現先オペに関するメモ
以前、日銀のオペレーションとして共通担保オペを取り上げましたが、日銀のオペレーションには現先オペもあります。現先オペも、国債を担保にとって日銀が一定期間で貸し出すオペレーションであるため、共通担保オペにも類似している側面があります。そこで両者の政策意図や効果の違いについてここでは簡単に整理しておきます。本稿についても必要に応じてアップデイトします。
なお、そもそも現先取引が担保付融資と解釈できる理由については、筆者が下記の論文(特にBOX3とBOX4)で説明しているため、こちらも必要に応じて参照してください。また、本稿では共通担保オペの知識は前提とするため、下記のリンクも参照してください。
f01_2020_02.pdf (mof.go.jp)
共通担保オペの拡充|服部孝洋(東京大学)|note
まず、教科書的な違いとしては、現先オペは、その担保が国債のみであるのに対して、共通担保オペの場合、社債など国債にとどまらない資産を担保として使える特徴があります。ただ、素朴に考えると、共通担保オペは、その担保が広いという観点で、現先オペを包含しているように見えるため、現先オペを使った場合、その政策的な意図が分かりづらいということがあります。特に、共通担保オペも、現先オペのように、短期的な貸し出しを日常的に行っており、その効果が似通っているようにも思われます。
2021年12月に実施された買い現先のケーススタディ
そこで、その政策意図を確認するため、2021年12月に実施された現先オペをここでは取り上げます。下記が2021年末の東京レポレートの推移ですが、12月の半ばにかけてGCレポレートが上昇していることがわかります。この時は、いわゆる積み期間に伴うテクニカルな要因で金利が上昇したと考えられます。GCレポレートが上昇しているということは、GCレポ市場において資金の出し手が相対的に少なくなったと考えられますが、日銀はこの際、買現先オペをオファーし、国債を担保に資金を供給することで、GCレポレートを低下させています(なお、GCレポを確認したい読者は筆者が記載した「国債先物入門」を参照してください)。

日銀は、2021年12月13日から15日かけて連続して買現先オペを打っていますが、上記の図をみると、現先オペによりGCレポレートが低下していることがわかります。下記の表が、日銀が実施した現先オペの内容ですが、基本的に、T+0で貸し出しをしていることが確認できます。

オペレーション(月次公表分) 2021年 : 日本銀行 Bank of Japan (boj.or.jp)
日銀がこのタイミングでGCレポレートを低下させたい背景には、そもそも日銀は、マイナス金利政策(-10bps)を実施しているため、短期金利が-10bpsよりプラス方向へ大きく乖離してくると、マイナス金利政策が実施されていないことになってしまいます。その意味で、日銀は、政策的な観点で、短期金利を-10bpsに誘導するインセンティブを有しており、2021年12月のように積み期間によるテクニカルな要因で短期金融市場が逼迫した場合、日銀は資金を供給することで、GCレポレートを下げるということを行います。
実際、上記の図を見ると、概ねこの現先のレポレートは、おおむね-10bpsで決まっており、日銀の金融政策と整合的な値になっています。注記をみると、「応札レート(期間利回り)について、-0.10%を下限とした。」とありますが、応札額以上にオファーを出していることも確認できます。
再び下記の図に目を向けると、T+0のGCレポレートが、全体的にT+0より若干高めに推移しており、日銀はT+0のGCレポレートに対してケアしたかったとみることもできます。日経新聞の記事は、「日銀、国債買い現先オペを実施 即日は15年ぶり」というタイトルであり、即日であることを強調した書きぶりになっています。

GCレポ市場に働きかけたいときに用いられるという側面も
2021年12月のケースでは、GCレポレートが上昇しましたが、そもそもGCレポが国債を担保とした資金融通であることを思い出せば、日銀は、国債を担保にした資金融通に直接影響を与えたいことになります。共通担保オペの場合であれば、国債以外の担保にも使えますから、この局面では担保を国債に絞っている現先オペのほうが適しているといえます。このように現先オペは、国債を保有している投資家や国債を担保としたGCレポ市場に働きかけたいときに用いられるオペレーションであると解釈できます。
ここでは2021年12月の現先オペにのみ取り上げましたが、その他のタイミングでも実施されており、今後必要に応じてアップデイトします。もっとも、現先オペはたまに実施されるという点が特徴です。
なお、共通担保オペについては、長期貸出を行うこともあり、金利上昇時のバックストップ的な役割を果たすこともあります。共通担保オペによる短期的な資金融通は日常的に実施されているため、共通担保オペについても短期と長期でその目的が異なる面がある点にも注意してください。
