外為特会の基礎㉖:積立金設立と廃止までの歴史
今回も前回の積立金についての議論です。今回は、外為特会の積立金の歴史いついて簡単に整理しておきます。
まず、河上(2016)によれば、そもそも外為特会の積立金は、昭和28年(1953年)に作られました。その理由は、外為特会が生まれて、剰余金が発生したため、積み立てるということになったとしています。積立金制度を作ったオフィシャルの理由としては、①一般会計および特別会計の単年度主義の問題、②先物取引にかかるリスクの問題が指摘されていましたが、「外為資金特会が発足して2年が経過した歳入歳出の決算上の剰余が続いたことから、大蔵省主計局にとっては、将来発生するかもしれない歳入歳出の決算上の不足に備えこの剰余金を外為資金特会に存置し、一般会計からの補填という負担をできる限り抑制することにしたということが積立金制度創設の本当の理由であったと考えられる」(p.273)としています。
もっとも、その当時は積立金算出の基準についてはなかったとされています。河上(2016)は、「結局具体的な積立金算出基準は無く、一般会計の財源状況次第というところが率直なところであったであろう」(p.275)としています。
それでは、そのルールできたのはいつかというと、これは私の推測ですが、平成19年の外為審のタイミングだという理解をしています。その根拠は、下記の動画の45分ごろですが、財務省から、もともとは基本的には積み立てるという方針であったところ、平成19年の外為審で30%ルールを明確に目指すという議論をした、と説明されています。
積立金のルールについては、下記を参照してみてください。
なお、当時の外為審における財務省の説明は次のようなものです。
外貨資産に対する積立金比率は過去に比べて低下してきており、平成17年度末で14.5%です。それから、評価損ですけれども、これも円高の進行に伴って拡大するという関係にありまして、10円円高になると評価損は約8兆円増加するという関係になっています。それで、私どもとして外為特会の積立金の適正水準をどういうふうに考えるかということを考えまして幾つか計算したところ、保有資産の30%を限度に積み立てていくことが中長期的には望ましいというふうに考えております。具体的には2つの計算をいたしまして、1つは平成以降でございますけれども、毎日の為替と金利のデータが4,435通りありますが、これを集めます。その上で外貨資産自体は現在のものを前提といたしまして、それにこの為替と金利に見合った評価損益を4,435通り算出いたします。それを正規分布に引き直した上で為替や金利が変動しても、先ほどの積立金が評価損をおおむね、具体的には99%の水準で考えておりますけれども、下回らない水準を試算すると外貨資産の30%程度の金額が必要という計算結果になりました。
もう一方、2つ目の計算といたしましては、このグラフ上にございますように、評価損の比率というのが大体平均で26%程度ということで推移していますので、やはりこれを上回るというのが、30%が1つの目安になると考えております。
グラフ上この点線で矢印で上向きに引いておりますけれども、現在の水準が14.5%まで低下しています。それから、先ほどの行革推進法で一般会計に対して相当の繰り入れを求められているということもありまして、外為特会の信認を保つために中長期的に30%程度を限度に積み立てていくという考え方をとっているものです。
また、このルール設定について、伊藤隆敏先生が次のようなコメントをしているので、これも紹介をしておきます。
○伊藤委員 ただいま説明いただいた特会の話なのですけれども、非常に大量の計算をしてバリュー・アット・リスク的な考え方で30%を限度に積み立てたいということはよくわかるのですけれども、ある意味ではもう少し根本的な解決が必要だと思うのですね。根本的な解決というのは、そもそも外貨準備がこういう特別会計という形で持つことが適切なのかどうかということ、あるいは特別会計にあるのであれば会計法上こういうことが求められると、ほかの特別会計と一緒に求められているということが適切かどうかということを根本的に考え直して戦略を練り直さないと、特別会計改革の中で非常におかしなことになる可能性があると思います。
具体的に申し上げますと、第1点は、御説明の中になかったのですけれども、特別会計、これは金利収入というのがありますね。持っている外国資産、短期・長期国債、米国債を持っていて、そこから収入が入ってくる、ドルで入ってきますね。これは入ってきたドルの利子収入に見合いの為券、政府短期証券を発行しないとこれが資産・負債がバランスしませんから、黙っているだけで今債務がどんどん膨らんでいくと、両建てでこの会計が膨らんでいくと、介入しなくてもどんどん膨らんでいくという仕組みになっている。これは将来のリスク、金利逆転リスク、円高になった場合のリスク、要するに爆弾と言うと言葉は悪いのですけれども、爆弾がどんどん膨らんでいると。黙っていても膨らんでいくと。介入しなくても、金利収入があるから。これは仕組みとして非常におかしい。
それから2番目に剰余金の積立金にするか、一般会計に繰り入れられるかという、これの綱引きがあって、なるべく積立金にしたいという気持ちはよくわかるのですが、これも30%なんていう目標が適切かどうかというのがバリュー・アット・リスクをやっていただいたのですが、理論的にはもう剰余が出たらこれは全額積み立てにすべきという理論的な根拠もないわけではない。というのは、要するに金利差が収入として来るわけですね。金利差というのは何かというと、カバーなしの金利裁定を仮定すれば、将来の評価損なわけですよ。だから、カバーなしの金利裁定が成り立つか成り立たないかという議論があって、学問的にも必ずしも一定ではないのですが、一応多くのモデルでは仮定している話ですから、金利差で収入があるということは、これは将来円高になってこれが消えてしまうというのが普通の常識的なモデルなわけですから、これは一般会計にその剰余金として吸い上げられたら、将来の為替リスクを吸い上げられているということになるわけで、これは全額積立金に残すべきではないかという議論が成り立つわけですけれども、やはり多分こういった議論で押し切る気概を持って一般会計と分断する必要があると思うのですね。だから、それができないのであれば特別会計という仕組みにこだわらず広く検討いただきたい。
3番目に、もし一般会計に繰り入れられてもどうしようもないと、こんな行革推進法の何とかで吸い上げられるということは何が起きているかというと、一般会計と特別会計の連結ベースで見ると、マチュリティ・トランスフォーメーションをしてどんどん短期債を増やしているということと同じですね。先ほどの金利収入で外為債を増やしていく、剰余金は吸い上げられて消えてしまう可能性があるのですけれども、よきに考えれば赤字国債の減額に使われているとすると、長期債は減らして短期債を増やしていると、それだけのことをやっているだけなのですね、ここでは。だから、なにも剰余金が生じたから貢献しているわけではなくて、短期債を増やして長期債を減らしていると、それだけのこと、マチュリティを短くしていると、それがいいかどうかという問題はこういう場面であれば必ずしも明らかではないと思うのですね。
もっとも、これまで説明してきたとおり、民主党による事業仕分け、また、それを引き継ぐ形で、安倍政権で積立金を廃止するという意思決定が2013年度になされて、今に至っています。まとめると、積立金制度は、外為特会ができて、すぐにスタートし、基本的に積み立てていった一方で、埋蔵金問題で議論される中で、30%ルールを確立しました。もっとも、その後、そのルールは長く続かず、積立金という仕組みはなくなったというものです。
今回も、自分用のメモですが、必要に応じて、加筆・修正します。なお、これまでの内容は下記にまとめていますので、こちらをご参照ください。
