富山型デイサービスを始めた看護師は「計画もなく、君たちは、あほ、ばか、まぬけの三人だ!」と叱られた
「富山型デイサービス」というデイサービスがあります。
惣万佳代子さんたち三人の看護師により、富山市で始められました。
富山日赤病院に勤務していましたが、辞めることを伝えるために病院長室に行きました。
院長から「やめてどうするのか」と聞かれて、「実は三人でデイサービスをやります」と答えました。
「デイサービスの事業計画はつくっているのか?」
院長から聞かれて、黙ってしまいました。
院長の爆弾が落ちました。
「計画もなく、君たちは、あほ、ばか、まぬけの三人だ!」
と叱られました。
それでも三人はめげずに、デイサービス「この指とーまれ」を開設しました。
しかし、利用者は一人もきません。
ある日、障害児の母が訪ねてきました。
パーマをかけるので、その間、子どもを預かってもらえないかということでした。
惣万さんは、「ぞうぞ、預けられ」と声をかけました。(富山弁です。通訳すると「どうぞ、預けて下さい」)
母親はけげんそうに、「本当に預かってもらえるのでしょうか?」とたずねました。
その前にいくつかのデイサービスの施設に電話で聞いたら、パーマをかける理由では預かれないと断られたそうです。
この第一号の利用者の口コミで、評判となりました。

この指とーまれのモットーは2点。
「断らない」と「理由(わけ)は聞かない」
最後にたどりつくのが「この指とーまれ」で、どんな障害をもっていようが、どんな理由であろうが預かるという方針をたてたのです。
他の施設がいやがる重度の障害児や、いろいろな管のついて医療的ケア児も積極的に受けました。
もともと看護師で、しかも叱られた日赤病院の病院長がバックアップしてくれました。
赤ちゃんからお年寄りまで、どんな障害を持っていようが預かるというユニークなデイサービスは、いつしか「富山型デイサービス」という名前が付きました。
大正時代に富山県の主婦から始まった米騒動のように、全国的に広がっていきます。

「断らない」「理由はきかない」は、
今から14年前の3月の東日本大震災のときに、突然、福島の東京電力第一原発の現地対策本部に行ってくれと言われたときに思い出しました。
医薬品の研究開発担当の課長だったので、
「何で自分が?」
と思いましたが、
この言葉に背中を押されていきました。
魔法の言葉です。
こうした言葉を教えていただいた富山型デイサービスの皆さんに感謝しています。
