医学生には、宮沢賢治のクラムボンよりも、クランボルツ教授の「計画的偶発性理論」が大事である
宮崎大学医学部の地域枠全体ミーティングに出席してきました。
1年から6年生の地域枠の医学生193人中164人が出席しました。
宮崎大学医学部からは病院長、医学部長、キャリアサポート委員会、宮崎県地域医療支援機構宮崎大学分室、診療科のコースメンター医師が出席し、大学外からは、宮崎県医師会常任理事、宮崎県庁医療政策課の職員の出席がありました。
盛武医学部長からは、宮崎県の地域枠への高い期待と、九州唯一の医師少数県という構造的課題について話があり、高齢者医療の重要性に加え、小児科を含む全ての診療科で医師不足が深刻であることや診療科の偏在を強調されました。
学生の皆さんに対しては、将来の診療科の選択に向けての実地経験の積み上げや、本日のグループワークを通じて、自らのキャリアをどのようにつくっていくのか議論を深化させて欲しいとおっしゃっていました。

続いて、宮崎県地域医療支援機構宮崎大学分室の黒木先生から、現在の状況についての報告がありました。
宮崎大学の地域枠の学生・卒業生の医師としてのキャリアを形成するために、卒前プランと卒後のプログラムが用意されています。
宮崎大学医学部と宮崎県と宮崎県医師会の三者連携による一貫した支援体制があります。
在学中の支援については、キャリア教育(基礎編・実践編)、ハンズオンセミナー、BLS実習、シミュレーター教育を実施します。
地域枠学生への連絡手段については、学年リーダー協力のもとにLINE通知を導入しました。
美郷町で実施された「みさと地域医療塾」に、今年から学生10名が初めて参加しました。

卒業生の診療科選択は、多様で、内科、救急、外科、脳外、小児科、総合診療科などが多いです。
2年間の初期臨床研修修了後の7年間で4年間は、宮崎市以外のいわゆるBC郡地域の医療機関に勤務が義務付けられています。
勤務先の決定プロセスも、本人とコースメンター、診療科の責任者で協議して、県の地域医療対策協議会に申請することになっており、県から一方的に指定されるわけではありません。
サブスペシャリティを有する診療科では、宮崎市以外のBC郡地域での勤務4年間の充足が困難なケースもあるので、9年から延長して10年・11年などの長期コース設定を行っています。
サブスペシャリティ領域の専門医取得を見据えて柔軟化しています。

第二部では、小グループに分かれてグループワークを行いました。
議題は、「将来のキャリアプランを考えよう」です。
各グループには、さまざまな診療科の医師のプロファイルが渡され、その医師の将来のキャリアプランを議論しました。
発表会では、理解のあるパートナーを選ぶことの困難性や、パートナーのキャリア形成プログラムが必要などの切実な意見が出されました。
具体的な病院勤務先では、C郡も選ばれていました。
具体的には、串間市民病院と国民健康保険高千穂病院です。これは良かった!

発表後に講評をと指名されましたので、スタンフォード大学のクランボルツ教授の「計画的偶発性理論」について述べました。
個人のキャリアの約8割は、予期しない偶然の出来事によって決定されます。
偶然に任せずに、意図的・計画的にキャリアを引き寄せる、生かすための行動をとることが大事で、クランボルツ教授は、5つの行動指針を示しています。
1 好奇心 → 新しい学習の機会だと考えること。
2 持続性 → 失敗しても諦めず、努力を続けること。
3 楽観性 → 新しい機会は実現可能だと考える、挑戦する価値があるとポジティブに考えること。
4 柔軟性 → これまでの姿勢や考え方を変え、新しい状況に適用すること
5 冒険心 → 結果が不確実でも、リスクをおそれず、新しい行動を起こすこと
ぜひ、皆さん方、医師になったら宮崎市から遠く離れたC郡の医療機関に勤務して、新しいキャリアを切り開いて下さいと結びました。
クランボルツ教授の計画的偶発性理論は、キャリアを扱ったビジネス書ではよく紹介される有名な理論です。
いくら将来のキャリアをあらかじめデザインしても、そのとおりにならないのが人生です。
実際に日経新聞の「私の履歴書」を読むと、順風満帆で思い通り描いたキャリアを歩んでいる人はいません。
特に企業の人は、希望しない部署に配置されて落ち込みいったん腐りますが、一生懸命にやっていたら、その仕事ぶりを見た上司や取引先の人が引き上げるというストーリーが多いです。
結果として、好奇心・持続性・楽観性・柔軟性・冒険心の5つの行動指針でキャリアを引き寄せています。

さて、宮沢賢治の童話「やまなし」に登場するのは、クラムボンです。
私は、国語の教科書で読みました。
クラムボンはわらったよ。
クラムボンはかぷかぷわらったよ。
今もこの正体は謎で、解明されていません。
泡説、光の模様説、アメンボ説などがあります。
いかん、いまは宮沢賢治のクラムボンではなく、クランボルツ教授の計画的偶発性理論が大事でした。
医学生も、ビジネス書を、特にマーケティングの本を読むといいと思います。
一見関係ないように見えますが、ビジネス書には医師の著者もおり、内容的にもときおり医学上の発見のエピソードが紹介されていますので、関係ないことはないです。

好奇心が大事です。
ペリーの乗ってきた黒船に招待された幕府の役人は、アメリカ人に、これは何?、あれは何?と質問攻めにしました。
ペリー提督は、日本人ほど好奇心に富んだ民族はいないと言っています。
このとき日本人が初めて飲んだカクテルが、横浜のイングランドホテルのバー「シーガーディアン」にあります。
ウイスキー・ツディです。
ウイスキーに砂糖を入れて水やお湯で割ったもので、日本人はこの甘いお酒を非常に喜び、酔っ払ってペリーに抱きついた役人もいたとか。
シーガーディアンは、サザンオールスターズの「LOVE AFFAIR~秘密のデート」でも歌われています。
また、ペリーは日本人に蒸気機関車のミニチュアを贈ります。
機関車が動き出すと、日本人の役人のひとりはアメリカ人が止めるのを振り切って、この機関車にまたがりました。
アメリカ人は、小さな機関車に振り落とされないようにしているサムライを、笑いものにしています。
しかしこの後、日本人はシンカンセンというイノベーションを生み出し、世界の高速鉄道をリードするようになります。
後生畏るべしです。
好奇心こそが、運命の切り札です。
