母子保健は、縄文時代から続いている
「健やか親子21」という母子保健の取組があります。
厚生省の母子保健課にいたときに担当し、「健やか親子21」を推進するポスターを作成することになりました。
厚生省と労働省が一緒になり、厚生労働省ができて、雇用均等・児童家庭局が新設されたときでした。
旧労働省出身の女性のキャリア官僚が、初代の局長となりました。
ポスターのネタを何にするか、考えました。
私が青森県に出向していたときには、青森県の縄文時代の三内丸山遺跡などが出土して大いに盛り上がっていました。
青森は縄文時代の遺跡が多く、有名なのは車力村から出土した遮光器土偶でしょう。
宇宙服のようなものを着ているので、よく学研の雑誌ムーでは、「宇宙人」だとされていました。
子どもの頃から空飛ぶ円盤と宇宙人が大好きな私でしたが、遮光器土偶は宇宙人と言うよりは、女性の身体をデフォルメしたものではないかと思っておりました。
たとえ雑誌ムーや、テレビで宇宙人を徹底的に取材していた矢追純一さんから裏切り者と言われても、宇宙よりも母体だと言う覚悟がありました。
驚いたのは、六ヶ所村から出土した、子どもの手形・足形の土器です。
6か月の子どもの手と足を押しつけてつくったブローチのような土器でした。
子どもが生まれたときに、産科医院から手形・足形の色紙をもらったのを思い出しました。
縄文時代も今も全く変わっていない。
さらに、同じ子が二歳に成長したときの手形の土器も出土していました。
穴が空いており、ひもを通して首飾りにしていたようです。
子どもの健康を思う母の思いが伝わってきました。
母子保健は縄文時代から続いている……。
これだ!
健やか親子21のポスターのタイトルは、
縄文時代から続く母子保健
21世紀に向けて健やか親子21が始まります
にしました。
青森県八戸市の遺跡から出土した遮光器土偶と、六ヶ所村の手形・足形土器の写真を青森県から送ってもらいました。

実際にデザインしてくれたのは、千葉県の自治体から人事交流で母子保健課に勤務していた保健師さんです。
課長は、面白いと喜んで、すぐにOKをくれました。
局長にも説明して了解をもらっておいてと言われました。
そこで、局長室に向かいました。
切れ者だという噂で、
自分が納得しないものは絶対にうんと言わない、という話も聞いていました。
局長は、ニコリともせず、黙って説明を聞いていました。最後に口を開きました。
私の意見を言っていい?
局長室にいた全員に、衝撃が走りました。
やり直せ。
土偶の専門家の意見を聞け。
話にならない。
局長は、この後になんと言われるのか……。
アマテラスの神託を待つ心境でした。
私からの注文はただ一つ。
写真は実物大にして。ポスターには「実物大」と書くように。
面白いじゃない!
笑顔のアマテラス局長の神託を受け、実物大ポスターは誕生しました。
赤ちゃんの手形・足形の土器は、世界的にも貴重で、他の国からは出土していません。
東京のお茶の水にある明治大学の地下にある博物館には、レプリカが展示されています。
神田の古本屋街の近くにあり、本を買いに行く途中に偶然に、手形足形の土器のポスターを目にして、大変驚きました。
これまでは写真でしか見たことがありませんでしたが、レプリカとはいえ大変迫力があり、縄文人の母子保健パワーを感じました。
縄文時代の土偶には、母子保健関係のものがたくさん出土しています。
長野県から出土した妊婦をイメージした「縄文ビーナス」は国宝に指定されています。

土偶にはミステリーがあります。
西都原古墳群の博物館に行ったときに、「南九州には土偶が出土していない」とあったのです。
南九州人は、土偶を知らなかったのでしょうか?
縄文時代の人々には、土偶を作るエリアと作らないエリアがあったというのは、いろいろと想像をしてしまいます。
例えば、宇宙人に遭遇した地域は土偶をつくり、そうでない地域は作らないとか。
ムーの見過ぎかも。
ちなみに、宮崎県庁は、埴輪に囲まれた全国でも珍しい施設です。
宮崎県に来た際には、県庁に展示されている埴輪を観察するのも楽しいです。

東京の日比谷公園には、宮崎県から出土した埴輪があります。
探してみるといいかも。



