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妻が妊娠したので、未来の我が子に教えたい ”iPod”2000年代の代表ガジェット

前回の記事では未来の子どもに伝えたいスーパーファミコンの名作について話しました。

デジタルネイティブどころか、AIが当たり前に隣にいる時代に生まれてくる我が子に、父さんは何を語るべきでしょうか。その筆頭として真っ先に思い浮かんだのが、2000年代という時代を象徴し、私たちの音楽体験を根底から変えてしまった魔法の箱――「iPod」です。



① iPodとは何か? ――「ポケットに1,000曲を」という革命

今の君からすれば、音楽は空中に漂っているものかもしれませんね。スマホに向かって「音楽をかけて」と言えば、数千万曲の中からAIが最適な一曲を選んでくれます。あるいは、脳波を読み取って気分に合わせたプレイリストが流れる時代になっているかもしれません。

でも、父さんの若い頃は違いました。音楽を持ち歩くということは、CDを何枚もカバンに詰め込んだり、録音したMDを何十枚も入れ替えたりする、とても「物理的」な作業だったのです。

そんな時代に、2001年10月、スティーブ・ジョブズという男が世界に見せたのが初代iPodでした。

iPodを一言で表すなら、「音楽を自由にしたデバイス」です。 真っ白なポリカーボネートのボディに、背面の鏡面仕上げのステンレス。そして中央にある不思議な円形のホイール。当時のキャッチコピーは「1,000 songs in your pocket(1,000曲をポケットに)」というものでした。これがどれほど衝撃的だったか、君には想像できるでしょうか。

それまでのポータブルプレーヤーは、せいぜいCD1枚分(10数曲)を持ち歩くのが限界でした。それが、手のひらサイズの箱の中に、自分の持っている全音楽ライブラリを丸ごと放り込めるようになったのです。iPodは単なる「再生機」ではなく、自分の個性を詰め込んだ「人生のサウンドトラック」そのものになったのでした。


② iPodの歴史 ―― 時代を彩った名機たち

iPodは20年以上の歴史の中で、いくつもの姿に変えて私たちの生活に溶け込んでいきました。君が生まれるずっと前に姿を消してしまったモデルもありますが、その系譜は今のiPhoneにも脈々と受け継がれています。

iPod:すべての始まり

最初は「クリックホイール」と呼ばれる、指でなぞって操作するインターフェースが特徴でした。ハードディスクを内蔵していて、カチカチという心地よい操作音とともに曲を選びます。あの「触感」は、今のタッチパネルにはない、機械との対話のような楽しさがありました。

iPod miniとiPod nano:音楽をカラフルに

次に登場した「iPod mini」は、アルミニウムのボディで色が選べるようになりました。これが大ヒットして、さらに薄くなった「iPod nano」へと進化します。nanoの登場は本当に衝撃的でした。ジョブズがジーンズのコインポケットからスッと取り出した時の驚きは、今でもガジェットファンの間で語り草になっています。父さんも、あの薄さには未来を感じたものです。
そしてなによりも初代iPod nanoは父さんが初めて買ったiPodです。

iPod shuffle:画面のない潔さ

「iPod shuffle」という、画面すら持たないモデルもありました。音楽をランダムに聴くことに特化した、クリップのようなデバイスです。「次に何が流れるかわからない」というワクワク感。これは、今のサブスクリプションサービスの「シャッフル再生」の原点とも言える思想なのですよ。

iPod touch:スマホへの架け橋


そして、画面が大きくタッチ操作になった「iPod touch」が登場します。これは電話機能のないiPhoneのような存在でした。音楽を聴くだけでなく、アプリで遊んだりネットをしたり。iPodはここで完成形を迎え、そして同時に、iPhoneという巨大な波にその役目を引き継いでいくことになります。


③ iPodの現在 ―― 「modブーム」という大人の遊び

iPodは2022年に惜しまれつつ販売を終了しました。公式には、もう過去の遺物です。でも面白いことに、父さんのようなガジェット好きの間では、今、iPodが熱い「再評価」を受けているのです。それが「mod(改造)ブーム」です。

なぜ、スマホで何でもできる時代に、わざわざ古いiPodを使うのでしょうか。そこには、現代の「タイパ(タイムパフォーマンス)」や「通知の嵐」から解放されたいという願いが込められています。

物理的な進化:フラッシュモッド

iPod Classicなどは、元々ハードディスクで動いていました。これを現代のSDカードや大容量バッテリーに積み替える改造が流行っています。20年以上前の筐体に、1TB(テラバイト)もの容量を詰め込んで、数万曲を持ち歩く。回転部品がなくなったiPodは、驚くほど軽くてキビキビ動くようになるのです。

ソフトウェアの探求:Rockbox

さらに面白いのは、中身のシステム(OS)を入れ替えてしまうことです。「Rockbox」というオープンソースのOSを入れると、Appleの制限を離れて、自分好みの音質に調整したり、見た目を自由に変えたりできます。これは、Linuxの世界にも通じる「自由への探求」と言えるでしょう。

デジタルミニマリズム

今の時代、スマホを開けばSNSやメールの通知が絶え間なくやってきます。音楽に没頭したいのに、誰かのつぶやきが目に入ってしまいますよね。 でも、iPodには通知が来ません。ネットにも繋がりません。ただ、音楽と自分だけ。この「不便さ」が、実は最高の贅沢なのだと気づく人が増えているのです。君が大きくなった頃、世界はもっと騒がしくなっているかもしれません。そんな時、あえてオフラインになるためのツールとして、iPodのような存在はきっと役に立つはずですよ。


④ iPodと僕の思い出 ―― ライフスタイルを形作ったもの

さて、ここからは少し個人的な話をしましょう。父さんがどうしてここまでiPodに執着するのでしょうか。

初めてiPodを手にした日のことは、今でも鮮明に覚えています。それまでは、お店で借りてきたCDを必死にPCに取り込み、厳選した曲だけをMDに録音していました。それが、iPodを手にした瞬間、「音楽を管理する」という概念が根底から変わったのです。

iTunesというソフトに全ての曲をインポートし、ケーブルを繋ぐだけで自分のライブラリが同期される。あの瞬間、私は「自分の世界のすべてをポケットに入れて持ち歩いている」という、言葉にできない万能感に包まれました。

深夜の帰り道、お気に入りのプレイリストを流しながら歩きました。 旅先で、その土地の風景に合うアルバムを慎重に選びました。 嫌なことがあった時、爆音でロックを聴いて現実をシャットアウトしました。

iPodは単なる道具ではありませんでした。私の感情を増幅し、記憶と強く結びつける装置だったのです。 例えば、BUMP OF CHICKENを聴けば、当時の青臭い悩みを思い出します。ASIAN KUNG-FU GENERATIONを聴けば、大学のキャンパスを思い出します。特定の曲を聴くと、当時の空気感や匂いまでが鮮やかに蘇ってくるのです。

父さんが今、PCを自作したり、こうしてブログを書いたりしている「好奇心の根っこ」には、間違いなくiPodがありました。 「この小さな箱の中に、どうしてこんなにたくさんの世界が詰まっているんだろう?」 「自分好みにカスタマイズするにはどうすればいいんだろう?」 そんな探究心が、今の私を作ってくれたのです。


未来の我が子へ

君がこの記事を読めるようになる頃、iPodという名前を知っている人は少なくなっているかもしれません。音楽は脳に直接届くようになっているかもしれませんし、イヤホンなんていう物理的なデバイスすら古臭くなっているかもしれませんね。

でもね、父さんは伝えたいのです。 「手で触れられる喜び」や「自分の手で道具を育てる楽しさ」を忘れないでほしい、と。

iPodのクリックホイールを回す時の、あの「カチカチ」という指先の心地よい感触。 鏡面仕上げの背面に付いた、自分だけの小さな生活の傷。 誰かに与えられたものではなく、自分で選んで、自分で入れた、自分だけの音楽。

それは、ボタン一つで提供される便利さよりも、ずっとずっと君の人生を豊かにしてくれるはずです。

君が生まれてきたら、まずは父さんの一番好きな音楽を一緒に聴きましょう。 もしその時までiPodが動いていたら、君にもあのホイールを触らせてあげたいなと思っています。

テクノロジーは進化し続けます。けれど、そこにある「ワクワクする気持ち」は、父さんの時代も君の時代も、きっと変わらないはずですから。

これからの君との出会いを、心から楽しみにしています。


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