診療所医師80歳引退承継・新規開業なしと仮定した場合、北海道の診療所医師数は2040年に47%減少する
森光医政局長の講演の第三弾です。
これまでと同様に、この文章には私の個人的な見解も入っております。
医師偏在対策・診療科偏在対策・医師の生涯にわたる動向とその対策、つまり医師対策三部作を書こうとしましたが、大変なので、医師の生涯にわたる動向とその対策は、別の機会に回します。
個人的な見解ですが、ここまで赤裸々に医師の動向について語った人はいないでしょう。
将来医師になる医学生は必見です。
医師確保対策に関する全体像
医師養成確定における取組、各都道府県の取り組み、医師の働き方改革の3つの側面があります。
1 医師養成課程における取組
大学医学部
中長期的な観点から、医師の需要・供給推計に基づき、全国の医師養成数を検討しています。
特定の地域や診療科で診療を行うことを条件として選抜枠ととしての地域枠の各医学部における活用を行っています。
臨床研修
全国の研修希望者に対する募集定員の倍率を縮小するとともに、都道府県別に臨床研修医の募集定員上限を設定しています。
その際、都市部や複数医学部を有する地域について、上限数を圧縮するとともに、医師少数地域に配慮した定員設定を行い、地域偏在の是正を図っています。
専門研修
日本専門医機構において、将来の必要医師数の推計を踏まえた都道府県別・診療科別の専攻医の採用上限数(シーリング)を設置することで、地域・診療科偏在の是正を図っています。
産科等の特に確保が必要な診療科や、地域枠医師等についてはシーリングの対象外としています。
2 各都道府県の取組
医師確保計画
都道府県においては、医師偏在指標により医師偏在状況を把握し、計画期間の終了時点で確保すべき目標医師数を設定しています。
具体的な施策としては、以下があります。
大学と連携した地域枠の設定
地域医療対策協議会・地域医療支援センター
地域医療対策協議会は、医師養成、医師の派遣調整等の医師確保対策の方針について協議しています。
地域医療支援センターは、上記の地域医療対策協議会の協議結果に基づき、医師確保対策の事務を実施します。
具体的には、医師派遣事務、派遣される医師のキャリア支援・負担軽減、勤務環境改善支援センターとの連携などを実施しています。
地域枠医師のキャリア形成プログラムの策定です。これは、医師不足地域の医師確保と、派遣される医師の能力開発・向上の両立を目的としたプログラムです。
認定医師制度の活用。
これは、医師少数区域等に一定期間勤務した医師を厚労大臣が認定する制度を活用し、医師不足地域の医師を確保するものです。
医師の働き方改革
地域の医療を支えている勤務医が、安心して働き続けられる環境を整備することが重要であることから、都道府県ごとに設置された医療勤務環境改善支援センター棟による医療機関への支援を通じて、適切な労務管理や労働時間短縮などの医師の働き方改革を推進しています。
具体的には、医療機関における医師労働時間短縮系計画の策定や追加的健康確保措置等を通じて、労働時間短縮及び健康確保を行っています。
また、出産・育児・介護などのライフイベントを経験する医師が、仕事と家庭を両立できるよう勤務環境の改善を推進しています。

地域枠の評価
35歳未満の医療施設従事医師数の推移を、地域枠が開始された平成26年の前後で比較すると、医師少数都道府県の若手医師の数は、医師多数都道府県と比較し伸びており、若手医師については地域偏在が縮小してきています。
平成24年 → 令和4年増加医師数(35歳未満)
全国 7954人 13.6%増
医師多数都道府県 1228人 4.6%増
医師少数都道府県 4027人 27.8%増
それ以外都道府県 2699人 15.6%増
平成24年 → 令和4年増加医師数
全国 38594人 13.4%増
医師多数都道府県14927人 12.4%増
医師少数都道府県12084人 14.7%増
それ以外都道府県11583人 13.5%増
一方、全ての世代の医師で見ると、医師少数都道府県の医師数の伸び率は、医師多数都道府県より大きいですが、その伸び率の差は、若手医師(35歳未満)における伸び率と比較してわずかです。
二次医療圏別における医療施設従事医師数の推移は、医師少数区域では、その他の区域と比較して、特に若手医師(35歳未満)の増加数及び増加率はともに大きくなっています。
平成24年 → 令和4年増加医師数(二次医療圏・35歳未満)
全国 1617人 2.5%増
医師多数都道府県 374人 0.8%増
医師少数都道府県 616人 14.1%増
それ以外都道府県 582人 5.1%増
平成24年 → 令和4年増加医師数(二次医療圏)
全国 3744人 1.6%増
医師多数都道府県 2446人 1.1%増
医師少数都道府県 676人 2.3%増
それ以外都道府県 622人 0.9%増
全ての世代の医師については、医師少数区域における増加率はやや大きいものの、増加数は小さくなっています。

診療所従事医師
診療所が主たる従事先の医師は、40歳未満の医師の割合は、約6%です。
診療所が主たる従事先の医師は、60歳以上の割合は、約53%です。
人口規模の小さい二次医療圏は、2012年から2022年にかけて診療所が減少傾向にあります。
一方、50万人以上の二次医療圏では、2012年から2022年にかけて診療所が増加傾向にあります。
地域別の診療所医師数の将来動向
北海道の診療所医師数は、2022年は3384人です。
診療所の医師が80歳で引退して承継がなく、当該医療圏で新規開業がないと仮定した場合、北海道全体の診療所医師数は、2040年には1786人で、47、2%の減少が見込まれています。
北海道の二次医療圏ごとの診療所医師数は、21の二次医療圏のうち、16(76.1%)の二次医療圏において、50%以上の減少が見込まれています。
北海道の人口の推移は、2020年が522.5万人で、2040年は431.9万人で、17.3%減と予測されています。
このように地域ごとに人口構造が急激に変化する中で、将来にわたり地域で必要な医療提供体制を確保し、適切な医療サービスを提供するため、以下の基本的な考え方に基づき、制度改正を含め必要な対応に取り組み、実効性のある総合的な医師偏在対策を推進することにしています。
総合的な医師偏在対策は、医療法に基づく医療提供体制確保の基本方針に位置づけています。

現状の課題と基本的な考え方
1 医師偏在は一つの取組で是正が図られるものではない
➡ 経済的インセンティブ、地域の医療機関の支えあいの仕組み、医師養成課程の取組等の総合的な対策の実施
2 若手医師を対象とした医師養成課程中心の対策
➡ 医師の柔軟な働き方等に配慮した中堅・シニア世代を含む全ての世代の医師へのアプローチの実施
3 へき地保健医療対策を超えた取組が必要
➡ 地域の実情を踏まえ、支援が必要な地域を明確にした上で、従来のへき地対策を超えた取組の実施
「保険あってサービスなし」という地域が生じることなく、将来にわたって国民皆保険が維持されるよう、国、地方自治体、医療関係者、保険者等の全ての関係者が協働して医師偏在対策に取組必要があります。
医師偏在対策の効果は、施行後5年目途に検証し、十分な効果が生じていない場合には、更なる医師偏在対策を検討することにしています。
医師確保計画で3年間のPDCAサイクルに沿った推進を取組を推進することにしています。
医師偏在の是正に向けた総合的なパッケージは以下のとおりです。

1 医師養成過程を通じた取組(若手)
医学部定員・地域枠
医師臨時定員について、医師の偏在対策に資するよう、都道府県等の意見を十分に聞きながら、必要な対応を進める
医学部臨時定員の適正化を行う医師多数県において、大学による恒久定員内の地域枠設置等への支援を行う
今後の医師の需給状況を踏まえつつ、2027年度以降の医学部定員の適正化の検討を速やかに扱う
臨床研修
広域連携型プログラムの制度化に向けて令和8年度から開始できるよう準備
医師少数県等で24週以上の研修を実施
2 医師確保計画の実効性の確保(中堅・シニア世代)
重点医師偏在対策支援区域
今後も定住人口が見込まれるが人口減少より医療機関の減少スピードが速い地域等を「重点医師偏在対策支援区域」と設定し、優先的・重点的に対策を進める
重点区域は、厚労省の示す候補区域を参考にしつつ、都道府県が可住地面積あたり医師数、アクセス、人口動態等を考慮し、地域医療対策協議会・保険者協議会で協議の上で選定(市区町村単位・地区単位等を含む)
医師確保是正プラン
医師確保計画の中で「医師確保是正プラン」を策定。地対協・保険者協議会で協議の上、重点区域、支援対象医療機関、必要な医師数、取組等を定める
医師確保指針について、令和9年度からの次期医師確保計画に向けて必要な見直しを検討
3 地域偏在対策における経済的インセンティブ等
経済的インセンティブ
令和8年度予算編成過程で重点区域における以下のような支援について検討
診療所の承継・開業・地域定着支援(緊急的に先行して実施)
派遣医師・従事医師への手当増額(将来者から広く負担を求め、給付費の中で一体的に捉える。保険者による効果等の確認)
医師の勤務・生活環境改善、派遣元医療機関への支援
これらの支援については事業実施要領の範囲内で支援
医師偏在への配慮を図る観点から、診療報酬の対応を検討
4 地域間の医療機関の支え合いの仕組み
全国的なマッチング機能の支援、リカレント教育の支援
医師の掘り起こし、マッチング等の全国的なマッチング支援、総合的な診療能力を学び直すためのリカレント教育を推進
都道府県と大学病院等との連携パートナーシップ協定
都道府県と大学病院等で医師派遣・配置、医学部地域枠、寄附講座等に関する連携パートナーシップ協定の締結を推進
医師少数区域等での勤務経験を求める管理者要件の対象医療機関の拡大等
対象医療機関に公的医療機関及び国立病院機構・地域医療機能推進機構・労働者健康安全機構の病院を追加
勤務経験期間を6か月から1年以上に延長。施行に当たって柔軟な対応を実施
外来医師多数区域における新規開業希望者への地域で必要な医療機能の要請等
都道府県から外来医師多数区域の新規開業希望者に対し、開業6か月前に提供予定の医療機能等の届出を求め、協議の場への参加、地域で不足する医療や医師不足地域での医療の提供の要請を可能とする
要請に従わない医療機関への医療審議会での理由等の説明の求めや勧告・公表、保険医療機関の指定期間の6年から3年等への短縮
保険医療機関の管理者要件
保険医療機関に管理者を設け、2年の臨床研修及び保険医療機関(病院に限る)において3年等保険診療に従事したことを要件とし、責務を課す
5 診療科偏在の是正に向けた取組
必要とされる分野が若手医師から選ばれるための環境づくり等、処遇改善に向けた必要な支援を実施
外科医師が比較的長時間の労働に従事している等の業務負担への配慮・支援等の観点での手厚い評価について必要な議論を行う。

診療領域ごとの患者数
診療科偏在を考えるうえで、診療領域ごとの患者数は以下の通りです。
患者調査による推計外来患者数を、類似する傷病を一定程度統合した上で、患者数の多いものを整理すると、高血圧や糖尿病等の内科領域の疾患の他に、整形外科、皮膚科、眼科、耳鼻科等の疾患が多く見られます。
プライマリケアを考える際に、大いに参考になります。
これまで、患者数を見て診療科を選ぶ顧客志向の医師は、あまりいなかったと思います。
今後は、こうしたマーケティングの考え方も、将来の診療科を選ぶ際に考慮するといいかと思います。

推計外来患者数の一覧(上位順)
傷病名 | 推計外来患者数(千人) |
1位 高血圧 | 602.9 |
2位 腰痛症 | 375.1 |
3位 かぜ・感冒 | 319.7 |
4位 皮膚の疾患 | 293.9 |
5位 関節症(関節リウマチ、脱臼) | 281.8 |
6位 糖尿病 | 201 |
7位 外傷 | 173.3 |
8位 脂質異常症 | 162 |
9位 下痢・胃腸炎 | 129.3 |
10位 慢性腎臓病 | 128.8 |
11位 喘息・COPD | 114.7 |
12位 がん | 109.6 |
13位 アレルギー性鼻炎 | 99.7 |
14位 骨折 | 87.6 |
15位 うつ(気分障害、躁うつ病) | 76.8 |
16位 緑内障 | 68.5 |
17位 白内障 | 66.5 |
18位 結膜炎・角膜炎・涙腺炎 | 62.3 |
19位 骨粗しょう症 | 58.4 |
20位 認知症 | 58.1 |
21位 不安・ストレス(神経症) | 52.9 |
22位 脳梗塞 | 52.4 |
23位 統合失調症 | 49.5 |
24位 近視・遠視・老眼 | 46.3 |
25位 不整脈 | 43.2 |
26位 前立腺肥大症 | 38.8 |
27位 睡眠障害 | 38.1 |
28位 中耳炎・外耳炎 | 38.1 |
29位 狭心症 | 32.5 |
30位 心不全 | 31.7 |
31位 正常妊娠・産じょくの管理 | 28.5 |
32位 便秘 | 24 |
33位 頭痛(片頭痛) | 22 |
34位 更年期障害 | 20 |
35位 慢性肝炎(肝硬変、ウイルス性肝炎) | 17.4 |
36位 末梢神経障害 | 17.4 |
37位 難聴 | 15.1 |
38位 貧血 | 13.6 |
39位 乳房の疾患 | 10.3 |
40位 頸腕症候群 | 9 |
【出典・注釈】
* 出典: 令和5年「患者調査」
* 推計外来患者数が15千人以上を基準にして傷病名を抽出。
* ICD-10による疾病分類(中分類)を参考にして、類似する傷病名を統合して集計。
* ただし、「XXI 健康状態に影響を及ぼす要因及び保健サービスの利用」「XXII 特殊目的用コード」および、その他の大分類の疾患、歯科系疾患は除く。
