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大臣の漢字の読み間違えを咄嗟の機転で修正した通訳がいた

昔、環境庁にいたときに、
環境中のホルモン様化学物質である
環境ホルモンを担当しました。

一二月の京都で環境ホルモンの国際シンポジウムを企画したことがあります。

国会質問が山のようにあったのですが、
よくわからないことが多いので、
世界的な環境ホルモンに関する研究者を招いて、これまでの知見や研究の成果、
今後の展望について
発表してもらおうということで企画しました。

国会答弁の最後に、
「環境ホルモンの国際会議を開くので、そこでの知見を踏まえて必要な対応を検討する」
ということが言えて助かりました。

予算もかなり潤沢に付けてもらいました。

大臣も出席されることになり、
前夜の歓迎レセプションと
当日の開会の挨拶をしてもらいました。

歓迎レセプションでの大臣挨拶に
次のような文面を入れました。

一二月は我が国では師走と言って、先生方が走るように忙しい月という意味です。

日々の研究で走るように忙しいのにもかかわらず、世界中の先生が一二月の京都に来ていただきありがとうございます。


それを読んだ課長が、
大臣はきちんと師走を「しわす」と読んでくれるかな、
と不安そうに言いました。

念のため、ルビで”しわす”と書いておいた方がいいんじゃないか?」

そういう課長に、
「そんな、大丈夫ですよ。師走をしわすと読めない国会議員などいるはずがないですよー」
と私は脳天気に笑って答えました。

ということで修正なしで、
大臣秘書官に挨拶文を手渡しました。

レセプションでは、
京都大学病院の小児科の病棟に
入院している子供たちがつくった折り鶴を
集まった外国人研究者たちに渡したりして、
たいへん盛大かつ和やかなムードで
始まりました。

いよいよ環境大臣の歓迎あいさつです。 

ところが、大臣は、
あろうことか師走を「しそう」と
読んでしまったのです。

会場は、外国人がいましたが、
日本人もたくさんいました。

これはまずい。私は凍り付きました。

ちらりと課長を見ると、
「だから言ったじゃないか」
と何か言いたそうな表情……。

すいません。私が課長のいうことを素直に聞いておれば、このようなことはなかった。

ところが奇跡が起こります。

大臣の挨拶は、ワンフレーズごとに英語に通訳されていました。

通訳の女性が、 

12月は、我が国では
「shiso or shiwasu」と呼ばれます


と透き通った英語で
会場にアナウンスしたのです。

見事なリカバリーで、
これで大臣に恥をかかせずに済みました。

大臣の周りには、
世界からきた先生(研究者)が集まって来て、
大臣はさきほどの通訳を介して話をして
握手をしました。

そして
この上なく機嫌よく、会場を後にされました。

たぶん、
大臣は自分の間違いに
気がついていませんでした。 

この一件があってから、
私は読めないかもしれない漢字には
必ずふりがなを付けるようになりました。

北方領土担当大臣が
会見のときに「歯舞・色丹」とあるのを
「はぼまい・しこたん」と読めずに、

「えーと、あれ、これ、なんて読むんだっけ?」

と、後ろに控えている秘書官に聞いて物議をかもしたことがありました。

「北方領土を担当している大臣が、島の名前を読めないとは、大臣の資格がない」
と新聞で相当に叩かれました。

知っていても、とっさのときに、
漢字の読み方をどわすれすることはあるのです。 

特に名前はむずかしい。
読み仮名がないと絶対によめません。

表彰状を読んだときに、そう思いました。

それにしても、
あのときの女性の通訳は大した人物でした。

まだお若かったのですが、
今頃は、超有名な通訳者になっているのかも。

お名前もお顔も覚えていませんが、
とっさのあざやかな機転は今でも忘れません。

「コングレ」という会社の方でした。

それから、読み間違いのリスクを
事前に指摘された
課長のことも忘れておりません。

この場をお借りして、
お二人に、お礼申し上げます。

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