在宅医療には正解はないというIWATANIテーゼがあり、「はじめの半歩」と「隣の在宅医療」が大事である
在宅緩和ケア研修会を開催しました。
西都市西児湯医師会との共催で、医師会長さんにも参加していただきました。
講師は、延岡市で縁在宅クリニックを開院されている岩谷健志先生です。
岩谷先生からは、「西都児湯地域 在宅緩和メディカルラリー」と題して研修をしていただきました。
岩谷先生からはお題が出され、そのお題について、グループワークで議論していくものです。
岩谷先生から提示されたテーゼは、「在宅医療には正解はない」ということです。
私はこれを、「IWATANIテーゼ」と名付けました。すいません勝手につけました。

岩谷先生は、延岡市の離島「島ノ浦」の出身です。現在の人口は600人。
島根医大を卒業され、県立延岡病院の救急医として勤務したほか、五島列島などの離島での医療なども従事しました。
子ども時代から医師不足や地域医療の崩壊が語られている環境で育っています。
地域を盛り上げたいとの想いから縁・在宅クリニックを開業され、もうすぐ5年目になります。

以下は、岩谷先生の発言です。
地域医療は、病院→ 診療所・クリニック→ 高齢者施設→ 地域住民、という階層があるが、もろく崩れそうな状況にある。
都会では、医療・介護資源は潤沢だが、隣接する連携が見えず、「分断」されているという状態。
在宅医療こそが地域医療をつなぐピースとなり得ると決意して、延岡市で理想を追求することとした。
地域を中心に多職種が輪をつくって手を取り合う連携ができることが理想。
「人が理想を語らないと理想はできない」という信念で、「地域型在宅医療」として地域医療の隙間や溝を埋める役割を担うことで、現在挑戦中。
在宅看取りでは、年間100人を達成した。県内では最多、九州でも最多規模。
数だけではなく、質の向上を目指し、この研修を通じて西都市・児湯郡といった他地域から学んで、県北・延岡市に持ち帰りたい!

在宅緩和メディカルラリーとは次の要素から成り立っています。
医師、歯科医師、薬剤師、看護師、介護支援専門員(ケアマネージャー)、そのほか在宅支援に関わる多職種でチームを結成し、模擬在宅緩和を行う。
専門性を活かした意見交換を行い、多職種、同職種で在宅緩和の選択肢を共有する。
地域における在宅医療で最大限の力を発揮できる連携体制(多職種連携コンピテンシーモデル)を構築する。
ここで言う、多職種連携とは、指揮命令系統のあるプラミッド型の組織ではなく、患者・家族・地域を中央に、各専門職が連携するモデルです。

連携の成功には、以下の要素が重要であると指摘しています。
各職種の役割遂行:医療、看護、医療機器、福祉用具など、各専門家が自身の専門分野でリーダーシップを発揮する。
他職種の理解:他の職種の専門性や役割を理解し、誰に何を依頼できるかを知ることが重要です。
他者理解を通じた自己省察:他職種の視点を知ることで、自身の専門職としての在り方を見つめ直し、改善につなげることができます。
関係性の構築:研修の場でチームを組んだ経験が、実際の臨床現場であった際に円滑なコミュニケーションを可能にします。

岩谷先生は、「変化への適応力こそが地域医存続の鍵である」と言っておりました。
その土地の文化や地域性に根ざした医療に価値があります。
ダーウインが示した「生き残る種は、もっとも変化に適応できる種である」という言葉を引用して、この言葉が地域医療に当てはまるともおっしゃっておりました。
地域医療が直面する課題は、巨大病院の建設やスーパードクターの招聘で解決するものではなく、日々変化する地位の事情、時代、政治にうまく適応していくことが求められる。
変化への適応は、個々の事業所だけではなく、地域全体として取り組むべき課題である。
模擬在宅緩和研修を通じて、「在宅医療のはじめの半歩」を可視化するとともに、他機関の在宅医療が見えにくい現状を踏まえた「隣の在宅医療」の可視化をするという意義を強調しています。
このメデフィカルラリーに参加した専門職はおよそ60名。
「在宅医療のはじめの半歩」と「隣の在宅医療」が可視化されたと感じました。

在宅医療で用いる医療機器は小型化・高性能化が進んでおります。
岩谷先生は、持続皮下注射ポンプの例を挙げていました。
スマートフォンで流量を調節でき、皮下に針を留置するために、血管確保が困難な患者でも使用可能です。
抜けても大量出血のリスクが低く、効果は静脈注射と有意差がないとされ、非常に有用なツールです。
患者自身が必要なときにボタンを押して痛み止めを注射できます。
前回の診療報酬改定により、がんだけでなく、心不全、慢性呼吸器疾患(呼吸不全)、ALSなどの患者の在宅緩和ケアにもこのポンプが使用可能となりました。
国は制度改正を通じて、在宅での看取りや緩和ケアを推進しており、今後もその傾向は続くと予想されます。
在宅で緩和ケア機器を使える地域と使えない地域では、使えない地域は、患者は救急搬送され病院で亡くなるケースが増えます。
これは病院の医療資源を圧迫する悪循環につながるため、在宅で患者を支える体制を構築することが、地域全体の医療を強くするのです。

小さな医療機器が地域医療の体制づくりに役立つとは、最後の最後まで目から鱗でした。
在宅医療は、はじめの半歩と隣の在宅医療が大事です。
在宅医療が普通に行われる地域を作っていくことは、各職種がちょっとした勇気と優しさを出すことで、実現可能だと感じました。

