「河野景子さん流 しなやかに たおやかに 心地良く生きる」の講演は公衆衛生である
九州山口薬学大会が宮崎であり、その中で河野景子さんの講演がありました。
宮崎大宮高校出身で、上智大学を出てフジテレビのアナウンサーをしていた方です。
横綱の貴花田関と結婚して、相撲部屋のおかみをしていたこともあります。
現在は、フリーのアナウンサーとなり、対話力を上げるためのスクールも展開しています。
オレンジの服をまとい、艶やかに登場されました。
お美しさは、往年のままでした。
講演のタイトルは「河野景子流 しなやかに たおやかに 心地良く生きる」
宮崎県薬剤師会の野邉会長が司会をつとめられました。
以下は私のメモで再構成した河野景子さんの講演の概要です。
1時間の講演でした。
さすがアナウンサーです。時間きっかりに終わりました。

皆さんこんにちは。私のふるさとの宮崎にようこそ。
昔はなかなか帰れませんでしたが、今はラジオ番組の収録のために月に1~2回帰っています。
帰るたびに思います。故郷はいいなと。
宮崎は変わりません。飛行場が近いので高い建物が建てられない。そのため空が広い!
海も近く、山も川もあります。川と言えば綾町で鮎を食べるのも最高。
とにかく食事が美味しい。ゴルフやサーフィンもできます。
さて宮崎といえば神話です。神話の街の高千穂町には、今年になって3回も行きました。
このシーガイヤの近くに「みそぎ池」がありますが、皆さんご存じですか?

イザナギが、亡くなったイザナミに逢うために黄泉の国に行きますが、その姿は醜く変わり果てていました。
地上に逃げ帰って硬直していたイザナギが、身を清めた場所が「みそぎ池」です。
池に入って顔を洗うと、左目からアマテラス、右目からツクヨミ、鼻からスサノオという新しい神々が誕生しました。
みそぎをした結果、新しい価値が生まれたのです。
現在のみそぎは、AIかもしれませんね。
今の時代はAIから、つぎつぎに新しい価値が生まれてきています。
私はアナウンサーと相撲部屋のおかみをしてきましたが、これまでの経験からコミュニケーション力が一番大事だと感じました。
そのための学校を作りました。コミュニケーション力をあげるための指導をしています。
AIの時代は、人と人との「対話力」がとりわけ大事になってきます。
直接対面して、話す力と聞く力の両方が大切。特に、発せられた言葉の背景を読み取る力が必要になります。
私の母は、現在宮崎に住んでいて80歳代の半ばです。
「薬局の薬剤師さんがいいとよ~」と言っています。その理由は、薬剤師さんが母の話をよく聞いてくれるからです。
マイナンバーなど新しい仕組みは、年寄りにとっては不安そのもの。
便利さが受け止められないお年寄りも多く、母もこうした変化をなかなか受け入れられません。
母は、定期的に通う薬局の薬剤師さんと会話することによって癒やされ、不安解消になっているとのこと。
薬剤師さんとの間に、深い信頼関係が構築されているからでしょう。
アナウンサーの世界にもAIがじわじわ浸透しています。NHKが一番進んでいます。AIアナウンサーがニュースを朗読します。
AIは間違わない、かまない。アクセントも正しい。時間をまもる。
このようにAIは便利ですが、人にとって変わることはできません。
スタジオで、現場にいる地方のアナウンサーから報告を受ける際の間合い、生の会話、臨場感など、人が伝える価値はかわりません。

今回の薬学大会のテーマは「薬剤師道を問う」と伺いました。
柔道、相撲など日本の武術にはそれぞれ「道」があります。
日々積み重ねる、コツコツ磨きつづける「道」。ゴールはありません。
その「道」は、精神性が高くて、人格を磨いていくことが求められています。
今のスポーツ選手は、総じて言語力が高いと感じています。
しかし、古来から日本の武道は、言語化されたものは美徳とは感じないものでした。
特に相撲の力士は、ほとんど話さない。そもそも試合の直後は、息がきれて話せない。
それでも話をきき出さないといけない。
相撲部屋のおかみの役割は、力士達から本音を引き出すことです。
食事をすると、心がほぐれます。食べる前から笑みが出でます。食事中は誰も硬直していません。
食事中に「体が大きくなったねー」と褒めると、「そうすか、実は鍛えているんです!」とすぐに本音を出す。
そのときに「がんばってねー」と、力士達の背中を押し続ける。
あるとき、背中を丸めて、もう辞めたいと言ってきた力士がいました。
泣きながら、「師匠にはどのように伝えればいいのか」を相談されました。
話を聞いて、「気持ちを入れ替えて、あと半年がんばってはどうか」と言いました。
そして半年の目標を決めました。それは相撲部屋全体のゴミ出しをちゃんとするというものでした。
分別ができているか。ゴミ置き場が綺麗になっているか。
ダメ、いい、汚い、毎朝おはよう、といいながら、これを半年間続けました。
力士は次第に表情が明るくなってきました。
半年経つと、背中は丸まっていませんでした。再び、この力士に「やめるの?」と聞きました。
「やめません。自分がやめたらおかみさんが困るっす」
そう答えた力士は、この後4年ほど続けました。
その間に「名ちゃんこ長」に成長しました。
ゴミ出しという役割を与えられ、毎日、毎日、目をかけられたことで変わりました。
「人間力」が付いて、今はちゃんこ屋で、元気に働いています。

人間力を高めるためには、「対話力」が大事です。
アナウンサーとしてフランス駐在時代の話をします。
ニュース番組で、オードリー・ヘップバーンの取材をしたことがあります。ここで「すごい」と言って欲しかった(笑)。
映画「ローマの休日」の主役で、ジバンシーというブランドのスペシャルゲストとして登場しました。
ヨーロッパ中から取材チームが集ってざわざわしていたのが、ヘップバーンが登場するとシーンとなりました。
スポットライトが当たっているかのようで、まるで映画のアン王女のようでした。
インタビューをしましたが、何を聞いたのか全く覚えていません。
インタビューの後、24枚撮りインスタントカメラで写真を撮りました。
後でその写真を見たら、どの写真を見ても口角がピンと上がっていた。
どこから見られても口角を上げており、エレガントの中にプロ意識を感じました。
期待している人を裏切らないように、慈愛に満ちたお顔をしていました。すごい人でした。
女優のソフィー・マルソーに会ったこともあります。
パリのアパルトマンのマルソーの自宅の部屋で、カメラマンと一緒に取材をしました。
インタビュー中に、すてきな香りがしたので、香水の種類を聞いてみました。
「うれしい。貴方がこのことを覚えておいてくれるために、ミステリアスにさせて」と言って教えてくれませんでした。
この答えぶりに「悩殺」されました。
断り方が上手で、対話力がすごいと思いました。一言「ノー」と言えば済むのに、インタビュアーの私の心まで柔らかくしてくれました。
日本のプロボクサーの内藤大助さんも対話力のある方です。
お母さんがきびしい方で、最後まで母には褒められなかったそうです。
中学の頃はいじめられっこでしたが、人と戦うボクシングの道を歩みました。
何度もやめようと思いましたが、母に褒められたいとがんばって、世界チャンピオンになった人です。
インタビューで内藤大助さんから話を聞きましたが、その口調や間合いなどで母への愛情を伝えてくれました。
内藤さんが発するひとつひとつの語り口をつなぎ合わせてみると、素晴らしい親子関係が見えてきました。本当に心を揺さぶられました。

新しい時代です。DX,ICTは超便利です。
でもそんな時代に求められるのは「対話力」です。
人生100年時代を迎えました。皆さん、どう生きていきますか?
私も還暦を迎えて、人生の後半戦に入りました。
人は歳をとると、衰えて硬くなります。立ち上がると腰が痛いです。
「あいたたたた」、「よいしょ」と動く度に声を出す、そのような現実にびっくりします。
何もしないと、体が硬くなります。
柔らかくすることが大事。
私は言葉の語源を調べるのが好きです。
「やわい」は「やわ」の語源で、「芯がない」こと。
「やわらぐ」は、漢字では「和らぐ」と書きます。たおやかになります。
「柔(やわら)」と言う字は、矛と木からなります。
矛の持ち手の木の部分は、水に漬けて柔らかくするとしなる、折れなくなる。
歳をとると皮膚にうるおいが無くなります。カサカサする。荒れる。皮膚に水を加えると、うるおいがもどる。

やわらかくなる、柔軟性を保つための河野景子流の「5つの訓練」があります。
①口角を上げる。
ペップバーンのようにします。
表情筋は30個あります。口の周りに表情筋の3分の2が集まっているのです。
この表情筋を使って笑顔を保つと、体の中にセロトニンという幸せホルモンが分泌されます。
そして笑顔は、廻りの人に伝染していきます。
「スマイル」はラテン語のミルスが語源です。
派生語には、ミラー(鏡)、ミラクル(奇跡)、マーベラス(素晴らしい)といった素敵な言葉があります。
「笑顔」で、何かをのりきることができるのです。
②舌を回す
舌回しの訓練も大事です。
口の中で舌を右回り、左回りにくるくる回すと、唾液が出てきます。
これで口腔内の環境が整うのです。
滑舌がよくなり、明瞭に言葉を発言することができます。
舌の筋肉が鍛えられると、誤飲を防ぐことができます。
舌の訓練・体操を、マスクの内側でやりましょう。
舌をくるくる回すのです。
③足首を回す
歩くために一番大事な足首を回します。
また、屈伸運動をすることも大事な訓練です。
④肩甲骨を回す
肩甲骨を回すと、呼吸や息にいい影響が出てきます。
⑤思考法を変える
これまで歩んできた道や自分のくせから、拒絶反応や体の「硬直」が生じます。
人は、分からないものには、第一歩が踏み出せません。
思考の柔軟性が大事です。
限られた友人としか会わないとか、心地良い人と時間を過ごすだけではなく、違っちゃうことに足を向ける。そういう柔軟性が大事です。
80歳を超えた私の知り合いは、元気ばりばりです。
サッカーの川淵チェアマンは、87歳ですがお若い。
月60回ゴルフに行っています。毎日1時間半も柔軟体操をしています。
最近になって、三味線の練習を開始しました。
87歳ですよ。声はでかいし、明瞭です。
私の知り合いのエステシャンは、84歳で現役で働いています。
毎日の筋トレと習字を欠かしません。どんだけ若いのやら。
先日転倒しましたが、手は商売道具だからと、手をつかずに体全体で「受け身」をしました。このように、柔軟でしなやかに生きています。
しなる。やわらぐ。たおやかで、かわしながら生きる。
河野景子は しなやかに たおやかに 心地良くいきています。
「対話力」ならまかせてください。
どうも、ご静聴ありがとうございました。

この後、宮崎県薬剤師会の野邉会長や九州山口の各県の会長さんと一緒に弁当を食べました。
河野景子さんとはお隣でしたので、いろいろと話をしました。
FM宮崎で毎週土曜日11時25分~40分の「ケイコのLife is Journey」という番組は、今度、聞いてみます。
実は、河野景子さんが相撲部屋のおかみだったときに、椎葉村にきたことがあります。
椎葉村に相撲の土俵が出来て、土俵びらきをする際にこられました。
「当時の写真が土俵の近くにある博物館に飾ってあります」と言ったら、笑っていました。ご存じのようでした。
各県の薬剤師会の会長さんたちと一緒の写真撮影に応じてくれました。私も撮ってもらいました。
ペップバーンのように口角を上げ、ソフィ・マルソーのように悩殺された時間を過ごしました。
アルパシーノ+アランドロンよりあなたが大好きとは言われておりません。
言ったのは、いや歌ったのは榊原郁恵さんでした。 ← 我ながら古い!
結論から言えば、河野景子さんが講演中に示した5つの訓練は、公衆衛生です!
