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保健専門官の講演が予算委員会で問題となり、クビになりかけたことがある

昔、環境庁の環境安全課の保健専門官をしていたときの話です。

ダイオキシンや環境ホルモン問題を担当しておりました。

ダイオキシンは、
ベトナム戦争の枯れ葉剤作戦で使用された農薬に含まれており、
散布された地域で奇形児が生まれたとか、
イタリアのセベソという都市にあった
農薬工場が爆発してダイオキシンが飛散して
多くの住民が暴露したことが
社会的に問題となっていました。

我が国でも、ゴミの焼却施設の周辺土壌や、
母乳からも検出されるダイオキシンが
問題となっていました。

環境庁では、大気、水、土壌、食品など様々な媒体のダイオキシン濃度を分析して、
どのくらい人が摂取しているのか、
どれくらいの量であれば安全か、という基準値を検討しました。

最終的に、
ダイオキシンの一日当たりの耐用摂取量(TDI)を、WHOが示している値と同じ4ピコグラムに設定しました。

1ピコは、1グラムの1兆分の1です。

様々な研究者や環境活動家からの批判がありました。

マスコミからも批判的な報道がなされました。

そのような状況下で、
新潟県から研修の講師の依頼があり、
私が出席しました。

食品中のダイオキシンの値に、一喜一憂するべきではない。測定には誤差がある。

毒性もたばこに比べれば発がんリスクは低い。

バランスのとれた食事をとれば安全だ。


そういった趣旨の講演をしました。

この講演を聴いた受講者の誰かが、
受講メモを作成し、
「環境庁の保健専門官が、ダイオキシンは騒ぎすぎだと批判している」
とメールをしました。

このメールは、
人から人に回り回って、
ある国会議員に届きました。

あろうことか、
この国会議員は事実確認もせずに、
予算委員会で、大臣にいきなり質問
をしてきました。

事務次官や局長といった
省庁の幹部が不適切な発言をして
週刊誌に取り上げられたのなら理解できます。

課長補佐クラスの職員が、
地方自治体の職員に行った研修会の
講演内容を取り上げて、
国会の一番の花形である予算委員会で、
質問をしてきたのです。

しかも前日の質問取りでは、議員から、
本件に関する質問通告はありませんでした。

そもそも議員会館の議員の部屋で、
議員本人から質問取りをしたのは、私でした。

議員は、明日の予算委員会で、私の講演内容のことを質問するとは、一言も言いませんでした。

環境庁の保健専門官が、ダイオキシンは騒ぎ過ぎだと言っている。この専門官は厚生省からの出向者だ

いきなり、何も知らない厚生大臣に質問をぶつけました。

厚生大臣は、
専門官の発言が事実とすれば、きわめて遺憾である
と答弁しました。

環境庁長官は、
専門官の発言内容については、事実関係を調べてから適切に対応する
と答えました。

議員は、
「大臣、調べた結果は記者会見をして、環境庁としてきちんと対応するように。うやむやにしないように」
と念押ししました。

議員は、私をクビにする気満々でした。

昨年末に、京都で開催された環境ホルモンの国際会議では、この議員の講演のために、16ページの資料を2000部印刷して便宜を図ったことがありました。

恨みを買うようなことは、まったくしておりません。

私の3か月前の新潟県での講演の資料はありましたが、実際に何をしゃべったか詳細には記憶していません。

私は辞職を覚悟しました。

ここで奇跡が起こります。

私の上司の課長は、新潟県庁に出向したことがあり、新潟県のかつての部下に聞いたところ、なんと録音テープがあったのです。

テープ起こしをしたら、次の事実が判明しました。

研究者によると、ダイオキシンの測定には誤差が多い。

WHOのがん対策専門家会議(IARC)の評価では、ダイオキシンの発がん性のリスクはたばこより極めて低い。

米国の環境保護庁(EPA)が作成したパンフレットでは、バランスの取れた食事がダイオキシンの摂取を抑える。


つまり、すべてが引用だったのです。

新潟県は、最終的に議員に届いた作成者のメールも手に入れておりました。

講演者(私)の実際の発言と
メールの記載を比較して、 
講演者の発言と違っており、創作したものである
と断定しておりました。

さっそく課長が、議員のところに行き、
議事録を渡して、調査の結果を説明しました。

ねつ造の証拠を突きつけられた議員は困って、
「不問に処す」
と発言しました。

まさか、専門官の実際の講演の議事録が出てくるとはまったく予想していなかったようでした。

「国会で議員が大臣にやるように言われた記者会見はどうしましょうか?」 

課長が皮肉たっぷりに聞きました。

「やらなくていい!!」

新潟県の職員のおかげで助かりました。

本当にありがとうございました!

録音テープが無かったら、私はクビになっていたと思います。

環境庁にいたころは、課長には何度も救われました。

この場をお借りしてお礼申し上げます。

この後に、メールをもとに国会質問をして、そのメールの内容が虚偽だったことから、自殺に追い込まれた国会議員がいました。

メールだけで国会質問をするのは、
極めてリスクが高い行為です。

まずは、事実関係の確認から始めてみても、
遅くないと思います。

これは個人の感想です。

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