「国家防衛戦略」の「衛生の文字数」は政策のバロメーターである
国家防衛戦略(防衛計画の大綱)における「衛生」の記述についての変遷を見ると、衛生の重要性がわかります。
五一大綱では「衛生」の記述はありません。
〇七大綱では「衛生」の2文字だけです。
実際の文章は、「衛生等の各後方支援分野において必要な機能を発揮し得ること」であり、後方の例示として挙げられているに過ぎず、具体的なものはないと言っていいでしょう。
一六大綱でも「衛生」の記載はありません。
二二大綱で、衛生が初めて文章化されました。
民主党政権下で策定したもので、「隊員の壮健性維持に資する衛生基盤等を整備する。」と22字が記載されています。
自民党政権になって策定された二五大綱では「衛生」が見出しとなって198字が記載されています。
防衛省・自衛隊史上初めて、衛生に関して具体的な記述がなされた画期的な大綱です。
これを取りまとめた諸先輩方には感謝したいと思います。
自衛隊を取り巻くさまざまな環境の変化が、大綱に具体的な衛生施策を記載するという後押しとなったのだと思います。
自衛隊員の壮健性を維持し、各種事態や国際平和活動等の多様な任務への対応能力を強化するため、自衛隊病院の拠点化・高機能化等を進め、防衛医科大学校等の運営の改善を含め効率的かつ質の高い医療体制を確立する。
また医官、看護師、救急救命士等の確保、育成を一層重視する。
このほか、事態対処時における救急救命措置に係る制度改正を含めた検討を行い、第一線の救護能力の向上や統合機能の充実の観点を踏まえた迅速な後送態勢の整備を図る。

三〇大綱では、衛生の記述は増加して、288字となりました。
自衛隊員の壮健性を維持するとともに、各種事態への対処や国内外における多様な任務に対応し得るよう衛生機能を強化する必要がある。
このため、隊員の生命を最大限守れるよう、第一線から最終後送先までのシームレスな医療・後送態勢を強化する。
その際、地域の特性を踏まえつつ、南西地域における自衛隊の衛生機能の強化を重視する。
また、自衛隊病院の拠点化、高機能化等により、効率的で質の高い医療体制を確立する。
さらに、自衛隊の部隊の衛生に係る人材確保のため、防衛医科大学校の運営改善を始めとする取組や、戦傷医療対処能力の向上を含む教育・研究を充実強化する。
このほか能力構築支援を含む様々な国際強力に必要な態勢の整備を推進する。

令和4年12月に策定された「国家防衛戦略」の衛生の記述は飛躍的に拡大しています。これまでの「防衛計画の大綱」から名称が変わりました
タイトルは「衛生機能の変革」
文字数は、560字です。
自衛隊衛生については、これまで自衛隊員の壮健性の維持を重視してきたが、 持続性・強靱性の観点から、有事において危険を顧みずに任務を遂行する隊員の 生命・身体を救う組織に変革する。
このため、各種事態への対処や国内外における多様な任務に対応し得るよう、 各自衛隊で共通する衛生機能等を一元化して統合的な運用を推進するとともに、 防衛医科大学校も含めた自衛隊衛生の総力を結集できる態勢を構築し、戦傷医療 能力向上のための抜本的改革を推進する。
この際、南西地域の第一線から本州等の後送先病院までの役割の明確化を図っ た上で、第一線から後送先病院までのシームレスな医療・後送態勢を確立し、後 送に係る衛生資器材の共通化を図るとともに、医療・後送に際して必要となる医 療情報を第一線を含む全国の医療拠点・施設で共有するシステムを整備する。
ま た、部隊の救護能力の強化、外傷医療に不可欠な血液・酸素を含む衛生資器材の 確保、南西地域の医療拠点の整備も行う。
さらに、防衛医科大学校での戦傷医療についての教育研究の強化を進めるとともに、医官及び看護官の臨床経験をより充実させるために必要な運営改善を進め る。
また、積極的な部外研修によって医官及び看護官の臨床経験を補完する。そ の上で、戦傷医療についての統合教育・訓練を通じ各自衛隊共通の知識・技能の 向上を図る。
現在、戦略3文書の改訂が行われています。
昨今の国際情勢を鑑みると、国家防衛戦略の衛生の記述は、また増加すると思います。
衛生は大事です。
