CSCATTTも7文字、なむあみだぶつも7文字
はじめに
災害医療のコーディネート研修を受けました。
宮崎大学医学部の救急医療・災害医療科学の落合教授や、DMAT事務局の近藤先生の講義を受けました。
近藤先生は、映画フロントラインに出た俳優の窪塚さんのモデルになった方で、映画のパンフレットにサインをしていただきました。
なかなか勉強になりました。
一番大事なのは、CACSTTTだと学習しました。

CSCATTT
大規模事故・災害への体系的な対応に必要な項目は、CSCATTTの7つの文字からなります。
最初の4文字のCSCA(災害医療体制の確立)後ろの3文字のTTT(災害医療活動の実施)
の足し算です。
CSCAは以下からなります。行政の担当です。
C:Command & Control 指揮と連携
S:Safety 安全
C:Communication 情報伝達
A:Assessment 評価
TTTは、医療が担当します。
T:Triage トリアージ
T:Treatment 治療
T:Transport 搬送
CSCATTTは、もともと英国の災害対策の経験から出てきたものです。
NATOに採用されて、今では世界の大規模事故・災害に対応する部局・組織に広まっています。
NATOは「納豆」ではありません。
北大西洋条約機構で、加盟国の危機管理・安全保障を目的に設けられた組織です。
ざくっと言えば、ロシアがヨーロッパ諸国を攻めてきたときに、加盟国の国土と国民の生命財産を守ることが任務です。
NATO加盟国は人種や国籍や文化や歴史や風習が違うのですが、危機管理ではひとつにまとまっています。
そのためにシンプルで、合理的で、実践向きとなっています。
我が国のDMATもこれを採用しています。
ある県のDMAT隊員は、忘れないように、
CSCATTTと叫びながら歩くとのこと。
私は、こうしたうぶなDMATにはお目にかかっていませんが、基本的な考え方ですので、ぜひ覚えて下さい。
合い言葉にしましょう!
しかし、
「CSCA」と言って、
「TTT」と返ってこなかったら、
印鑑を押さない上司は、パワハラになります。
CSCATTTも7文字
なむあみだぶつも7文字
暗記しましょう!
覚えられない人は、認知症外来に行って下さい。
これもパワハラ?
どうしても覚えられない方は、前半のCSCAの4文字を覚えて下さい。
TTTの方が楽かもしれませんが、それは本末転倒です。
昔はこちらが大事だとされていましたが、CSCAの方が大事なことに英国人が気付いたのです。
トリアージは、日本に来た外国人が、焼き鳥を食べて「このトリ、アージ美味しいです」と叫んだ言葉ではありません。
できそこないの日本語ではなく、フランス語です。
ナポレオン軍の軍医団のトップを勤めたラリー男爵が考案しました。
戦場という医療資源が限られた中で、どの傷病兵を優先して治療をするかを選別したことから始まったものです。
救急車を最初につくったのも、ラリー男爵です。
馬車で、戦場で傷ついた兵士を拾い上げて、後方の安全な場所に送って、治療をしました。
救急車は、軍陣医学が一般に広まった例です。
戦争をすると、関連する医学が発達します。
トリアージ、救急車、輸血、麻酔、ペニシリン、美容整形、ドクターヘリ、手術用ロボットダビンチなど枚挙にいとまがありません。
詳しくはこちらの有料マガジンをご覧ください。
病院
大規模災害が起こったときに、病院がどうなっているのかを知ることは、大変重要です。
地震が発生してから、病院の状況を調べるよりも、平時に病院の状況を確認して事前リスト化しておくことが大事です。
事前リストとは、患者避難や物質支援を行う可能性が高い病院をリスト化しておくことです。
具体的には、震度6弱以上で、倒壊、津波等の浸水、停電および断水の状況における脆弱な病院をリスト化しておく必要があります。
詳細に言えば、以下のとおりです。
1 倒壊の恐れがあり、避難の可能性のある病院
耐震構造検査の結果、耐震構造無しの病院や、検査を実施していない病院がこれにあたります。
2 浸水・土砂災害による避難を検討する病院
浸水想定の有る病院、土砂災害想定で、特別警戒区域や警戒区域に立地している病院がこれにあたります。
3 電源喪失により避難を検討する病院
自家発電の無い病院、浸水想定で浸水が電源喪失につながる病院がこれにあたります。
4 電気供給不安定により避難を検討する病院
自家発電が脆弱な病院がこれにあたります。例えば、備蓄している燃料が1日以下の病院や停電対策の無い病院です。
人工呼吸器を保持する病院と、その台数が多い病院も該当します。
5 酸素供給不安定により避難を検討する患者のいる病院
6 水供給不安定により避難を検討する患者のいる病院
透析を要する入院患者のいる病院と、透析台数の多い病院が該当します。
全病院避難となる可能性のあるのは1~3です。
一部避難となる可能性のあるのは4~6です。
宮崎県の病院は130ほど。
事前リストを作成しておくことは大事ですね。
災害発生時には、
病院が機能しているのか、
透析を実施しているか、
人工呼吸器を使っているか、
など
現状分析を繰り返し評価して、
対策を講じていくことが大事です。

福祉施設
病院の次は、福祉施設の状況を把握することが大事です。
福祉施設を支援のターゲットとする理由は、次の理由があります。
まず、要支援者であることです。
施設に入所している方は、高齢者・障害者とった災害弱者です。
次に、民間施設が多く、公的施設と比べて支援の声を上げにくい存在であるからです。
さらに、介入しないと状態が悪化して、要治療者となり、病院機能を圧迫することになります。
千葉県で台風による広域で停電になったことがありました。
そのときに、特別養護老人ホームでは、冷房がとまって3人が熱中症で死亡したことがあります。
停電の長期化(2週間)が判明し、千葉県では、社会福祉施設の情報収集・分析を開始し、医療機関と同様に、社会福祉施設全体でのロジ支援の優先順位・進捗管理表を作成し、PUSH型の支援を実施するようになりました。
福祉施設支援の課題は、以下があります。
・被害施設の情報をどのように収集するのか。
・施設被害の評価項目、施設被害の全体状況の把握、支援の優先順位の考え方は病院と異なるのか。
・医療、人、物資、搬送支援はどのように実施するのか。

診療所
大規模災害時には、診療所支援も重要です。
診療所支援の意義やイメージは以下のとおりです。
・災害によりダメージを受けた診療所、外来診療機能を維持し、復旧を図る
・診療所の外来機能が消失すれば、病院に集中する
・避難所における健康管理、救護所での医療提供は、診療所機能の代替になる
・救護所での診療支援のみではだめで、診療所の環境整備、人的・物的支援が必要
・診療所存続のための復旧支援のメインプレイヤーは、日本医師会のJMAT
DMATは病院支援、JMATが診療所支援、という役割分担があります。
診療環境・ライフラインの確保が多く、
具体的には、
電源復旧、空調機器、泥水対策、掃除の手伝い、ボランティアの紹介などがあります。
また、臨時の医療施設の設置もあり、具体的には、診療車両を持ってくるとか、コンテナを手配する必要があります。
診療の補填としては、救護班の派遣、モバイルファーマシー運用があります。
人的な支援として、職員のケアの支援や、復興を経験した医師による激励・助言も効果があるそうです。
日本医師会と日本災害医学界は、災害医療に関する相互協定を結んでおります。

自衛隊の災害派遣
病院、福祉施設、診療所の支援では、自衛隊の災害派遣を利用することも可能です。
福島県の台風による水害で、郡山市の基幹病院が浸水して、CT装置が使えなくなったときがありました。
そのときに、陸上自衛隊の富士病院が保有しているCT車の災害派遣の要請が福島県知事からあり、前例は無かったのですが、派遣したことがあります。
富士病院は山梨県にあったのですが、福島県まで移動して、病院の駐車場に駐車して、CT撮影を実施しています。
被災地の保健所長が、元医系技官で、防衛省に勤務していたことがあり、自衛隊がCT車を持っていることを知っていました。
連絡があり、自衛隊内部でも派遣できない、派遣するとすったもんだがあり、最終的に派遣することに決定しました。
派遣した結果、地域住民が自衛隊のCT車の写真を撮って、SNSにアップして、「自衛隊のCT車かっこええ」「ありがとう自衛隊、CT車を派遣してくれて助かっています」というつぶやきが拡散されて、好感度がアップしました。
その後、長崎に来たクルーズ船でもコロナが蔓延したときに、CT車の派遣要請があり、長崎港のクルーズ船に横付けしてCT写真を撮りまくりました。
CT車両を引き上げるときには、長崎県庁で知事出席のもとで、引き上げ式をやってもらったのには隊員が感動しておりました。
災害時にCT車が必要な場合は、知事から自衛隊に派遣要請することができることを覚えておいてください。

災害医療は、念仏のようにCSCATTTの七文字をつぶやいて、繰り返すことしかありません。
わずか7文字で救われます。
念仏と同じです。
医療従事者は、暗記しましょう。
知らなかったら、何をしていいかわかりません。
救急医療のABCと同じです。
