国会議員の質問取りは息をひそめてじっとしていることが多い。雑魚鬼殺隊は生きて帰るのが至上命令である
霞いちかさんの「霞が関の人になってみた 知られざる国家公務員の世界」を読みました。
帯には、以下の文章がありました。
ナゾだらけの霞が関の働き方がリアルに面白くわかる!
官僚ってどんな人?
国会期間中は何をする?
政策はどう作られる?
楽しく学ぶ霞が関ガイド本
酸いも甘いも体感
これが霞が関の日常だ!
第1章 霞が関の人の仕事 国家公務員は毎日何をしているの?
第2章 霞が関サバイバルガイド 国家公務員が働く世界を知ろう
第3章 国会開催期間の霞が関の人の働き方 国家公務員と政治の関わり方
第4章 謎の霞が関用語とは 国家公務員の業界用語
第5章 霞が関の魅力と課題 国家公務員になりたい人へ
【巻末対談】時間に対する概念を変えることが持続可能な働き方につながる

正直、読む前は、よくある「霞が関残酷物語」「ブラック霞が関」的なものだと思っていましたが、そうした本とは一線を画す明るさがある本でした。
霞が関で働くことの魅力が書かれています。
民間では得がたい体験。ここだからできる仕事として、3つの理由が挙げられています。
1 社会が動くダイナミズムを体感できること
2 一緒に働く霞が関の人たちがとても面白いこと
3 多種多様な人に出会え、幅広い仕事ができること
さらに、霞が関の人に変身する方法まで記されています。
期間限定職員募集での入省、所属する組織からの出向、地方自治体からの出向、官民人事交流制度の利用、が紹介されています。
巻末には、霞いちかさんのプロフィールがありました。
他業種から30代半ばに転職し2016年から6年間、霞が関で国家公務員として勤務(現在、出向中)。
エンタメ、サブカル好きで、中に入って初めてわかった霞が関での面白くて、たまに切ない日常をゆるくつづるブログを2020年にオープン
この本を通じて、楽しく、国の政策に興味を持つきっかけになればと願う。
noteブログ「霞が関の日常」を運営されてます。
出版されたのは2023年2月23日で、私の誕生日の翌日のことでしたが、私は全く気が付きませんでした。
2026年5月に上京して古巣の厚生労働省に行きました。地下一階の本屋さんでこの本があるのを目にしました。
そのときは、世の中にあふれている官僚批判本だと決めつけており、手に取ることさえありませんでした。
恐縮です。
本当に予断はいけませんね。
読んでみて、マイ霞が関本ナンバーワン本だと認識しました!

国会議員への説明、通称「議員レク」を鬼滅の刃に例えているところは、お見事というほかはありません。
霞が関官僚を「鬼殺隊」に例え、国会議員を「鬼」に例えております!
国会答弁を行う局長は「柱」、大臣は十二鬼月の上弦の鬼、副大臣・政務官は下弦の月。
国会議員の質問取りに出向くのは、鬼殺隊の雑魚(課長補佐か係長)
鬼殺隊は、あらゆる武器(何を聞かれるかわからないときは大量の資料)をトートバックに入れて、電車に乗って議員会館に向かいます。
議員会館の議員の部屋の前に行くと、各部署から問取りに来た来た鬼殺隊雑魚兵士がわらわらと集まっています。
鬼(ここでは国会議員)が現れると、鬼殺隊の中で緊張が走ります。
1回の国会質疑で、国会議員は出来るだけ多く質問したいと思うので、質問の持ち時間以内にこんなに聞けないでしょ?というくらいたくさんの攻撃(質問)を用意しています。
そのため、それぞれの質問担当の鬼殺隊であふれかえります。
全員集まったところで、すし詰めになって議員の部屋に入り、鬼と鬼の秘書と各部署から来た鬼殺隊の闘いが始まります。
問取りは非常に張り詰めた現場で、一問一問それぞれの質問に対して担当の鬼殺隊が説明します。
明日の国会で聞かれることなので、議員の質問とその背景を正確に聞き取ることが必要で、さらにできるならその場で答えきって、明日の国会の質問から外してほしいという思いもあり、真剣になります。
「これはどうなの?」と鬼に聞かれたときに、できるだけ素早く、要領よく、簡潔に回答することが重要です。
さらに、適切な武器(資料)を鬼殺隊の研修生が後ろからサッと出せると最高です。これを「手裏剣」を出すと言っています。
ここで、曖昧な言い方をしたり、聞かれていることと違うことを答えてしまうと、「そんなこと聞いていない!」と斬られます。
うまく返答ができないと、だんだんと鬼が不機嫌になり、「お前では話にならん! もっとちゃんと話せる人(ベテラン鬼殺隊)を連れてこい!」となることもあります。
脇で自分以外の鬼殺隊の闘いを見ていてもハラハラします。
援護射撃をしたいのはやまやまですが、自分たちも一緒に斬られたくないので、息をひそめてじっとしていることが多いです。
雑魚キャラは生きて帰ることが至上命令です。
鬼が明日、国会の場で攻撃(質問)すると言われれば、誰が戦うかを鬼と相談します。
答弁するのは、柱(局長)か上弦の鬼(大臣)か。
大臣はとても忙しい。
「議員のご質問は、数字的な事務的な話が主なので詳しい説明ができる政府参考人(局長)でお願いします」と、その場で鬼に頼みこんで了解を得ることは雑魚鬼殺隊の重要なスキルです。

次は答弁作成です。答弁は、翌日の闘いの場までに用意しないといけません。
答弁作成のプロセスは次のとおりです。
雑魚鬼殺隊が答弁案を作成 → 中堅鬼殺隊のチェック・修正 → 財務省の鬼殺隊のチェック → 上弦の鬼の秘書(大臣秘書官)のチェック → 決戦の場(国会連絡室)の朝に上弦の鬼(大臣)チェック
こうしていくつもの厳しい戦いと修行を経験し、鬼殺隊で生き残った者の数人がいつか柱(局長)になるのです。
うーむ。
ここまでリアルに「問取り」のことを書いたのは、霞さんがはじめてではないかと思います。
霞さんは、官僚を知るきっかけに、そして、霞が関で働くことを考える際の参考に、と書いています。
なかなか知ることのできないリアルな霞が関の日常を知っていただき、より国の政策や政治に関心を持っていただければ幸いです、とありました。
中央官庁での勤務を考えているすべての人におすすめです。
