補完当座預金制度基本要綱(マクロ加算残高部分)
以前、当座預金の三層構造について記載しましたが、三層構造におけるマクロ加算残高における、日銀のオペの影響について簡単なメモを記載します。以下の内容については、必要に応じて、加筆・修正します(この辺りは自分で調べながら記載しているため、制度の理解に不正確な点等があったらコメント欄やメール等でご指摘いただければ幸いです)。以下の記載は、下記のリンクのメモを前提とします。
三層構造に関するメモ:マクロ加算残高について|服部孝洋(東京大学) (note.com)
前述のとおり、マクロ加算残高の計算方法は下記の通りになります。

以前の投稿では、この計算における「イ.③×基準比率」のみに焦点をあてました。しかし、上図の右上をみると、「イ.③×基準比率」以外にも、
「ロ.付利対象積み期間における毎日の終業時の対象借入れ(細則4.(3)ロ.)の合計残高 」
「ハ.(ロ.<新型コロナ対応金融支援特別オペ(制度融資分)を除く>- 2016 年 3 月末における対象借入れ(細則4.(3)ハ.)の合計残高×付利対象積み期間の日数)×加算比率」
の二つがマクロ加算残高として追加されることがわかります。
それではこれが補完当座預金制度基本要綱にどのように記載してあるかというと、下記の図における赤く枠を付した部分になります(青の部分は、基準比率の部分ですが、基準比率のイメージは以前の投稿を参考にしてください。また、この補完当座預金制度基本要綱は随時アップデイトされ、下記の記載が今後変わりえる点に注意してください)。

補完当座預金制度基本要領 : 日本銀行 Bank of Japan (boj.or.jp)
まず、「ロ」の書きぶりは下記の通りです。
ロ.付利対象積み期間における「貸出支援基金運営基本要領」(平成24年12月20日付政委第107号別紙1.)、「新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペレーション基本要領」(令和2年3月16日付政委第12号別紙1.。以下「新型コロナ対応金融支援特別オペ基本要領」という。)、「被災地金融機関を支援するための資金供給オペレーション基本要領」(令和2年3月16日付政委第14号別紙3.)および「気候変動対応を支援するための資金供給オペレーション基本要領」(令和3年9月22日付政委第55号別紙1.)に基づく借入れ(円建てのものに限る。以下同じ。)の平均残高
これは、「貸出支援基金」や「コロナオペ」などを用いた場合、その貸出の平均残高分、マクロ加算残高が増えるということが記載されています。例えば、ある銀行がコロナオペを使って、1億円バックファイナンスしたら、この「ロ」の規定で1億円部分のマクロ加算残高が増えるということです。
次に、「ハ」は次のとおりです。
ハ.ロ.の残高から付利対象積み期間における新型コロナ対応金融支援特別オペ基本要領8.(2)に基づく借入れの平均残高を控除した金額のうち、平成28年3月末における「貸出支援基金運営基本要領」および廃止前の「被災地金融機関を支援するための資金供給オペレーション基本要領」(平成23年4月28日付政委第36号別紙1.)に基づく借入れの合計残高を上回る金額に別に定める一定比率(基準比率が零より大きい場合には1とし、基準比率が零の場合には零以上1以下とする。以下「加算比率」という。)を乗じた金額
この部分は現時点での書きぶりになっていますが、前述のとおり、補完当座預金制度基本要綱はたびたび修正されました。そこで、コロナオペが導入された2020年春時点の要綱をみると、ここ部分(ロの部分)の書きぶりは下記の通りでした。
ハ.ロ.の残高のうち、平成28年3月末における「貸出支援基金運営基
本要領」および「被災地金融機関を支援するための資金供給オペレーシ
ョン基本要領」に基づく借入れの合計残高を上回る金額
「補完当座預金制度基本要領」の一部改正について (boj.or.jp)
これを読むと、(一定の条件で)「ロ」で計算した金額もマクロ加算残高に追加されるということがわかります。先ほどの例でいえば、コロナオペを利用して1億円分増加したマクロ加算残高に加え、さらに1億円のマクロ加算残高が増えることになります。この部分があるから、コロナオペなどを利用すると、マクロ加算残高が、その利用額の2倍増えるということになります。
大切なことは、しばしばコロナオペなどにより、マクロ加算残高が2倍増えるなどという結論がありますが、このようにこの制度は「補完当座預金制度基本要綱」における「ロ」(マクロ加算残高における1階部分)だけではなく「ハ」(マクロ加算残高における2階部分)があるためということになります。下記は日銀による三層構造の図になりますが、「② マクロ加算残高」における「各種オペ残高(オペ1階部分)」が「ロ」であり、「各種オペの2016年3月末対比での残高増加額(オペ2階部分)」が「ハ」になります。

「2020年度の金融市場調節」の概要 (boj.or.jp)
大切な点は、要綱はこういう書きぶりになっているため、「ロ」(マクロ加算残高における1階部分)と「ハ」(マクロ加算残高における2階部分)に関し、ここに記載されているオペレーションを用いた場合、このマクロ加算残高が2倍になるという点です。「ロ」と「ハ」の書きぶりは、要綱がたびたび修正されており、対象となるものが変化しますが、ここの書きぶりを修正されることで、マクロ加算残高に影響を与えるオペレーションの対象が変化する点に注意してください。「補完当座預金制度基本要綱」は随時更新されるため、例えばコロナ禍における影響についてはその時の要綱にさかのぼって解釈する必要がある点にも留意してください。
