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葉酸の通知は、平成一二年一二月二八日の御用納めの日に発出されている

妊娠初期に葉酸を多く摂取すると神経管欠損症を予防することができます。

このことを知ったのは、青森県のむつ保健所にいたときです。

このころは、公衆衛生に燃えており、英国の公衆衛生の本を買って、辞書を片手に読んでいました。

母子保健は日本と共通することが多く、また子どもも生まれたばかりだったので、なじみのあるものが書かれていました。

ところが、日本にはない項目もありました。

英国では神経管欠損症が増加しており、その原因が妊娠初期の葉酸の不足と関係していることから、妊婦には葉酸のサプリメントを飲むように指導しているとあったのです。

日本のどの公衆衛生のテキストにも書かれていないことでした。

ラングマンの発生学の教科書を見てみるときちんと書かれておりました。

英国の一般向けの出産育児書にも葉酸が神経管欠損症の予防に役立つとありました。
野菜だけだと不足するので、葉酸の栄養補助食品(サプリメント)を飲むように書いてありました。

厚生省の母子保健課の担当に聞いてみましたが、葉酸のことは全く知らないし、日本では問題にもなっていないと笑われました。

おのれ、自分が母子保健課に勤務することがあれば、葉酸をやってやる!」と密かに胸に誓いました。

それから四年後、奇跡がおきました。

環境庁勤務から、厚生省の母子保健課に異動となったのです。

出生時の先天性奇形モニタリングをやっていた横浜市立大学の産婦人科の教授に聞いたところ、我が国でも二分脊椎などの神経管欠損症が増えているという情報提供がありました

課長に相談し、検討会を設置することになりました。

我が国でも神経管欠損症が増えていること

葉酸が含まれる野菜の摂取量が昔に比べて減っていること

諸外国では神経管欠損症の予防のために、妊娠初期のサプリメントによる葉酸摂取が指導されていること


検討会では、我が国においても妊娠初期に葉酸のサプリメントを勧める旨の情報提供をすることが決まりました。

ただ、通知を発出するときには、騒動がありました。

これまで母子保健課が出した栄養関係の通知は、健康局の栄養指導室と連名でした。

今回も、連名でやりましょうと相談したところ、NOと言ってきたのです。

これまで栄養指導室は、食品から自然に摂取することを前提とした指導を行ってきており、サプリメントを推奨したことはないというのです。

野菜を多く食べることで葉酸摂取を指導した方がいい、とのことでした。

専門家に聞いたところ、野菜からだと摂取量が足りないこと、妊娠初期はつわりなどで食がすすまないことがあり、推奨できないというものでした。

栄養指導室には、いくら言っても頑として応じなかったので、母子保健課単独で通知を発出しようとしたら、最終的に折れてきました。

通知を出して少し後に、家の近くのドラッグストアで、葉酸のサプリメントを目にしました。
妊娠を考えている女性にお勧めしますと広告していました。

改めて当時の通知をネットで見てみました。
平成一二年一二月二八日の御用納めの日に出しています。

一日の葉酸の摂取量は〇・四mg、時期は妊娠の一か月前以上から妊娠三か月までとしています。
栄養指導室とのやりとりの痕跡が、いろいろと載っています。

母子保健課の担当は、私と管理栄養士のNさんの名前が載っていました。
実は、栄養指導室との調整で一番苦労しました。

粘り強いNさんがいなかったら、通知はまとまらなかったでしょう。
Nさんは、既にこの世の人ではありません。

通知を出した御用納めの日は、Nさんと二人で相当遅くまで飲みました。
家に帰ったら、鍵がかかっておりチェーンまでかけられていたような記憶が……。

通知を見て、懐かしい思い出がよみがえってくるとは、年をとったなと思います。

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