医療側からプロジェクトを計画して、コミュニティメンバーを巻き込むことも一つの方法であり、コミュニティに巻き込まれてみることは地域志向のケアにおいてより重要な態度である
静岡市で開催された日本公衆衛生学会には、書店が出店していました。
私は、学会に出席したときに書店が会場にある場合は、必ず出席記念として購入することにしています。
意外な掘り出し物があったりして、のちのち、その本の希少性、重要性に気がつくことがあります。
もちろん、ハズレもありますが、出席記念品と思えば、腹も立ちません。

今回は、日本公衆衛生学会で買った「総合診療の地図帳 広大で複雑な世界を迷わずつなぐために」(中外医学社)の話です。
東京北医療センター総合診療科の岡田悟先生が代表者で、合計34名の執筆者と4人のインタビュイーで構成されています。
その中で、一番印象に残ったのは、総合在宅医療クリニックみの院長の密山要用先生が執筆された「地域志向のケア」です。
個人的に「刺さる部分」が多かったので、ご紹介させていただきます。
冒頭に、地域志向のケアとは、単に医療活動を地域で展開することではなく、総合診療医が地域という文脈の中で人々の健康を理解し、その人らしい暮らしを共創するアプローチである、と定義しています。
言い換えれば、「ひとを診る」と「まちを診る」を有機的に結びつける実践といえると、言っておられます。
以下は、ほぼ引用です。
この地域志向のケアは、総合診療医にとって2つの点で重要である。
1点目は、全人的ケアの概念に関連する、健康問題を抱える人のおかれている状況や社会構造、地域特性を理解し、時に取り巻く状況そのものにアプローチすることで、目の前の人のウェルビーイングを実現するための適切なケアを提供できる可能性がある。
2点目は、すべての人に提供されるサービスというプライマリ・ケア機能の担い手という役割に関連する。
総合診療医は個人、家族、地域全体の健康を支える役割をもつが、実際には医療機関を訪れる人は一部に過ぎない。
病院での介入は「下流」での病気の診断・治療に偏りがちだが、総合診療医には、より「上流」の病気の予防や健康促進を含む地域全体のウェルビーイングを実現できる可能性がある。

医療機関での日常診療の中にこそ、地域志向のフレームワークが生かされるきっかけがたくさんある。
高齢者が「病院以外に行く場所がない」とつぶやいたとき、
糖尿病患者が「食事がうまくいかない」とこぼすとき、
うつ症状の患者が「まちに居場所がない」と語るとき
これらの場所に遭遇したときに「もしかしたら、これは地域全体の問題かもしれない」と考える習慣をつけることから始めるべきである。
地域志向のケアの実践におけるすべてのプロセスにおいて、コミュニティ・メンバーとのパートナーシップ形成が重要である。
医療側からプロジェクトを計画して、コニュニティ・メンバーを巻き込むことも一つの方法である。
他方で、コミュニティに巻き込まれてみることは地域志向のケアにおいてより重要な態度である。
診療現場で出会った気になる患者について、その人が生活する場所に自ら足を運んでみることで、その人の生活環境を直接・間接的に支えるコミュニティと出会う。
そこで話を聞いたり、活動に顔を出していくことで、共通の健康ニーズが見えてきて、協働プロジェクトが生まれていく機会に出会うことがある。
地域志向のケアは、決して特別なことではない。
日々の診療の中で、患者の生活背景に耳を傾け、地域の特性を理解しようとする姿勢こそが、地域志向ケアの第一歩である。
一人ひとりの患者を大切にしながら、同時にまち全体の健康を考え、地域の人々の暮らしぶりや文化、その中に潜む健康への影響を深く理解しようと努め、それを日々の診療や時には地域活動への協働を通していかしていくことが重要である。
私が刺さったのは、保健師の活動と共通する部分も多く、公衆衛生的な内容がかなり含まれており、なじみのある部分が多かったからだと思います。
なんとなく、町村レベルでは、こんな方程式が成り立つような気がしています。
総合診療 ➕ 行政 🟰 公衆衛生
総合診療医 ➕ 保健師 🟰 公衆衛生活動
