたのだ。彼女の魔法はいつも的を外し周囲の笑いを誘った。

今回の「海の猫」のように。

「手始めに一番簡単なハンカチを使った魔法をやらせてみたけど」

さっきまで笑っていたドリーとエルの顔が深刻になった。町を代表する花火に失敗は許されない。真保町最高の魔女が今年を代表する魔法の花火を打ち上げるのだもの。絶品焼きそばに心を動かされる人物が、選ばれただなんて、見ている人達は考えもしないだろう。

「どうして私が選ばれちゃったんだろう?」

リドルは半泣きの顔でそう言った。

📚📚📚

「リドルがんばれー」

弟が叫ぶ。

「どうしたの?」

あまりに熱心な様子に、おばあさんが不思議そうに尋ねます。

「あのね、この前まで、でんぐり返しができなかったのよ」

そっと姉が教えてくれます。

「できた時、すっごくうれしかったんだ!」
「へぇ、もうでんぐり返しができるの?すごいじゃない」
「たくさん練習したらできたんだよ!」
「もうね、体操の先生が背中トンしないでもできるんだよ」

弟は興奮してベットの上でコロンと転がりました。

「私もできるよ!」

つられて姉もコロン。

「2人共上手上手!」

おばあさんは拍手をしました。

「でもね、ここは寝るところだから」

そっと2人に布団をかけるおばあさん。

「おばあちゃん、今度体操教室に来てね」
「来てね!」
「はいはい」

ちょっと前までハイハイだったのにねぇと言いながら、子どもの成長こそ魔法みたいなものだと、おばあさんは思うのでした。

(つづく)

小牧幸助部長、今週もありがとうございました。