災害時に「PDCAサイクルを回せ!」と言う人は、うだつの上がらない人である
静岡県で開催された日本公衆衛生学会に行ってきました。
参加登録者が5000人を超える大きな学会でした。
いつか宮崎県でやりたいですね。
台風の来ない11月の3日間、シーガイヤを借り切ってやれば面白いかも。
全国衛生部長会、全国保健所長会、全国地方衛生研究所協議会といった関連行事もあるので、宮﨑にたくさんの人が来ます。
(火)全国衛生部長会・全国保健所長会・全国地方衛生研究所協議会
(水)日本公衆衛生学会(第一日)
(木)日本公衆衛生学会(第二日)
(金)日本公衆衛生学会(第三日)
金曜の午後までびっしりとプログラムを組めば、集まった人は金曜日に帰ることはないので、土日は宮崎県内を観光します。
日曜日の夕方に帰ってもらえば、経済効果は抜群です。
県庁の商工労働部と組んで考えてみてもいいと思います。
宮﨑大学や県立看護大、医師会、看護協会と組んで、地域枠の医師や看護師などの医療従事者の確保のプログラムも設けると面白いと思いました。
宮﨑大学医学部の公衆衛生学教室の新教授が着任されたら、5年後をめどに検討するといいかもしれません。

さて、学会長の講演を聴きました。
尾島俊之先生で、浜松医大健康社会医学の教授です。
自治医大の出身で、卒業後は愛知県で勤務し、保健所長もされています。
義務開け後に母校の公衆衛生学教室に入り、その後、浜松医大の教授になりました。
まず、健康寿命の延伸についての話がありました。
健康日本21には、個人と社会の二つの取組があります。
我が国の健康寿命は着実に伸びてきています。
成功したのは、たばこ対策です。
特に男性の禁煙率はどんどん減っています。
これは健康増進法により義務化されたことが大きいです。
次に成功したことは、食塩摂取量が減少していることです。
昔は一日20gほど摂取していたのが、今は1日10gほど。
近くの中華屋は、「健康中華」という名前で、うす味をウリにしているとおっしゃってました。
世間が健康を気にして、うす味に取り組んでいます。
健康寿命をさらに延ばすためには、死亡率を減少させることと、不健康な状態を予防することが大切です。
不健康な状態とは、日常生活に制限がある状態、つまり、要介護状態を予防すること。
日常生活に制限をきたす疾患は、実は整形外科的な疾患が多いのです。
研究によると、日常生活の制限に寄与する症状・疾患は、以下があります。
1位 腰痛
2位 関節痛
3位 目の症状
4位 うつ状態
5位 吐き気
6位 肩こり
7位 高血圧
これまでは、あまり腰痛、関節痛、肩こりには注目してきませんでしたが、今後はこうした疾患群への対策を考える必要があると言っていました。

一方で、苦戦している、もしくは失敗した事例もあります。
肥満対策は失敗しています。
特に男性の肥満対策は典型例です。
10代から20代をへて30代で肥満が出て、40代で男性は肥満が完成します。
特定健診・特定保健指導が始まるのは40歳から。
肥満が完成した人を減らすのは困難で、完成する前の取組が大事です。
学会保健や職域保健で頑張ってもらいたいです。
今は、企業は人手不足で、人を大事にするようになっています。
健康経営をしていることが、人集めのポイントになります。
失敗の事例には、介護予防があります。
健診で虚弱な人を見つけて、地方自治体が開催する介護予防教室に集めて、集団指導をする取組は失敗しました。
モデル市町村を設定して事業を行いました。
5%は来ると見込んでいましたが、実際に来たのは0.2%で、閑古鳥が鳴きました。
「虚弱である」という烙印を押すのは、よくないのです。
スティグマになります。
虚弱者をピックアップして指導するという取組をやめて、通いの場にすることにしました。
こうした配慮有る普遍的対策が大事です。

次に災害対策・健康危機管理対策についての話がありました。
CSCAが大事です。
災害対策本部だけではなく、避難所でもCSCAが必要になります。
避難所を評価する際に、多くの人はトイレの稼働状況を真っ先に見ます。
そうではなく、避難所の運営組織の有無に着目すべきです。
班長が決まっており、役割分担や順番を決めている避難所は機能します。

災害時は、対応している自治体の職員の健康状況の把握が大事です。
業務マネジメントとメンタルヘルスが重要な項目となります。
能登半島地震のときから、J-SPEEDというツールで職員の状況を把握できるようになりました。
勤務時間や睡眠時間が把握できます。
被災地の自治体職員には、業務の荷重と家庭の荷重の二つの荷重があります。
アメリカの保健所を視察したら、指揮所の横にクワイエットルームという部屋がありました。
災害対策を指揮する者には、ひとりになって休んで考える時間が必要で、そのための部屋です。
アメリカの公衆衛生学会に出たら、学会場にクワイエットルームが設けられていました。
そこで、今回の静岡での日本公衆衛生学会の会場に、瞑想ルームを設けています。
残念なことに誰も使っていませんが(笑)。

PDCAに似ていますが、OODAという意思決定と行動のためのフレームワークがあります。
Observe(観察)、Orient(状況判断)、Decide(意思決定)、Act(行動)というOODAループを回していくものです。
OODAのループを回して、地域資源を把握すると、いろいろな取組ができます。
ある学校のPTAの役員から、何かやりたいと相談を受けたところ、虫歯予防のフッ素の洗口事業をやったらとアドバイスしたら、実現しました。
それまではその自治体では、学校の高い壁があってフッ素の洗口は行われていませんでした。
PTAの役員から言われたことは、校長先生も検討せざるを得ません。
ということで、フッ素の洗口事業が広まりました。

コアメンバーの周りに、活動メンバーがいて、その周りに周辺メンバーがいます。
コアメンバーが3人いれば、組織を変えることができます。
物事は、文章だけでは分かりません。
文章と、量的なデータ、質的なデータ(画像)の3つがあると理解しやすい。
例えば、チキン南蛮定食は、説明文章と、値段やカロリーといった量的データ、これに画像があると、初めて見た人でもよくわかります。

最後に人材育成の話をされました。
公衆衛生学会では、「公衆衛生医師の集い」と「いきいき公衆衛生の会」を行っています。
自分は、これまで生活習慣病対策、母子保健、健康危機管理の研究や取組を行ってきました。
バラバラのように見えても、人々の健康や幸福は共通しています。
大局的に考えると、平時のつながりは、有事でも役に立ちます。
平時から地域づくりを行えば、健康危機管理に役に立つのです。
そうしたことから、今回の日本公衆衛生学会のテーマは、「フェーズフリーの地域づくりと健康危機管理」にしました。
ご清聴をどうもありがとうございました。

素晴らしい学会長講演でした。
OODAの考え方は、いいですね。
ちなみに、OODAは「ウーダ」です。
「オーダ」ではありません。織田信長に引っ張られてはいけません。
PDCAサイクルに似ているのですが、PDCAサイクルは、ルーティンワークなどのある程度予測可能なものに使われます。
OODAループは、状況が一刻一刻変化する環境下や迅速な意思決定と行動が求められる場面で使われます。
災害対応は、PDCAではなく、OODAです。
昔、ウルトラマンに「ウー」という怪獣が出現しました。
雪山で村人たちが、怪獣を指さして「ウーだ!」と叫びます。
しかし、ウーは優しい怪獣でした。
雪ん子と言う女の子の声を聞いて、ウルトラマンは必殺のスペシウム光線を発射するのをやめました。
ウルトラマンは、OODAループを回して、攻撃をやめるという迅速な意思決定をしたのです。
「ウーだ!」で覚えて下さい。
さらに言えば、
災害時に「PDCAサイクルを回せ!」
と言う人は、うだつの上がらない人です。
うーだつです。
恐縮です。
今日は、疲れがたまっているような気が……。
CSCAについてはこちらの記事が参考になります。
