三層構造に関するメモ:マクロ加算残高について

ここから少しづつ短期市場の話題を増やしていきますが、その補助線として最初の日銀が2016年1月にマイナス金利政策導入に際して導入した三層構造について整理します(以下では必要に応じて適時修正・アップデイトします)。

下記は、円債市場の市場参加者から非常に見慣れた、当座預金に対する三層構造です。すなわち、当座預金に対する三層構造では、当座預金を「基礎残高」、「マクロ加算残高」、「政策金利残高」に分け、それぞれ+0.1%、0%、-0.1%という付利が付されます。下記の図にあるように、+0.1%の付利が付される「基礎残高」については2015年の平均残高とされており、概ね固定値とされています。

(論文)三層構造のもとでの金融調節運営―準備需要曲線モデルを使った解説― (boj.or.jp)

この政策が面白いのは、マクロ加算残高と呼ばれる0%の部分がある点です。この図にあるとおり、マクロ加算残高については、各銀行の当座預金に対して、「基準比率」とよばれる係数をかけ合わせることで、各銀行のマクロ加算残高が決まります。この図のように、マクロ加算残高はこれだけでなくて、「コロナ対応オペ・貸出支援基金等の残高に応じた額」も考慮される点が面白い部分ですが、その議論に行く前に、まずは、ここではマクロ加算残高の基礎的な計算を確認するため、下記の日銀の資料に従って、上図のマクロ加算残高における「日本銀行が定める額(基準平均残高等×「基準比率」)」に焦点を当てて考えます。

まず、ステップ1では、対象となる当座預金の平均残高を計算します。これは積み期間における当座預金の平均残高になります(積み期間については下記を参照してください)。
日銀当座預金と積み期間に関するメモ|服部孝洋(東京大学) (note.com)

ステップ2として、日銀当座預金に預け入れなければいけない最低金額である「法定準備預金」を下記のように計算します。日銀のウェブサイトにも記載しているとおり、これを「所要準備額」ということもあります。

ステップ3として、「基準期間(2015 年 1 月 16 日から 2016 年1 月 15 日まで)における毎日の終業時の対象預金の残高の合計金額×付利対象積み期間の日数÷365」という形で、「基礎残高」を計算します。ここには0.1%の付利がつきますが、私の理解では、マイナス金利政策が導入されたのが2016年1月なので、マイナス金利導入以降に増えた当座預金に対して、マイナス金利を掛けますが、それより前については、それまで導入されていた付利である0.1%を支払いますよ、と理解しています。東京マネーマーケットでは、これを「このプラス金利は金融機関への事実上の『補助金』である」(p.54)と記載しています。

ここから、今回焦点を当てたい「マクロ加算残高」の説明にうつります。マクロ加算残高は2016年のマイナス金利政策移行について増加させた当座預金についても、マイナス金利をかけず、0%のままとするゾーンです。下記の図にある通り、マクロ加算残高は、「⑤=イ. +ロ. +ハ. 」とされていますが、ここで取り上げるのは、そのうち、イ.に相当する部分です(ロとハについて関心がある読者はこちらを参照してください)。この部分に対しては、下記の図表の③部分に対して、「基準比率」を掛け合わすことで算出します。この際、基準となる平均残高は、(法定準備預金はあるものの)その主要部分が基礎残高(④)であることから、2015年時点の平残が基準になる点に注意してください。

この部分に関して言えば、マクロ加算残高を計算するうえで、「基準係数」がキーになることがわかりますが、日銀はマクロ加算残高をコントロールするため、基準係数を毎月更新して公表しています。基準係数が上がれば、0%が適用されるマクロ加算残高が増えますし、基準係数が低下すれば、0%が適用されるマクロ加算残高が減ります。次回は基準係数について取り上げます。また、これ以外にも、コロナオペの影響も受けるため、それについても後日議論します。

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