古事記は公衆衛生学的に示唆に富む
「古事記」は面白いです。
たくさん本がありますが、おすすめは、石ノ森正太郎さんの「古事記」(中公文庫)と、里中満智子さんの「古事記(上下)」(小学館文庫)です。
漫画なので、すらすら読めます。タイパがいい。
いずれも文庫本なので安く、コスパもいい。
日本を代表する男女の漫画界の巨匠が、それぞれの解釈で描いた古事記は魅力的です。
古事記は、公衆衛生的にも示唆に富みます。
日本列島ができて最初の男女であるイザナキとイザナミが出会って、最初に生まれたのがヒルコ(蛭子)です。
産婦人科学的には、「胞状奇胎」であると言われています。
この胞状奇胎は、手塚治虫さんの伝説の医療漫画「ブラック・ジャック」にも取り上げられています。

古事記の作者の太安万侶は、語り部の稗田阿礼の話を聞いて、省略せずに冒頭にもってきたのは大したものだと思います。
日本の始まりの話なので、異常分娩の話は無かったことにして、正常分娩のことから書き始めることもできたはずです。
もしかして太安万侶は、医学の父ヒポクラテスのように、言い伝えられた病態を、後から読んだ人が判るように正確に記録に残そうとしたのかも。
「カルテ」には、患者の医学的所見や問診の結果を正確に記載する必要があります。
さて、イザナキとイザナミは多くの神を産みました。
火の神を産んだところ、イザナミは産道に火傷を負い、それが原因で死んでしまいます。
最愛の妻を亡くしたイザナキは、原因となった火の神の首を、怒りにまかせて刀で切り落としました。
イザナミのことが忘れられないイザナキは、地の底の黄泉の国へと向かいます。
イザナミに、帰ってきてほしいと頼みました。
すると、暗闇の中でイザナミの声がしました。
「黄泉の国の食べ物を口にした身なので、帰れません。しかし、それほど言うなら神様と相談します。その間は絶対に私の姿をみてはいけません」
イザナキは返事を待っていましたが、時間が経過するにつれ、とうとう我慢ができずに、たいまつに火をつけて、のぞき見をしてしまいました。
イザナミは蛆がわいた醜い姿に変わりはてていました。
その周りには、雷獣や醜女といった化け物がたむろしています。
驚いたイザナキはその場を立ち去ろうとしますが、音に気がついたイザナミに見つけられてしまいました。
「見るなと言ったのに。私に恥をかかせたな」
イザナミは雷獣たちに、イザナキを捉えるよう命令します。
イザナキは必死で逃げますが、雷獣たちがせまってきました。
イザナキは、櫛を取り出して、櫛の歯を折って投げると、タケノコが生えてきました。
雷獣らはタケノコに食らいつきます。
その間に、イザナキは逃げることができました。
今度は醜女たちが追いかけてきました。
桃を投げつけると、爆弾のように破裂して撃退することができました。
イザナキは、やっとのことで黄泉の国に通じた穴から外に出て、岩で穴を塞ぎました。
黄泉の国のイザナミの声が聞こえてきました。
「おのれ、この恨み。ウラミハラサデオクベキカ。おまえの国の人間たちを1日1000人殺してやる」
「ならば、1日1500人産んでやる」とイザナキは言い返します。
黄泉の国から逃れたイザナキは、けがれを流して身を清める「みそぎ」をしました。
この場所が、宮崎市のシーガイアの近くにあるみそぎ池です。
みそぎのあとに、イザナキの左目から太陽の神アマテラスが、右目から月の神ツクヨミが、鼻の穴から海の神スサノオが生まれます。
太陽神アマテラスの孫のニニギノミコトが、高千穂の峰に降りてくるのが、かの有名な「天孫降臨」です。

現代の日本は、年間約160万人が亡くなり、約80万人が産まれています。
黄泉の国のイザナミは、史上最大に勢力を拡大しています。
ついに国は、こども家庭庁を創設して、少子化対策へと政策の舵を切ることになりました。
アマテラスとスサノオは、古事記の中で活躍しますが、月の神ツクヨミは出番がありません。
太安万侶は、ツクヨミを忘れてしまったのか。
ツクヨミは、日本初のお蔵入りキャラとなりました。
天岩戸にこもったアマテラスは、日本初のひきこもりです。
皮を剥いだ馬を投げつけたスサオノは、日本初の不良少年。
スサノオを見ると、なぜか尾崎豊さんを思い出します。
ツクヨミの子孫が、月光仮面とセーラームーンになるという古事記のスピンアウト版「その後のツクヨミ」は売れるかも。


