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教科書的な医学は普遍化された患者を扱うが、現実の世界の医療では個々の物語を持ったナラティブな患者を扱う

日本地域医療学会の話です。

学会では、総合診療専門医の次のサブスペシャリティ領域である、地域総合診療専門医の養成を行っております。

総合診療専門医の二階建てのサブスペシャリティには、家庭医療専門医、病院総合診療専門医、地域総合専門医の3つがあるとのこと。

そんな中で、地域総合専門医を目指している3人の医師の報告がありました。

1番目に登場したのは、田島浩治先生です。

国保野上厚生総合病院に勤務しておられます。

自治医大の出身で、和歌山県内のへき地中核病院やへき地診療所で勤務しながら、心臓血管外科医を目指します。

卒後8年目で、地域医療・総合診療をやりたいとの思いが強くなり、心臓血管外科の修練を中止しました。

外科医の専門医の資格は既に持っていたので、外科専門医の次のキャリアとして地域総合専門医の資格を取得しようと決意します。

地域総合専門医は、総合診療、内科、外科、救急の専門医の取得者は、学会の指定する病院で研修プログラムを修練すれば取得可能となっています。

ところが、和歌山県には地域総合診療専門医の研修基幹施設がありませんでした。そこで日本地域医療学会に相談しました。

自分が勤務する国保野上厚生総合病院に基幹施設になってもらえないかと、日本地域医療学会とともに依頼して、基幹病院になってもらいます。

さらに、院長、副院長に指導医になってもらったそうです。

こうして周りの方々に助けていただき、ようやく地域総合専門医になることができました。

義務年限最後の年がへき地診療所勤務だったので、この診療所を連携施設にしてもらい、地域総合診療専門医研修で必要なへき地研修を、その年にカウントしてもらったそうです。

指導医には、週1回、診療所から国保野上厚生総合病院に通って面談して活動報告をしました。

研修中には、
住民講座の企画・実施、
多職種連携の会議の実施、
小中学校生徒への医療体験、
診療所における院外薬局への移行、
ACPのワークショップの開催、
遠隔診療支援システムを利用した減塩指導、
高校生の地域医療フィールドワーク

に取り組みました。

各種のイベントを新聞社に連絡して、取材にきてもらい、新聞に記事として載せると、参加した職員たちの士気があがると言っておりました。

病院のアウトリーチ活動は、ソーシャルキャピタルの醸成にもつながり、武器の一つになると言うことでした。

これは既に内科、外科、救急の専門医を取得している医師が、セカンドキャリアとして地域総合診療専門医を目指すのにいいモデルだと思いました。

もし、宮崎県に地域総合診療医の研修基幹病院が無くても、学会に相談して創意工夫すれば、実現しそうだと感じました。

2番目に登場したのは、華岡晃生先生で、石川県にある公立穴水総合病院に勤務されています。 

金沢大学出身で、穴水総合病院では、救急・外来・入院・健診・訪問診療を担当しています。

この地域で研修を受けた経験から考察をしています。

地域医療学会は、各地域の文化・伝統などを医療システムの基盤となる固有の価値観を現代医療と統合させる役割を担うべきだと考えるようになったと言っています。

能登の各地域には、海の神を家に招く儀式があるそうです。

能登地域には独特の死生観があり、都市部とは異なる終末期における意思決定が行われることがあると指摘しています。

60歳代のがん患者が、根治的治療より緩和ケアを採択し、「金沢の病院には行かない。ここで十分」だということでした。

80代男性が、「病院で死ぬより、家の仏間で最期を迎えたい」と希望します。

教科書的な医学は、普遍化された患者を扱いますが、現実の世界の医療では、個々の物語を持ったナラティブな患者を扱います。

病院に実習に来る学生のために、手間をはぶくためにNotionを導入して、オンラインで対話ができるようにしました。

学生との対話や何気ないコメントを重ねるうちに、地域の文化や伝統をしっかりと見てもらうことが地域を見ることにつながることに気がつきます。

学生には、毎日28日に護摩を焚く寺に実習に行かせる。

家庭を訪問した際には、仏間や氏神様を確認させる。

QOLの改善のために、漢方医学の重要性や鍼灸の利用なども考えて貰う。

地域を把握するためには、住民との交流、キャッチボールが必要。

手間を省くために導入したNotionにより、参加者だった学生が参画者に変身しました。

教育とはなにかを感じることになったそうです。

医学だけでなく、社会や心理、死生観、価値観、意思決定、哲学など、それぞれの地域で違い、個別性があるのです。

3番目のトリで登場したのは、宮野俊輔先生で、山梨県栗原中央病院の小児科医です。

山梨医大の出身です。

大学病院の小児科で専門医を取得して、3次救急病院で小児救急、新生児医療に関わっていました。

2019年に栗原中央病院の小児科医となります。人口6万人の2次病院で、ベッド数h200床。

念願だった地域医療のキャリアが始まりました。

小児科だけではなく内科の研修も始めました。

積極的に地域住民と交わります。

宴会やお祭りに参加しました。

こうした地域住民との関わりの中で、地域の小児科的な課題が判明します。

問題行動を起こす児童」や「不登校」が地域における大きな課題だったのです。

そうした地域のニーズを受けて、小児救急や新生児医療の専門から、発達障害診療、不登校診療への専門性のシフトを行いました。

診察室内の治療だけでは限界があるので、病院の外に出て、教育、行政、医療、地域の連携が必要だと考えます。

子育て無料相談室を開設して、支援の早期介入が可能となり、教育現場からの依頼が相次ぎました。

市の事業として予算化され、医療、行政、教育の連携チームが誕生しました。

小児科医・保健師・教員などで構成されます。

学校の訪問支援、教員へのレクチャー、不登校児童の支援会議の開催(週1回)を実施しています。

こども食堂、ボランティア活動なども行います。

現在の業務は内科2割、小児科医6割、行政2割。

医師が地域のニーズにあった働き方をするには、市民、行政、病院管理者、院長などの幅広い理解が不可欠

地域に感謝し、今後も地域のために全力をつくすことが大事

若い医師に対して、
本気でやりたいものを本気でぶつかっていくこと。そして後悔しないこと。地域医療は面白い。自信をもって突っ走ってもらいたい」と言っておりました。

最後に登場した宮野先生は、祭りのはっぴを着て講演をされました。

ソムリエの資格を持ち、別名は「栗原の熊」と呼ばれているそうです。

オリジナルブランド「栗原の熊」のワインもあるとのこと。 

飲んでみたいものです。

とにかく、いろんな地域にはいろんな地域医療があり、いろんな地域を見る医師がいると感じました。

大学にいては、地域はわからない!

寺山修司さんのように「書を捨て、町に出よう」ですね。

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