ストレスに関連する心臓発作は、英語でtakotsubo syndromeとよばれ、 日本語の「蛸壺」から来ている
「心が打ち砕かれる」という概念は人類史を通じて、文学、哲学、宗教、音楽などで使われてきました。
最近では、チェッカーズの「ジュリアに傷心(ハートブレイク)」と言う歌がありました。
「最近ではない」と突っ込みを入れられる可能性が高いのですが、還暦を過ぎると「最近」の概念が広がるような気がします。
忘れることの方が多いので、覚えていたら「最近」のことになってしまいます。

さて、「強い情動」が、心臓を傷つけてしまうことがあるのでしょうか?
心が折れる、心凍らせて、翼の折れたエンジェル、心の旅とか、歌の話になると収拾がつかないのでやめます。
「心臓とこころ」の作者で心臓の専門医のヴィンセント・M・フィゲレド先生は「実はある!」と言っております。
もし虎に追いかけられたら、体内では数かずの変化が起こります。
「闘争・逃走反応」と呼ばれる現象です。これはだじゃれではありません。英語でも「fight-flight response」です。
脳の中にある扁桃体が、体に逃げ出すよう伝える信号を送ります。
その信号は、副腎へと伝わり、副腎髄質からアドレナリンが放出されます。
このアドレナリンは素早く心臓のペースメーカー細胞のところへと辿り着き、腎臓の拍動を早めます。
アドレナリンは、心拍数を上げると同時に、心臓の筋肉にカルシウムイオンを多く取り込ませ、それにより心臓の収縮は激しさを増します。
こうして酸素を含んだ血液が脚の筋肉に供給されて、走るのを助けます。

しかし、時折この体のストレス反応機構が暴走して心臓に損傷を与えて、ストレス誘発性の心臓発作を引き起こすことがあります。
ストレスに関連する心臓発作は、ストレス心筋症と呼ばれます。
英語では、broken heart syndrome と呼ばれます。別名は、takotsubo syndrome.
日本語の「蛸壺」から来ております。
タコは心が折れると、蛸壺に入るわけではありません。
1990年代に日本の医師によって提唱された疾患で、そのために日本語の名前がつきました。
心臓カテーテル検査で、左心室の収縮した姿が、日本の伝統的な漁具の「蛸壺」に似ていることから命名されました。
強いストレスなどが原因で、心臓のポンプ機能を担う左心室の先端部分が動かなくなり、反対に根元部分が過剰に収縮します。
この膨らんだ形が、口が狭く胴が膨らんだ日本の蛸壺そっくりに見えるのが特徴です。

精神的・肉体的な激しいストレス(親族との別れ、激しい怒り、大きな災害、手術など)がトリガーとなり、一時的に交換神経が過剰に昂ぶることで、心筋にダメージを与えるのではないかと推測されています。
胸の痛みや息切れなど、急性心筋梗塞と非常によく似た症状が出現します。
閉経後の女性に比較的多く見られる傾向にあります。
心電図や血液検査では心筋梗塞と区別しにくいため、心臓カテーテル検査(左室造影)で特徴的な形状を確認して診断されます。
心筋梗塞と違って、冠動脈(心臓の血管)が詰まっているわけではないため、適切な治療を受ければ数週間から1か月程度で心臓の形や機能が元通りに回復することがほとんどです。
こうした急激なアドレナリン濃度の上昇は、心臓の細胞に損傷を与えることがあります。
地震災害の後に行われた調査では、地震当日の心臓発作の発生率が前年の同じ日にちに比べて大幅に高かったことがわかっています。
1994年の米国カリフォルニア州ノースリッジ地震、1995年の阪神淡路大震災でも同じ現象が観察されています。
なお、我が国の蛸壺を使った漁法は弥生時代からやられているそうです。
弥生時代の蛸壺は、現在とほぼ変わりがない。このような例は世界でも珍しい。
日本の蛸壺には、こうした歴史があるので、世界の心臓専門医がリスペクトして日本人の銘々した病名を採用したのかも。
「蛸壺でハートブレイク」で覚えるといいですね。蛸壺でドツボでもいいかも。

蛸壺にウツボとなると、本来の意味がわからなくなりますのでやめましょう。
ちなみに、厚労省の健康・生活衛生局長は大坪局長です。←関係ないか。
