宮崎県とニューヨーク市は、レジオネラつながりで、姉妹都市になれる
ラジオの武田鉄矢さんの「今朝の三枚おろし」という番組で、100年以上前のニューヨークの牛乳の話がありました。
当時は、ニューヨークのマンハッタン島では牛が飼われて、乳を搾った牛乳が提供されていました。
大都会ニューヨークで牛が飼われていたという話に、まず驚きました。
また、都会の牛に食べさせる餌は、残飯だったということにもショックを受けました。
そのため牛乳に色が付き、それをごまかすために石灰や小麦を混ぜたものを販売していたそうです。
今では考えられない話で、ワンヘルスの大事さを教えてくれるエピソードです。

牛乳は子どもの命を救う武器でした。
しかし、牛乳は細菌にとって理想的な培養基で、多くのニューヨーク市民は、細菌にひどく汚染される牛乳を飲まされていました。
夏の温度が高いときに子どもに与えられた牛乳が、子どもの疾病罹患と死亡数に影響していることが判明します。
1902年に、ニューヨーク市衛生局は、市内に牛乳を供給する牧場を毎日訪問する監視員を任命します。
監視員の仕事は、牛乳生産の状況を調査し、牧夫に牛乳の衛生的生産という考えを教育すべく、努力することでした。
監視と教育だけでは限界がありました。

1909年8月に、ニューヨークで腸チフス患者が突然に増加し、ある牛乳配達所が数百人の患者の共通因子であることが証明され、最後に感染源は腸チフス保菌者だった販売店の男であることが判りました。
1910年にニューヨーク市は、飲用に供せられるすべての牛乳は正しく低温殺菌されねばらぬとする条例を採用しました。
夏に乳児死亡数が上昇するのが普通だったニューヨーク市では、こうしたことがほとんど見られなくなりました。
ニューヨーク市は、1908年に衛生局の中に小児衛生課を設置しました。
世界初の取組で、米国や外国の都市にとって、一つのひな形になりました。
初代課長となった女医のベーカーは、予防によって乳児死亡は大きく減少できることを証明します。
ニューヨークの低地域にある東海岸の密集地帯で、そこに出生したすべての新生児の名前と住所が出生届から登録されました。
その日のうちに公衆衛生看護師が母親を訪問し、新生児の保育方法を教えました。
その結果、二か月後に、前年の同時期のある期間内のこの地域での乳児死亡よりも1200人少なくなっていました。
生涯の出発点である乳児期を健康に育てるという目的が、この新しい課の仕事の基礎でした。
ニューヨークは野心的な都市で、公衆衛生行政もチャレンジングな取組を行う伝統があります。

2015年7月から8月にかけて、ニューヨーク市のサウスブロンクス地区で、冷却塔を原因とするレジオネラ症集団感染が発生しました。
138人が感染し、16人が死亡したと報告されています。
この事故を受けて、2016年にニューヨーク市は条例を制定しています。
内容は次のとおりです。
①冷却塔が設置された建物の所有者は、住所、所有者の名前、冷却塔のメーカー、型式、シリアル番号、冷却能力、冷却塔の容量、試運転を実施した日、の九項目をニューヨーク市の冷却塔登録システムに登録するとともに、登録番号を貼付すること。
②登録後、建物所有者は、専門家が作成した維持管理計画プログラムに従い、維持管理を行うこと。
③一般的な細菌検査、レジオネラ菌検査、水質検査の三種類の検査を実施すること。
レジオネラ検査は、シーズンの稼働開始から一四日以内に、九〇日を超えない間隔で検査を実施することが求められており、CDCの技術評価を受けている検査機関で行う必要があります。
検査結果は、
レベルI 10 CFU未満
レベルII 10~100 CFU未満
レベルⅢ 100~1000 CFU未満
レベルⅣ 1000 CFU以上
の四つのレベルに応じて是正措置が決められています。
特に1000CFU以上のレベルⅣであった場合は、対策後に実施したレジオネラ検査の結果を、二四時間以内にニューヨーク市保健衛生部に届けなければならないことになっています。
維持管理計画を策定していない場合やレジオネラ検査の未実施は、1000ドルの罰金が科せられます。
冷却塔の管理状況については、市のホームページで建物所在地を入力することで検索でき、維持管理結果についてもホームページ上で閲覧できます。過去の規則違反状況も掲載されます。

おそるべきニューヨーク市。
今後、ニューヨークでは、冷却塔からのレジオネラは発生しないのではないかと思います。
水を制するものは公衆衛生を制する。
日本一厳しい宮崎県と米国一厳しいニューヨーク市は、レジオネラつながりで、姉妹都市になれるかもしれません。
