個人の臨床の技術は病院で上げられるが、野外活動やダメージコントロール手術などの即応態勢の構築はチームでの修練が不可欠である
世界一孫子の兵法が読まれている我が国には、いろんな孫子本があります。
「孫子がわかれば中国がわかる」杉之尾宣生さん、西田陽一さん著(ダイヤモンド社)は、一風変わった孫子の本の解説書です。
2500年以上も前に書かれた兵法を、米国と中国の軍幹部は勉強しています。
一方、日本の戦前の指揮官たちは、「孫子は古い」として勉強しませんでした。
特に、陸軍は顕著でした。
孫子を勉強しないと、国や組織を亡ぼすことになります。
孫子の趣旨を要約すると、以下が大切だと指摘しています。
災害がやってこないだろうといった願望に依存するのではなく、どんな災害がきても、その被害を最小限に止める準備態勢を平素から構築準備しておくこと。
我が国を武力侵攻してくる国は存在しないという願望に依存するのではなく、いかなる国の武力侵攻をも撃退し得る不敗態勢を構築準備しておくこと。
また、業(やりがい)がなければ兵(人)は動かない、としています。
アメとムチが必要で、信賞必罰が大事ですが、
アメを欲し、ムチを恐れるだけでは兵(人)は動かない。
やりがいという「無形の価値」を求めるものだ。
つまり国や組織の中で、「業」という名のやりがいを生み出すことが重要だとしています。

防衛省にいたときに、自衛隊の医官の業(やりがい)については、いろいろと考える必要があると思いました。
ベルギーの軍病院は、一般の地域医療で手薄なところを手厚くしています。
まず、産業医学を重視しています。
エボラウイルスなどの感染症の治療やメンタルヘルス、
また、空港から一番近い病院として救急患者の受け入れを行っています。
特に、軍病院の火傷治療センターは、欧州の中心的な施設となっています。
個人の臨床の技術は病院で上げられますが、軍陣医学の野外活動やダメージコントロール手術などの即応態勢の構築は、チームでの修練が不可欠だとしています。
軍病院での「やりがい感」を上げるために、一般の地域医療と切り分けて、差別化を図っています。
ベルギー軍の衛生トップは孫子を読んでいる、と強く感じました。
自衛隊の医官のみならず、医師は、孫子の兵法から学ぶべきです。
病との戦いは、人生を賭けた消耗戦です。
彼を知り、己を知れば、百戦殆うからず。
孫子は百戦勝つとは言っていません。負けないと言っているだけです。
人生は、勝つことよりも負けないことの方が大事です。
医学で、病に勝ことはできません。負けないようにマネジメントすることが大事です。
医学部の学生は、孫子の兵法を英語で読むと、英語の勉強にもなり、戦いに負けないリアルな秘訣を学ぶことができて、いい学習法だと思います。

谷中分室さんの「ボーダレスネーム」という漫画に感動しました。
美大出身で広告代理店に勤務している主人公が、漫画週刊誌「ステップ」の広告を依頼されます。
主人公は、漫画家を目指していたのですが、あきらめて今は普通の会社員となっていました。
空気を読まない新任上司と、ステップの編集員の一言で、主人公は漫画家を志望していた子どもの頃のことを思い出し、渾身の広告のコピーを提案します。
そうだ私は知っている
夢の影に必ずつきまとうモノを
越えられない才能の壁
圧倒的な力の差
叶わない願い
希望の数だけ出逢うモノ
それは「絶望」
傷つき悩む彼らを見ていられなくて
ページをめくる手が何度も止まる
でも私達は知っている
ここで彼らが「終わらない」ことを
10000回の挫折と10001回の成長
10000回の絶望と10001回の希望
絶望が希望に塗り替わって行く
僕らは、こんなところで終われない。
ZARDさんも「負けないで」と歌っています。
負けないでいると、「敵」が自滅することもあります。
人生は何が起こるかわからないです。
