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市町村の食生活改善推進員の活動は、「食べる力」と「社会とのつながり」の両方を満たす一石二鳥の活動である

元厚労省健康局長をされていた宇都宮啓さんの「要介護にならない! 自立と寝たきりの分岐点、『フレイル』を知る」(ワニブックス|PLUS|新書)を読みました。

従来の健康づくり本と同じで、生活習慣病対策の本かと思っていたところ、全く違っていました。

一言でいえば、「フレイル対策の本」です。

フレイルとは、歳を取ることによって心身が老い衰えてきた状態です。

年齢とともに心身の機能が弱まり、日常の小さな不調が積み重なっている状態をいいます。

「最近疲れやすい」「外出が減った」といった変化も、そのサインの一つ。

放っておくと、いずれ介護が必要になる可能性が高まります。

しかし、この段階で気づいて対策を始めればもとに戻れる。

その改善のチャンスが残されているのがフレイル。

フレイルとは、「いつまでも自立して生きる道」と「要介護あるいは寝たきりになる道」の分岐点

これまでの健康づくり対策は病気の予防を目的として行ってきました。

しかし、歳を取ってくると、必ずしも病気にはならなくても、小さい字が見えにくくなる、耳が遠くなってくる、時々物忘れするなどということから始まり、サルコペニア(筋量低下)や体重減少、そして何もしなければ、多くの場合、要介護状態にまでなってしまう。

つまり、これまでの健康づくり対策だけでは防ぎきれないと、宇都宮さんは指摘しています。

一般財団法人日本食品協会の代表理事をされている宇都宮さんは、市町村の食生活改善推進員による食と地域活動を通じた健康づくりに加えて、フレイルを予防していく大切さを、全国に発信しています。

その中で、確信していることがは次のことです。

フレイル対策なくして、理想の晩年はなし。
フレイルを防いでこそ、生き生き人生あり。

宇都宮さんは、フレイル予防法は二つあると断言しています。

一つ目の答えは、「食べるものと食べ方
二つ目は答えは、「地域活動やボランティア活動

フレイルを予防・改善し、いつまでも住み慣れた家で自分らしく暮らし続けるためには、たとえ80歳になっても、90歳になっても、100歳になっても、地域の中に自分の役割を見つけ、多くの人とかかわりながら生きていくことが大切だと、言っております。

食事では次が大事です。

たんぱく質の摂取をもっと意識しよう。筋肉や骨、皮膚、内臓にいたるまで、私たちの身体はたんぱく質によってつくられている。

「朝食を摂るか、抜くか」がフレイルの分かれ道。脳のエネルギー源となるブドウ糖は、体内には大量に貯蔵できないため、朝食の欠食は脳の働きに悪影響を与えやすい。

「みんなで一緒に食べる」が強力な介護予防になる。共食は「栄養を摂る」という食事の目的に加えて、心身の健康や介護予防、健康寿命の延伸にまで効果をもたらす大切な食習慣である。

五感を使う料理は認知症予防に役立つ。調理は五感を刺激する作業である。

〈視覚〉 食材を見て、色や形を判断する
〈触覚〉 食材を触り、包丁や鍋を使って調理する
〈聴覚〉 調理中の音を聴く
〈嗅覚〉 香りを確かめ、かつ楽しむ
〈味覚〉 できあがった料理を味わう

フレイル予防では、このように食事が大切な役割を果たします。

もちろん「運動」も大事ですが、運動にこだわる必要はないと宇都宮さんは言っております。

運動に負けないくらい効果的な予防策として、文化活動とボランティア・地域活動が大事です。

特に運動が苦手な人は、無理に運動をしなくとも文化活動やボランティアなどを行えば、十分な予防効果があります。

定年となって仕事がなくなった男性には、「きょうよう」と「きょういく」が大事だと言われることがあります。

それは、教養と教育ではありません。

もちろんそれらはないよりもあった方がいいでしょうが、「今日、用がある」、「今日、行くところがある」、こうした繋がりがあることが大事です。

宇都宮さんは、ご自身の経験を書いています。

二人の子どもが生まれて住んだ場所は、郊外の新興住宅地。
厚労省のある霞が関までは遠距離通勤です。

朝、家を出て、夜帰る日々。
家のことも、地域のことも妻にまかせきり。

地域に友人は一人もいません。
知っている人は、引っ越しの際に挨拶に行った両隣の夫婦だけでした。

それで困ることはなく、「何か問題がありますか?」とさえ思っていました。

年に一度、居心地が悪い日がありました。地域の祭りの日です。
外部の屋台業者は入らずに、地域住民や地域の事業者関係者で屋台を出していました。

一緒に行った妻は、「焼き鳥、たくさん買うから、1本おまけしてね」と店のひとと楽しそうにおしゃべりをします。

しかし、知った人のいない宇都宮さんは、その地域の輪の中に入れず、肩身の狭い思いしかありません。

友達が一人もいないので、本当につまらなく、帰りたくて仕方がありませんでした。

お祭りの日さえ、やり過ごせば、またいつもの日常が戻ってくる。そういう状況でした。

ある年の3月に、突然、小学校のPTA会長さんが、自宅を訪ねてきました。

「次のPTA会長になってください。うんと言うまで帰りません」と通告されたのです。

なんて強引な人だと思いましたが、冷静になってよく考えると4人の子どもが通っている小学校です。

お世話になっている小学校に協力するのは親の責務だと、引き受けることになりました。

PTA会長を引き受けたことが、人生の分岐点となったと宇都宮さんは言っています。

PTA会長になってから、地域に知り合いが増えてきました。

自分の地域を知ることができました。

お祭りでは、地域の人たちと屋台で仕事をしています。焼き鳥も300本焼きました!

厚労省を退職して、なにもない日に、地域の友人たちと集まって食事をしたり、お酒を飲んだりしました。

そんな現在があるのは、あの日勇気を持って、一歩踏み出したからです。

もし、「PTA会長というボランティア活動を引き受けていなかったら」と考えると、背筋が寒くなると言っております。

宇都宮さんは、お母さまの例も紹介しています。

お母さまは、北海道の出身で、宇都宮さんが3歳の頃に一家で千葉に移住してそのまま住み続けていました。

宇都宮さんの自宅から車で40~50分くらいのところです。

年齢を重ねると、仲の良かった友人が一人、また一人と周りからいなくなります。

宇都宮さんのお母さまも、近所の同世代の友人が亡くなったり、子どものもとに引っ越したり、施設に入ったりして、気が付けば、身近に友人がいなくなってしまいました。

自治会などの地域活動に参加しておれば、自分より若い世代とも新たな関係を築けたかもしれません。

「もっと外に出て、人付き合いをしたほうがいいよ」と息子の宇都宮さんが勧めても、お母さまは気が進まなかったようで外に出ることはありませんでした。

同居してたお父さまが健在の間はよかったそうです。

お母さまは、軽い物忘れが見られたものの、会話は普通にできており、深刻には受け止めていませんでした。

状況が大きく変わったのは、お父さまが亡くなり、一人暮らしになってからです。

お母さまは85歳になっても車の運転をしていましたが、その車に傷が増え、「どうしたの?」と尋ねても「知らない」「私じゃない」と答えたそうです。

健康食品をテレビ通販で買い込み、支払いを忘れて督促状が届く。

銀行の通帳が無くなったと言っては、すぐに再発行する。

そんな出来事が次々に起こりました。

要介護認定をして、要支援2となりました。

友人をつくったり、人との会話の機会をもってもらいたいと思い、デイサービスを勧めても、「イヤだ」と言って行きませんでした。

一人暮らしはそろそろ危ないな、と思っていた矢先でした。

夜中の二時半に、「お母さまが路上で転び、動けなくなっている」と救急隊から連絡が入りました。

夜間徘徊で転倒し、骨盤骨折でした。

「もう自宅に帰すのは難しい」とあきらめたそうです。

お母さまを気にかけ、声をかけあえる友人が地域にもういなかったことが、宇都宮さんの決断を後押ししたそうです。

お母さまは91歳。施設で暮らしているそうです。

もちろん施設が悪いわけではありません。

今は安全で安心できる環境で過ごせており、宇都宮さんも感謝しています。

それでも、もし地域に友人や居場所が残っていたなら、お母さまはもっと長く「自分らしく健康的な暮らし」を続けられたのではないか。

そう思わずにはいられないと宇都宮さんは言っております。

高齢になると、仲間を失い、外に出る機会が減ります。

その結果、フレイルや認知症の進行が早まってしまいます。

だからこそ、「今ある友人関係で十分」とするのではなく、身近な地域の中で新たな出会いを求めて地域活動に参加していくこと。

そうやって地域に居場所や仲間をつくり続けていくことは、単なる交流ではなく、自らの健康寿命をのばす大切なフレイル予防となります。

宇都宮さんは、どうかこのことを自分事として、しっかりと受け止めて欲しいと言っております。

健康づくりは、「栄養」「運動」「休養」の3つが基本とされていましたが、忘れてはならないのが、人とのかかわり。すなわち社会参加や地域活動です。

フレイルは防げます。改善もできます。

誰にでも訪れる老いを、豊かなものへと変えることができます。

フレイルを防ぎ、乗り越えるには「食べる力」をどう保つかが問われます。

もう一つの重要な柱が「社会とのつながり」です。

食生活改善推進員の活動は、「食べる力」と「社会とのつながり」の両方を満たす一石二鳥の活動です。

興味があれば、ぜひ地元市町村の役所の栄養担当の方、あるいは地元の食生活改善推進員の方に連絡をしてみてください、と呼び掛けています。

説得力のある本を出版されて、さすが日本食生活協会代表理事だと思いました。

私は、自分事のフレイル予防として、文化活動を行って地域に貢献したいと思いました!



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