処方箋医薬品は厳格な管理が基本だが、公衆衛生の維持、人命救助、災害対策といった正当かつやむを得ない目的がある場合には、一時的・時限的な販売が認められる
災害医療の医薬品対策について、西都市薬剤師会の齋藤正蔵会長の講演を聴きました。
大変役に立つ内容でしたので、ご紹介します。
平時は、患者・家族を中心に,多くの医療関係者が関与します。
需要よりも供給(医療資源)が多く、しっかりとした医療資源が提供されます。
災害時は、医療機関やインフラが被災します。
傷病者の増加で需要が増大する一方で、医療従事者の被災や物流の停滞で供給が著しく減少し、需要と供給のバランスが崩れた状態になります。
超急性期(発災後2~3日)は、多数の負傷者が発生し、ライフラインが停止します。
自衛隊、日赤やDMATの支援チームが活動を開始します。
急性期(発災後1週間程度)は、日赤やDMAT等の支援チームの引き継ぎが行われ、避難所の整備が重要になります。
亜急性期(発災後2~3週間)は、慢性疾患の悪化、感染症の流行、ストレス障害が増加します。
慢性期(発災後3か月以降)は、救護所はほぼ閉鎖され、通常診療が回復してきます。
災害医療の目的は、迅速かつ医療資源を効率よく分配し、最大多数の傷病者を救うことです。

災害時の医薬品の入手方法は、原則として処方箋(保険処方または災害処方箋)が必要になります。
災害時といえど、処方箋は必要です。
保険処方箋は、かかりつけ医を受診すれば出してもらえます。
かかりつけ薬局に相談すれば、薬剤服用歴から患者と常用薬が特定できます。
お薬手帳やマイナンバーカードで常備薬を特定して、調剤します。
医師に確認して処方箋を発行してもらうことは、事後でも可能です。
つまり薬が先に調剤されて、事後に医師が処方箋を出すということが認められているのです。
災害時処方箋は、避難所等の救護所で医療班を受診し、避難所の調剤所やモバイルファーマシーで調剤をしてもらいます。
避難所等の調剤所やモバイルファーマシーにてお薬手帳(マイナンバーカード)による調剤を受けることもできます。
災害時処方箋は、災害救助法提供地域のみの特例です。
災害救助法に基づく医療の一環として、救護所、避難救護センター等の保険医療機関以外の場所で、日本赤十字社の救護班やDMAT、JMAT等の医師による診療により交付される処方箋です。
調剤は救護所、モバイルファーマシー、保険薬局等で行われます。
災害処方箋の費用は、公費負担です。
地域の医療機関をつかうことは復興の一助になり、地域の医療機関が稼働している場合は、そちらを優先利用する必要があります。
東日本大震災の教訓から、医薬品卸業者が、直接避難所等へ医薬品を供給可能となり、流通が大幅に改善されました。

災害時の薬剤師の活動は、現場活動と本部活動の二つがあります。
現場活動は、救護所や避難所、モバイルファーマシー等で、調剤、薬事トリアージ(OTC薬と受診の振り分け)、健康相談、衛生管理(トイレ、炊き出し)などを行います。
本部活動(災害薬事コーディネーター)は、都道府県から任命さて、県庁や保健所で医薬品供給や薬剤師派遣の調整、情報収集、関係機関への指示を行います。
宮崎県は、現在37名が薬剤コーディネーターとして活動しています。
宮崎県薬剤師会の取組です。
モバイルファーマシー(災害対策医薬品供給車両)を令和5年度に導入しました。
普通免許で運転可能な車両で、災害時に円滑な医薬品供給を目指しています。
各種防災訓練で使用訓練を実施しています。
人材育成として、災害支援薬剤師や災害薬事コーディネーターの研修会を実施して、派遣可能な薬剤師をリスト化しています。

個人ができる平時からの備え(自助)も重要です。
お薬手帳の携帯は重要で、災害時の処方内容確認に不可欠です。
電子版と紙の併用を推奨しています。
処方内容が同じでも、毎回最新情報を張り、複数の医療機関受診でも一冊にまとめておくことが大事です。
マイナンバーカードの活用もできます。
健康保険証として登録しておけば、お薬手帳がなくても薬剤情報を確認できる場合があります。
かかりつけ薬局を持つと、薬の情報を一元管理でき、重複投与や危険な組み合わせを防ぐことができます。
災害時にかかりつけ医を受診できなくても、薬局から薬を受け取れる可能性があります。
常備薬の準備として、ローリングストックの方法があります。
1週間~10日分程度の薬を常備し、古いものから使って新しいものを補充します。
インスリン等の管理として、未使用分は冷所、使用開始後は室温で保管します。
保冷バッグを活用し、凍結や直射日光は避けます。針やアルコール綿、血糖測定器も併せて準備します。
ハザードマップを確認することが大事です。
自宅周辺の危険箇所や避難場所を把握しておきます。
避難時の最優先事項として、薬やお薬手帳を忘れても、安全が確認されるまで決して自宅に取りに戻らないこと。
まず自身の安全を確保することが最も重要です。
共助の取組として、自治会や避難訓練への参加や、かかりつけ薬局を持つことなどで、地域での顔の見える関係を築くことも大事です。
公助としては、避難所を利用し、行政からの情報を得て適切な支援を受けることが重要です。

能登半島地震では、お薬手帳や薬袋で処方内容が明らかな慢性疾患薬については、事後の医師確認を条件に薬剤を渡しました。
薬機法第49条第1項の規定には、「薬局開設者・医薬品の販売業者は、医薬品を、医師等の処方箋の交付を受けた者以外の者に対して、正当な理由なく、販売・授与してはならない」とあります。
この条文の例外として、大規模災害等により、医療機関が被災したり、交通が遮断されたりするなど、客観的にやむを得ない理由で医師等の診察を受けることが困難な場合には、患者や現に患者の看護に当たっている者に対し、過去の使用実績や症状等から必要と判断される処方箋医薬品を販売・授与することができるとされています。
この例外規定は、処方箋医薬品の厳格な管理を基本としつつも、公衆衛生の維持、人命救助、災害対策といった正当かつやむを得ない目的がある場合に、一時的・時限的に販売を認めるものです。
お薬手帳は大事ですね!
齋藤先生は、災害時の常備は、スマホと財布とお薬手帳だと、おっしゃっておりました。

齋藤先生は、西都市で薬局を開業されています。
健康サポート薬局として、また学校薬剤師としても活躍されております。
在宅患者の訪問薬剤管理、在宅患者の医療用麻薬の対応、無菌製剤処理、高度管理医療機器の販売などを手がけております。
緊急避妊薬の対応や、スポーツドーピングまでやられているとは、すごいと思いました。
地域にアグレッシブな薬剤師がいると、地域でさまざまな活動ができると感じました。
薬は公衆衛生です。
