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本当は無罪の人でも、裁判ではどんなに条件がそろっていても、さらに「運」が味方しないと無罪は取れない

2026年3月の日経新聞の「私の履歴書」は、厚生労働省の事務次官をされていた村木厚子さんの連載です。

大阪地検特捜部に逮捕され、拘置所で164日を過ごしました。

大阪地裁での裁判では、検察は懲役1年6月を求刑しましたが、裁判の判決では、無罪となりました。

もともとは村木さんの部下だった係長が、ニセの障害者団体から申請があったものを先送りしてしまい、手続きをとらずに証明書を作成してしまったという事件でした。

障害者団体になると郵便料金が割引になるという制度を悪用したものでした。

それを大阪地検が、国会議員も巻き込んだ大がかりな事件にしたてあげたのです。

検察は当初、「障害者自立支援法案を通すため国会議員の機嫌を取っておきたかったので、与党の国会議員に頼まれた村木さんが証明書を作成するように係長に命じた」というストーリーを組み立てました。

なんとなくありえる話です。
検察は、ストーリーに沿って誘導した供述調書を作成しました。

裁判では、そうした捜査段階で村木さんの関与を認めた関係者が次々に供述を翻しました。

判決は、検察側のストーリーを丹念に検討した上でことごとく否定しました。

客観的証拠による裏付けのない供述は、内容に具体性、迫真性があるようにみえても、信用性判断は慎重になされるべきであると指摘しました。

調書に依存した捜査がいかに危険かを浮かび上がらせた判決だったと村木さんは指摘しています。

裁判に勝つ「6つの法則」があるそうです。

①裁判官の力量、②弁護士の力量、③検事の力量、④玉(被告人)がいい、⑤(事件の)筋がいい、⑥運がいい。

本当は無罪でも、どんなに条件がそろっていても、さらに「運」が味方しないと無罪は取れない

村木さんは自分で「運」を見つけました。

捜査報告書に、部下の係長が作成したニセの証明書のフロッピーディスク(FD)の文書ファイルのプロパティがプリントアウトされていました。

その作成日時は2004年6月1日未明でした。

一方、検察のストーリーでは、村木さんが係長に作成を指示したのは6月上旬だとしていました。

作成日時は6月8日から10日の間が想定されていたのです。

村木さんが指示する前に証明書が作成されていたことになります。

この矛盾が無罪判決の一歩となりました。

さらに、ニセの障害者団体から口利き依頼を受けたとされる国会議員が法定で証言をしてくれました。

依頼を受けたとされる日時は、この国会議員はゴルフ場にいたのです。
手帳に細かい記録も残っていました。

かつて日本赤軍が日航機をハイジャックしたダッカ事件のとき、運輸政務次官だったこの議員は、自らの対応を手帳に詳細に書き込みました。

後で、この書き込みが貴重な資料になったことから、それがきっかけとなって議員は、詳しく日々の出来事を記録することが「習慣」化していたのでした。

この国会議員が法廷で証言したことも「運」でした。

無罪判決から11日後に、新聞に大きな記事が出ました。

捜査の主任検事が、押収資料を改ざんした疑いがある、というスクープでした。

FDの本体の最終的な更新日時が「2004年6月8日21時10分56秒」に変えられていたのです。

主任検事は、その日のうちに証拠隠滅容疑で最高検に逮捕されます。

取り調べの強引さはもちろん、まさか改ざんまでしていたとは、思いもよらなかったと村木さんは述べています。

検察は上訴権を放棄し、村木さんの無罪が確定します。
最高検の次席検事は、陳謝しました。

改ざんを知りながら隠蔽したとして、主任検事の上司だった当時の大阪地検特捜部長と副部長は逮捕されます。

検察への国民の信頼を根本から揺るがす、空前の不祥事でした。

主任検事は上司からのプレッシャーで、村木さんを検挙することが最低限の使命と感じていたそうです。

ストーリーを構築し、最低限の使命を設定するのは、捜査機関の手段かもしれません。

ストーリーに沿った供述調書をとり、署名するように誘導します。「認めれば家に帰してやる」。

村木さんは、主任検事から「僕の仕事はあなたの供述を変えさせることです」「執行猶予がつけば、大した罪ではないじゃないですか」とまで言われています。

大した罪じゃないから認めろとは、それを言っちゃーお終いよー。

当然ながら、村木さんは、身に覚えのないことを認めることはありませんでした。

村木さんがFDのプロパティに気がついたのは、漫画とアニメの「名探偵コナン」を繰り返し見ていたからだそうです。

コナンから、それらしく見えることと、客観的な事実を丁寧に分けることを学んだ、とおっしゃっております。

何が裏付けのある事実なのか、冷静に鑑別する

拘置所の中で、コナンのように謎解きをしたことが、運を呼び寄せました。

私も漫画が好きで、漫画のおかげでこれまで乗り切ってきたと感じています。

まさか、村木事務次官がコナン好きだったとは、知りませんでした!

「私の履歴書」の続きも楽しみです。

同じ高知県出身の漫画家の西原理恵子さんも登場するか、期待しております。


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