「フロントライン」は公衆衛生を描いた映画で、公衆衛生関係者は必見である
映画フロントラインを見てきました。
ダイヤモンド・プリンセス号の対応を行った人にインタビューをして、その事実に基づいた映画です。
私はそのときは、防衛省の衛生監として勤務しており、当時の臨場感を思い出しました。
夜の海にきらめくダイヤモンド・プリンセス号をテレビで見て、美しいと思いましたが、映画でも主役の小栗旬さんが同じことをつぶやいておりました。
映画では、4人のメインの人物が登場します。
神奈川県庁の対策本部で指揮をとる神奈川県DMAT調整本部長の小栗旬さん。
実際にダイヤモンド・プリンセス号に乗り込んで指揮をとったDMAT事務局長の窪塚洋介さん。
厚労省から対策本部に来た医系技官の松阪桃李さん。
ダイヤモンド・プリンセス号の船内で乗客・乗員の検査や治療を行うDMAT隊員の池松壮亮さん。
それ以外の方々も良い味を出していました。
私が凄いなと思ったのは、ダイヤモンド・プリンセス号のクルー役の森七菜さんと、テレビ局の記者役の桜井ユキさんです。
危機管理業務で働くことが想定される医療従事者は、絶対に役に立つと思います。
映画「フロントライン」は、公衆衛生関係者には是非、見ていただきたい、公衆衛生映画です。

松阪桃李さんが演じた医系技官のモデルは、当時、厚労省医政局保健医療技術調整官をしていた堀岡伸彦さんです。
松阪さんとは顔は全く違っております(失礼!)が、松阪さんが演じた態度や台詞は、堀岡さんそっくりでした。
実際に堀岡さんに話を聞いたそうです。
松阪さんは、このように語っています。
私たちがイメージする官僚とは違うという印象でした。
型破りな感じがありつつ、正義感と冷静さが同居している方だと思いました。
官僚の役をやるにあたっては国で決められたある主のセオリーもなどもあるので、想定外のことが起きた際にはできるだけ危険を回避しながらも永田町文学、霞ヶ関文学のようなことを駆使しながらも問題に向き合っていくようなイメージを踏まえています。
私が防衛省に勤務していたときに、堀岡さんからダイヤモンド・プリンセス号の患者を自衛隊中央病院に入院させて欲しいと電話で依頼を何回かうけたことがあります。
そのときに、堀岡さんが現場に行っていることを始めて知りました。
これで現場は大丈夫だと安心しました。

窪塚洋介さんのモデルは、DMAT事務局次長の近藤久禎先生です。
近藤先生とは、2011年の東京電力福島第一原発の現地対策本部でも一緒に仕事をしたことがあります。
宮崎が大好きで、宮崎県で行われるDMAT研修には必ずやってきて、県庁医療政策課のメンバーや宮崎大学医学部救急・災害医学講座の先生方を引き連れて、ニシタチで夜が明けるまで飲み歩きます。
そのうち「被害者の会」が結成されるかもしれません。

映画に、トイレカーについて触れられるシーンがあります。
実は、トイレカーの発案者は私です。
愛知県の藤田医科大学岡崎医療センターへの陽性者の搬送は自衛隊が実施しています。
横浜から岡崎市までの搬送途中のトイレについて、高速道路のサービスエリアのトイレを利用することに懸念の声があったのです。
会議室から出てきた自衛隊の統合幕僚監部総括官が頭を抱えていました。
「自衛隊のバスは隊員用なのでトイレが付いていないんだよな。おむつを付けて乗ってとは言えないし……。サービスエリアのトイレを使わせてもらうように国交省に頼むしかないか」
と嘆いていました。
そのとき閃いたのです。
前職の厚生労働省の安全衛生部長のときに、便所について少し研究をしていました。
労働安全衛生法の安全衛生規則の中に、便所の規定があります。
外で作業をすることの多い建設業で、女性の作業者で一番困るのは便所なのです。
数もそうですが、男女別になっていることと、汚くないことが大事です。
汚ければ使用することを我慢して水を飲まずにいて熱中症になるなど、トイレは大事な安全衛生上の問題でした。
山登りや災害時も同じような問題が起こります。
便所について調べているときに、警察は、特別に造ったトイレ車両を持っていることを知りました。
警備などで外で長時間待機している際に、近くに公衆トイレがあるとは限りません。
立ちションはNG。
そのためにトイレが備え付けられた車両を待機させておくのです。
ネットでググったら、写真が出てきました。
それを総括官に渡したところ、私の携帯を持って走って行きました。
「こらー、スマホかえせ!」と叫ぼうとしましたが、すぐに警察庁の幹部を捕まえて、話をしていました。
警視庁と愛知県警からトイレ車を出してもらうこととなり、トイレ問題は無事に解決しました。
自衛隊における新型コロナウイルス感染症対策の中核として仕事をなされた総括官は、その後、防衛省の局長となりましたが、亡くなっています。
このためトイレ車両は、私しか知らないエピソードとなっていました。
映画「フロントライン」では、こうしたトイレ車両のような細かいことも描いていただき、本当に感謝しております。
土木現場で働く女性のことを描いた漫画「ドボジョ!」があります。
漫画家は松本小夢さん。3巻まで出ており、おすすめです。
