共通担保オペの拡充
これまで筆者は共通担保オペについて説明してきましたが、本日の決定会合で共通担保オペの拡充がなされました。これまで下記の通り、2回にわたり共通担保オペについて説明しましたが、今回は少し補足的な内容を記載します。また、今回も必要に応じてアップデイトします。
2年物の共通担保オペについてのメモ|服部孝洋(Takahiro Hattori)|note
2013年の金利上昇時に実施された1年物の共通担保オペについて|服部孝洋(Takahiro Hattori)|note
今回の内容は、共通担保オペについてより柔軟に実施できるという形に改正したと解されます。実際のプレスリリースはこちらにありますが、利率については「年限ごとの国債の市場実勢相場を踏まえ、金融市場調節方針と整合的なイールドカーブの形成を促す観点から、貸付けのつど決定する利率」としています。今後、そのオペの実施を注視していく必要がありますが、本日、日銀は年限を5年にする共通担保オペを1月23日に実施すると発表しています。これまでは2年間であったところ(QQE直後は1年間まで)、期間を延ばしています。
以前筆者が記載したとおり、共通担保オペは国債を差し出すことで、投資家に国債を買うなどアービトラージを促す政策と解釈されます(共通担保オペは「シグナルオペ」と呼ばれることもあります)。共通担保オペが有する国債の金利低下効果については以前の投稿で記載したため、その説明はそちらに譲ります。ここで議論したいことは、国債と金利スワップが同様の商品であり、特に、スワップレートのほうが金利が高いことを考えれば、投資家は共通担保オペで資金を借りるとともに、金利スワップを受けることもできるということです。
具体的には下記の通りです。中心に投資家(典型的には銀行などの金融機関)がおり、すでに有している国債を担保に出し、日銀からお金を借りて、同年限のスワップを受けることを示しています。金利スワップを受けるといわれるとイメージできない読者もいますが、筆者が「金利スワップ入門」で記載したとおり、ひとまず、「国債≒金利スワップ」と考え、「金利スワップをうける」とは「国債を購入すること」とほぼ同じ、デリバティブ商品を買っていると考えてください(ロジックが知りたい読者は「金利スワップ入門」をご覧ください)。

金利スワップの金利(スワップレート)が高いなら、日銀から借りずに、単純に金利スワップを受ければいいと思う人もいるかもしれません。しかし、銀行など金融機関は通常、資産と負債の年限を合わせるようリスク管理をしています。これをALMといいますが、例えば日銀から5年借りてくることができれば、資産サイドで5年の金利リスクをとることができるわけです。金利リスクの管理については筆者が記載した「金利リスク入門」を参照してください。
下記が1月からみた、2年のスワップレート(OIS)と2年金利の推移ですが、1月の頭に金利スワップ(黄色のライン)がシャープに低下していることがわかります(OISについては筆者の「リスク・フリー・レート入門」を参照してください)。このことが市場参加者から国債だけでなく、金利スワップレートへの影響も大きかったと解釈された一因と思われます。実際、報道などで、金利スワップの水準が国債とあまりに乖離していることなどが指摘されることがありましたから、仮に金利スワップも日銀が意識しているなら、以前議論した国債金利低下のメカニズムだけでなく、金利スワップへの影響も配慮しつつ、長い年限の低下も企図した政策と解釈されます。実際にそのように指摘する市場参加者もいます。

今回の政策変更の重要な特徴は、日銀のプレスリリースにあるとおり、固定金利方式だけでなく金利入札方式についても10年間、共通担保オペを実施できるようになったということです(下記をみると、金利入札方式と固定金利方式の記載をなくして、「10年以内の期間とする」という記載になっていることが分かります)。以前の投稿では、0%といった「固定金利方式」の説明になっていますが、1月23日に実施するオペレーションは入札方式です(入札方式については後述)。

もっとも、共通担保オペは、若干政策意図が分かりにくいという意見もあります。というのも、2013年では金利が市場が十分と考える札割れになるレベルまで継続して実施し、金利が安定化したらやめるというルールにみえましたが、今年は当初は連続して実施されていたものの、オペが実施されない日もその後、多くみられて、どういうルールで実施されているかについて必ずしも明瞭ではないようにも感じられたからです(筆者は今回、入札方式を変えてきたことと少し関係性があるのではないかと感じています)。今後年限を伸ばした時に、2013年のように札割れまで実施していくか、金利入札方式を実施した時に、その金利水準や応札額はどうなるか、などが注目点だと思っています。
最後に、共通担保オペの制度的な部分について簡単に説明します。まず、オペに参加できる投資家は、担保として認められる国債等の債券を日銀に出し、その見合いで、例えば2年間や5年間、日銀から借り入れを行います。
日銀は、共通担保オペの実施に際し、例えば2兆円のオファーをしたとします。固定金利方式の場合、仮に投資家が借りたい金額合計が1兆円であれば、投資家は望む量の借り入れをできます(この場合、札割れになります)。仮に合計が3兆円である場合は、固定金利方式の場合、応札額に応じて按分します。
今回の改正の特徴は、前述のとおり、固定金利方式だけでなく金利入札方式についても10年間、共通担保オペを実施できるようになったということです。金利入札方式の場合、「貸付利率を入札に付してコンベンショナル方式により決定する方式」としています。コンベンショナル方式の詳細は、石田・服部(2020)を参照してください(同論文では国債のオークションの説明になっていますが、日銀が実施するオペのオークションについても類似性が高いです)。また、日銀の表現を直接見たい方は下記をご覧ください。
共通担保オペ(全店貸付)および共通担保オペ(本店貸付)の取引概要 : 日本銀行 Bank of Japan (boj.or.jp)
現在の制度の年限は10年間まで認められており、日銀は10年間貸し出しをすることが可能です。もっとも、これまでは2年までしか実施されておらず、来週から5年(金利入札方式)で実施される予定です。
共通担保オペと似たオペとして、現先オペがあります。現先オペに比べて、共通担保オペの場合、国債以外の債券などより広い債券を担保として受け入れています。そのため、前述の取引において担保として使えるものが国債以外もあるという点が特徴と思われます。
