「品質」「価格」「広告」「コスパ」だけで勝負しようとしたら、大多数の商売は立ち行かなくなる
川上徹也さんの「ストーリーブランディング100の方法」(日本能率協会マネジメントセンター)を読みました。
表紙には、「物を売るな、物語を売れ!」とありました。
公衆衛生的に教訓の多い本なので、ハベレオ通信で紹介させていただきます。
一般的に、お客さんが「その商品がいいかどうか」を判断する重要な要素は、「品質」と「価格」のバランスです。
いわゆる「コスパ」と呼ばれているもの。また、商品の魅力をどう伝えるかの「広告」の要素も重要になってきます。
これらの要素は重要ですが、「品質」「価格」「広告」だけで勝負しようとしたら、大多数の会社やお店の商売は、やがて立ち行かなくなります。
圧倒的な力のある業界トップの大企業に対しては勝ち目がありません。
物そのものを売ろうとしている限り、どうしても「品質」「価格」「広告」のライバルの土俵に上がってしまうことになります。そうすると、相対的に「お客さんからいい商品だと思ってもらえる」可能性が低くなります。
川上さんは、物ではなく、物語(ストーリー)を売れと言っています。
人間は「物語」なしには生きていけない動物です。文字が生まれるはるか前から、「物語」は人間を魅了し続けていました。
人の心を一番揺さぶるのは「物語」!
会社や商品が、生活者の心を揺さぶる「物語」を発信することができれば、「品質」「価格」「広告」の土俵で戦わなくても「いい商品だ」と思ってもらえる可能性が高まります。

川上さんは、石川県のあるパン屋さんの例を紹介しています。
オーナーの井藤修さんは、もともと横浜の有名店で修業したのち、石川県でパン屋をオープンさせました。
都会風のおしゃれなパンを提供したら田舎では売れるだろうという目論見はものの見事にはずれ、当初はまったく売れず大量に売れ残る日々が続きました。
そんな中、「お客さまがどんなパンを食べたいか」を追求し商品づくりに舵を切るようになります。
ある日、お客さんから「卵と乳製品をつかっていないパンをつくってもらえないか?」というリクエストがありました。
小学生の娘さんがアレルギーで困っているとのこと。
そこで、おそるおそる卵と乳製品をつかわないコッペパンをつくって食べてもらうと、女の子は「おいしい」と満面の笑み
この出来事がきっかけに、アレルギーの子どもでも食べることのできるパンをつくるというコンセプトが生まれました。。
卵や乳製品をつかわずにおいしいパンを作るには試行錯誤の連続でした。
やがて見た目は普通でも食べるとびっくりするほどふわふわでおいしいアレルギー対応のパンがつくれるようになりました。
その後、卵・乳製品・ナッツ類を一切持ち込まないパン工場をつくることになり、アレルギー対応パン専門店をオープンしました。
今では全国から注文が入るようになり、売り上げは以前の何倍にもなりました。
また、毎日のようにお礼の手紙やメールが届くそうです。

このパン工場直販店「アレルギー対応パンのtonton」は、工場併設の店舗であるにもかかわらず、普通のセルフのパン屋のように「焼きたてパン」を店頭に並べていません
袋に入れられて販売されています。
他県からも人が押し寄せ、中には大量にパンを買っていく人もいます。
店舗での売り上げよりも、ネット販売や保育園などからの直接購入の割合が高いそうです。それらのパンは冷凍で販売されています。
買っているのは、「卵」「牛乳」「ナッツ」類のアレルギーを持つ子どもがいる家族や施設です。
このように、普通のパン屋さんから、卵・牛乳・ナッツ・アレルギーの子どもを持つお客さんに絞ったことで、「独自化」に成功しただけでなく、「志」も生まれ、さまざまなエピソードも生まれるパン屋さんになったのです。
お客さんを絞るという戦略をとったオーナーは、すごく勇気があったと思います。
私が相談されたら、やめた方がいいとアドバイスしたと思います。
アレルギーの専門医の先生方であれば、後押しをされたでしょうね。
こうした商売が成功しているのは、インターネットと冷凍技術と宅急便システムがうまくマッチしているからだと思います。
川上さんは、言っています。
期待値を1%だけ上回れば魅力的な「物語」が生まれる。
いつの日にか私も椎葉村から、こうした物語るコンテンツを生み出していこうと思います。
