FBの統合化と公募入札(1999年)

再び、下記の内容について、「財務省 平成財政史」を用いてその流れを確認しておきます。
FBの全額日銀引受廃止(1999年)|服部孝洋(東京大学) (note.com)

まず、従来発行されていたFBは下記の三種類でした。

(1 )大蔵省証券(蔵券)
国庫全体の一時的な資金不足を補うために一般会計の負担で発行され、当該 年度の歳入によってすべて償還された。法的根拠は「財政法」第 7 条である。

( 2 )食糧証券(糧券)  
食糧管理特別会計の資金不足を補うために発行された。年度内に償還されるもののほか、年度を越えて発行され 1 年以内に償還されるものがあった。これは、糧券の発行残高が米買入代金を賄うため秋にピークに達し、その後 1 年にわたって米の売払収入により徐々に償還され残高が減少していくという性格によるものであった。

( 3 )外国為替資金証券(為券)  
外貨の買入等に伴って生ずる外国為替資金特別会計の資金不足を補うために発行された。年度内に償還されるもののほか、年度を越えて発行され 1 年以内に償還されるものがあった。外貨買取りのための円資金に不足をきたした場合等に発行され、逆に外貨の売却等により円資金に余裕が生じると償還された。

なお、これ以外にも、5種類のFBがあったものの、これらは実際には発行されていなかったようです(具体的には下記の5つ)。

⑴印刷事業証券(「印刷局特別会計法」第 6 条)、⑵国有林野事 業証券(「国有林野事業特別会計法」第 6 条)、⑶アルコール専売事業証券(「アル コール専売事業特別会計法」第 6 条)、⑷郵政事業証券(「郵政事業特別会計法」第 17条)、⑸貿易保険事業証券(「貿易保険特別会計法」第12条)。

また、平成財政史によれば、「3 種類の証券は発行条件を特定して公募する定率公募発行を原則としていたが、割引料が公定歩合を下回っていたことから市中からの応募はほぼ皆無であり、残額を日本銀行が引き受けていた(定率公募残額日銀引受方式)」とあり、公募ではあるものの、事実上、直接引き受けになっていたようです。また、「これら3 種類の証券は市場の厚み、商品の均質性などを考慮して平成11年度 から統合されて政府短期証券」という形で、1999年(平成11年)に統合されます。

この点については植月(2002)「短期金融市場入門」では下記のように記載があります。

国庫の一時的な資金不足を補うという意味合いから、一般会計または特別会計の負担において発行され、国庫管理を担当する日銀の全額引受形式となっていたが、1956年5月から定率公募残額日銀引受方式に変更された。しかし、発行レートは市場レートを無視して公定歩合を若干下回る水準に設定されたため魅力がなく、市中金融機関からの応募も少なく、実質的には日銀が発行額全額を引き受けていた(p.26)。

そのうえで、外為審の「円の国際化専門部会」で、FBの公募化の議論がはじまります。そこでの指摘は下記の通りです。

短期金融市場においては、TB(短期割引国債)・FB(政府短期証券)は、信用度、流動性、商品として均質性等から見て、各国中銀をはじめ非居住者の短期運用の主力商品となるべきものであるが、①我が国では米国と比べても、市中に TB・FB の玉不足が生じており、市場に厚みがない、② TB・FB の償還差益について発行時に源泉徴収が行われているが、その金融商品としての特殊性から、キャッシュフローに影響を与え、価格形成にも影響を及ぼしうることについて特に考慮すべきである。また、有価証券取引税を回避する観点から、我が国では現金担保付債券貸借の形をとったレポが行われているが、これは日本独自の形態となっており、レポ市場をグローバル・スタンダード化することが必要である(欧米では、 買戻(売戻)条件付売却(購入)が通常の形態)。

これを読んで、「このころからレポ市場のグローバルスタンダード化が指摘されていたのか」という印象をうけましたが、FBに市場化することで、各国中銀や外国人投資家の主要商品にするため、FBの公募化に踏み切ります。具体的には、下記の通りです(これ以外にも税制の見直しがありますが、ここでは公募化だけにしておきます)。

⑴  FB(政府短期証券)の市中公募入札発行について
以下のような FB 発行の新たなスキームに沿って、FB の市中公募入札発行を行うこととする。なお、本件に関する実務的事項等については後日、 別途公表する。
①  FB の発行方式を現行の定率公募残額日銀引受方式から、原則として公募入札方式に改める。
②  FB の償還期間は、原則として 13週間(3 ヶ月)とし、週 1 回程度発行する。
③  公募入札において募集残額等が生じた場合及び国庫に予期せざる資金需要が生じた場合には、日本銀行は、例外的に所要の FB の引受けを行うものとする。ただし、 日本銀行が例外的に引き受けた FB については、公募入札発行代 り金により、可及的速やかに償還するものとする。
④  FB の公募入札発行は平成11年4 月より開始する。ただし、公募入札への完全な移行は、1 年程度を目途として、市場実勢等を見極めつつ段階的に行うこととし、それまでの間、日銀引受による発行を併用する。

発行方法は次のようになったということです。

公募入札発行の方法等
⑴  FB の名称は「政府短期証券」とし、大蔵省証券、食粗証券及び外国為替資金証券を統合して発行する。
⑵ FB は価格競争入札(コンベンショナル方式)により発行する。
⑶ FB の最低応募単位は1000万円とする。  
⑷ FB の償還期間は、原則13週間とする。
⑸  ⑷に加え、 2 ヶ月物等償還期間13週聞未満の FB を国庫の資金繰りに応じて発行することを検討する。  
⑹  FBの発行は、原則として毎週最初の営業日に行い、その3 営業日前に入札を行うこととする(祭日等がない場合、水曜日に入札し、月曜日に発行することと なる)。  
⑺ FBの入札手続は、日銀ネット等により行うこととする。
⑻  FBの入札当日のスケジュールについては、原則として、入札日の午前10時20 分にオファーし、同11時30分に締め切ることとする。  
⑼  FBの公募入札参加資格者の範囲は、振替決済制度の参加者のうち、次のいずれかを満たす者とする。なお、公募入札参加者への指定の希望については、平成 11年 3 月中は日本銀行を通じて受け付ける。  
① 銀行、証券会社、保険会社、農林中央金庫、商工組合中央金庫、短資会社  
② ディーリング認可を受けている信用金庫等。

なお、FBは、1994年4月から市中公募入札制に、そして、2000年4月から完全市中公募入札制に移行したということです。円の国際化については下記の資料も参考にしてください。

Microsoft Word - 9-1円の国際化 (mof.go.jp)


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