健康講話は、現場の雰囲気に応じて臨機応変に変えるレジリエンスが必要である
7月1日は安全の日です。
1日から8日までは安全週間です。
日本全国の事業場で安全旗がはためきます。
安全週間の期間中に、日本中の会社では、安全大会を行って、安全に関する講話を識者から聞いたり、標語を募集したりします。
青森県のむつ保健所に勤務していたときに、営林署から頼まれて健康講話をしたことがありました。
場所は山の中の小屋でした。
そこに林業の作業員が20名ほど集まっておりました。
当時はパワーポイントがない時代です。
バランスの取れた食事や適度の運動といった一般的な話は通用しないと感じました。
そこで、事前に組み立てていた健康一辺倒の話をがらりと変えて、山に関する安全をメインにして健康のところは少なくしました。
林業で一番怖いのは、倒木です。
別の人が切った木が倒れてきて死亡する事故はよく発生していました。
予防するためには十分な距離を保つことが規則で定められています。
しかし、声を掛け合いながらしたりするため、距離を保たずにする場合もあります。そこが危険ポイントです。
笛を吹いて近づかないようにしたりする必要があります。
また、怖いのは切った木がバウンドして自分の体にあたることがあります。どこにバウンドするかあらかじめ予想できないことがあります。
またチェーンソーでケガをすることがあります。
ほとんどは、自分の足を切る事故です。木を切った勢いで、自分の足を切ることがあるのです。
野生生物からも身を守る必要があります。
林業労働者で一番怖いのは、蜂です。
日本では人を指すのは、スズメバチ、足長バチ、ミツバチの三種類。
特に危ないのはスズメバチです。木の根元に巣をつくっていることがあります。
今では、刺されたときのアナフィラキシーショックの予防にエピペンを携帯することもできるようになりました。
エピペンには、エピネフリンが入っており、刺されたときに自分の足に注射をします。
ツツガムシ病や日本猩紅熱といったダニに刺されておこる病気があります。
昔はありませんでしたが、今では西日本ではSFTSも要注意となっています。

生活習慣の中でも、たばこは林業の敵です。
山の中でのたばこは、山火事の原因にもなります。しかも肺がんなどの病気を引き起こします。
昔の南部藩では山での喫煙は禁止されていました。
木を伐採する職人、山に入る領民に対して、山林の中で煙草を吸うことを一切禁じています。
もし山火事を起こした場合は、火元となった本人だけでなく、その家族や所属する村全体が罰せられました。
日頃よりすわないことが大事です。
北島三郎さんも歌っております。
「苦労、年輪、樹は育つ」

酒はちょっぴりはいいです。
それくらいの気晴らしはあって当然。
ただし、二日酔いを起こすほど飲んではだめです。
酒は飲むもので、飲まれるものではありません。
河島英五さんが好きでも、飲んで飲んで飲まれて飲んでの「酒と涙と男と女」ではなく、一年一度酔っぱらう「時代おくれ」のようにお願いします。
マムシやヒルにも注意してください。
カミキリ虫の中には、つぶすと火傷のようになるものもおります。
山から帰ったら、風呂で体を清潔にして、食事をしっかりとって、ぐっすりと眠ってください。
食事は塩辛いものはなるべくすくなくしてください。
一番悪いのは、つけものと米だけの食事。
米はおいしくて、満足感があり、飽きがこないという食べ物三冠王です。
それが米の強みですが、米に頼ると、食事が偏ります。
塩辛いおかずに米を大量に食べれば、満足してしまいます。
一日だけならいいですが、これを毎日続けたら、体にいいわけはありません。
津軽の殿様と南部の殿様の平均寿命を調べた人がいます。
これによると、南部の殿様の方が3歳長生きしました。
米どころの津軽は米が豊富だった。寒い夏がある南部は米があまりとれません。雑穀が中心です。
南部の殿様 ひえ飯あわ飯 のどを詰まらす 菜っ葉汁
津軽の人から、そのように揶揄されました。
しかし、栄養学的にいえば、米だけを食べるよりはいいのです。
皆さんも南部藩の人間。
南部藩式食事で、ぜひ健康で長生きしてください。
最後に、下北半島には熊がいますので、それには注意してください。

このような話をして帰ったら、翌年は別の営林署から呼ばれました。
南部藩の領地だったので、南部藩の話をしたことが結果的にはよかったと思いました。
健康講話は、現場の雰囲気に応じて臨機応変に変えるレジリエンスが必要だと強く感じました。
それに歴史の引き出しが、聞く人のアテンションを引き付けます。
公衆衛生は、ヒストリー・アテンションが決め手になります。
「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」とビスマルクも言っております。
ハベレオ通信では、これからも公衆衛生の歴史を提供していきます。
