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ノルウェーの女性の小児科医が、世界のタバコ会社の圧力に屈することなく毅然とタバコ対策を進めた

昔、青森県のむつ保健所で勤務していたときに、管内に佐井村という村がありました。

今も合併せずに残っています。

まさかりに似た下北半島の「刃」に相当する場所にあります。

この佐井村の小学生に禁煙教育をしました。

普通であれば、講演して終わりですが、
学校の先生方が非常に熱心で、
講演後に出た児童の質問をまとめて
保健所に送ってきたのです。

文書による回答を
用意しなければなりませんでした。

たばこは身体に悪いのに、なぜお店で売っているのですか。

たばこと酒はどっちが悪いのですか。


たばこを売っている理由は、
たばこには税金がかかっており、
売れるとそれが税収になるからです。

たばこ税は、市町村の収入になります。

そのため私が子どもの頃の椎葉村には、
「たばこは、村内で買いましょう」
という看板がありました。

見かけないけど、今もあるかしら?

問題は、たばこと酒のどっちが悪いのかという質問にどう答えたらいいかということでした。

1994(平成6)年で、今から30年前のことです。

いろいろと調べた結果、「日本薬局方」にたどり着きました。

我が国で使用される薬は、
すべからく日本薬局方に記載されています。

この中に「ブドウ酒」はありますが、
タバコはありません。

つまり、タバコは薬ではない!

そのために、
薬局やドラッグストアーには売られていません。 

医療機関で、
治療のためにタバコを処方される
こともありません。

当然、タバコは保険はききません。

タバコ依存症の患者から、
保険診療でタバコを使えるようにしろ
という要望もありません。

このように
タバコは健康に悪いことから
規制しようとする国際機関として
WHOと国際オリンピック委員会
があります。

オリンピックでは、
1988年のカナダで開催された
カルガリーオリンピックのときから、
タバコの広告ができなくなりました。

この大会では、
フィギュアスケートの伊藤みどりさんが、
三回転ジャンプを連発して
世界に衝撃を与えました。

総合5位でメダルは獲得できませんでしたが、
エキシビションの
最後の大トリとして登場しました。

伊藤みどりさんのようなエキサイティングな
選手が上位にいけないのはおかしいと、
その後、
「規定(コンパルソリー)」の演技が
廃止されました。

ジャンプ競技で日本の選手が活躍すると、
日本人に不利なようにルールが変更される
ことがありますが、このときは逆でした。

国際オリンピック委員会の
サマランチ会長の後押しがあった
と言われています。

さて、オリンピックを開催した国では、
タバコ規制が強化されています。

2008年の北京オリンピックの後に中国が、
2014年のソチオリンピックの後にロシアが、それぞれ規制強化されました。 

日本も2020東京オリンピックの後に
そうなりました。

1988(昭和63)年に、
私が初めて
労働省の労働衛生課に勤務したときは、
机の上に灰皿があり、
会議でも委員用に灰皿を並べていました。

私の最初の仕事は、
課の職員の机の上の灰皿掃除でした。

翌1989(平成元年)に、
病院に勤務したときは、
医師も看護師も検査技師も
病院内で普通にタバコをすっていました。

電車の中や飛行機の中でも
普通にタバコをすっていました。

予算説明のときの大蔵省の主査は、
タバコをすいながら、説明を聞いていました。

サテン(喫茶店)では、
タバコを吸うのが普通でした。

受動喫煙というものが、
ほとんど理解されていませんでした。


今考えると、隔世の感があります。

たばこ対策は、
厚労省の健康局が担当してきました。

抵抗が強く、
法規制はなかなかできませんでしたが、
がん拠点病院を整備して
診療報酬を上げたのちに、
がん拠点病院内での禁煙対策を進めてきた
のはうまいアイデアだったと思います。

さすがに
収入増に繋がるがん拠点病院の看板を外してまで
医療従事者の喫煙を自由にさせる
という病院はありませんでした。

厚生労働省の喫煙所


現在、我が国では、
健康増進法でタバコが規制されています。

この規制は「外圧」によってできたものです。

WHOのブルントラント事務総長が、
たばこ規制枠組条約をつくって
世界各国が共通したタバコ対策を取る
ことを求めた
のです。

ブルントラントは
ノルウェーの女性の小児科医で、
首相を務めたこともある政治家です。

世界のタバコ会社の圧力に屈することなく、
毅然と、タバコ対策を進めました。


とどめは、国際オリンピック委員会です。

オリンピックを開催した中国とロシアが
法律で規制している中で、
東京オリンピックを主催した日本が
法規制を見送ることはありえなかったのです。

WHOは、「タバコ世界大戦」で、中国、ロシア、日本の3か国を枢軸国と見立ておりました。

歴史は繰り返します。
ポツダム宣言がたばこ規制枠組条約で、
ブルントラントが、ルーズベルトです。

最後に降伏したのは、日本です。
健康増進法は、耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍んで作られた法律です。

ブルントラントがつくった世界の公衆衛生の潮流には、逆らえませんでした。

現在は、SDGsが世界の公衆衛生の大きな流れ、と言っていいと思います。

いまは、WHOではなく国際連合UNが、公衆衛生を進める時代です。

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