最初に得た「直感」を思い出せ。直感は思考過程を経ないで出た、ものごとの本質であることが多い
京都大の中西輝政教授の「本質を見抜く考え方」(サンマーク文庫)を読みました。
著名な国際政治学者ですが、今後の公衆衛生について調べるのに大変参考になりました。
公衆衛生については一言も触れていませんが、公衆衛生の本質を見抜くために資する本だと感じました。
自分とは何か、をはっきりさせることから始めよと言っておられます。

自分を映す鏡が歪んでいたら、他のものが映ったときの歪みに気が付つかない。
自分とは日本人であり、日本人を意識すること。
日本は一国だけで一文明として独立している。
歴史を大事にすること。
国の神話を知ること。
迷ったら、おもしろいと感じるほうを選べ。
誰も疑わない美しい言葉に気を付けよ。
数字や論理の正しさに惑わされるな。
ふと浮かんだ疑問を封じ込めず、公開情報で「自分の絵」をつくって精度を高めていくようにしろ。
必ず言葉にしてみること。
自分なりの仮設をたて、とにかく一度結論を出す。
むずかしい話をやさしく言い直すことそのことで考え方は進む。
最初に得た「直感」を思い出すこと。
直感は思考過程を経ないで出た、ものごとの本質であることが多い。
面白いことに、「効率」についての考え方がやたらとあります。
正しいことと、効率の良さを混同するな。
効率と精神のバランスをとれ。
効率を量でなく質で捉えよ。
現在は、コスパとダイパと呼ばれるように効率が何よりも重視される世の中になっています。
効率に真っ向から対抗しているのが、歴史だと思います。
中西教授は「歴史を重視しろ」と言っています。
森鴎外は、衛生を経済学に例えました。
前田裕之氏の「経済学部の壁」(白水社)を読みました。
東大経済学部出身の日経新聞の記者がやめて、大学の経済学者と官庁やシンクタンクのエコノミストが峻別されている日本の状況を踏まえ、経済学に挑んだ野心的な一冊です。
京大経済学部の経済史の根井教授が出版を勧めてくれたとありました。
根井教授は宮崎出身で、新聞で書評をされています。
人生いろいろ、経済学もいろいろ。
経済学のユーザーは、目の前にある経済問題の解決に役立ちそうな経済理論や学説を、時と場合に応じて「いいとこ取り」をすればよいではないか、と言っています。
公衆衛生のテキストをつくる際にも大いに参考になると思いました。
経済人をホモ・エコノミクスというように、公衆衛生人をホモ・パブリックヘルスとして記載しようかしら。
有名なマルサスの人口論は、貧民を救済する救貧法は無益だから廃止すべしと主張するために書かれたものです。
救貧法は食料を増やさずに人口を増やすだけだから、貧困問題を解決できない、とマルサスは言っています。
ピグーは、市場価格が費用と効用を反映できなくなることがあると主張しました。
工場から出る有害物質が大気や河川の水質を汚染しても、大気や水には市場価格がついていないため、工場を運営している生産者はそのコストを負担しなくてもよいことになります。
生産者はコストを気にせずに有害物質を発生させ、汚染が広がってしまいます。
経済活動にかかわる要素の一部には市場価格が存在せず、経済主体の判断材料から、はずれてしまうのです。
これを経済学では外部性と呼び、公害などの被害が生じるときは「外部不経済」があると表現するとのこと。
反対に良い効果をもたらす経済活動には「外部経済」があるといいます。
市場の成果は、市場に参加する買い手と売り手にとっての問題だと考えてきましたが、買い手と売り手の意思決定は、市場に参加していない人にも影響を及ぼす可能性があります。
環境汚染は、市場の外部にいる人々に市場の成果が及ぶ典型例です。
こうした現象を「市場の失敗」と呼び、ピグーは環境汚染の原因となっている生産要素に課税するピグー税や、環境汚染の削減に取り組む場合には資金を提供するピグー補助金を提唱しました。
外部性に近い存在が「公共財」です。
公共財は、非競合的で、非排除的な財・サービスを指します。
法制度、警察・消防がこれにあたります。
どちらか一方を満たす場合は、準公共財であり、道路や公園が典型的です。
道路は、走行する自動車が増えて混雑するとサービスが滞ります。
その一方、料金の徴収も不可能ではありません。
公衆衛生は公共財、医療は準公共財に当たるでしょう。
経済学は面白いです。
いや、面白い経済学の本は面白い、と言った方が正確ですね。
