知らないと損をする、イランを知る四冊③(Iran's Grand Strategy A political History)
【混迷するイラン・中東情勢】
イランに対する米国・イスラエル軍の攻撃により、中東各地の情勢は不安定化しつつある。トランプ大統領は作戦が数週間に及ぶ可能性に言及し、紛争の長期化も現実味を帯びている。また、イスラエル・レバノン国境ではシーア派武装組織ヒズボラとイスラエル軍との戦闘が再燃しており、地域全体が緊張状態にある。このような局面において、イランがいかなる国家戦略を追求してきたのかを考察することは極めて重要である。本書は、前回紹介した『Politics of Oil and Nuclear Technology in Iran』が描いた「周辺者」としてのイラン像((知らないと損をする、イランを知る四冊(Politics of Oil and Nuclear Technology in Iran)|すだっち))とは異なり、イランがより主体的に国家戦略を形成し、時間の経過とともにそれを変容させてきた過程を明らかにしている。
【本書概要】
本書(Amazon | Iran's Grand Strategy: A Political History | Nasr, Vali | History & Theory)は、イランの行動原理をイスラム革命のイデオロギーのみに還元する従来研究を批判する。むしろ、ガザ戦争に象徴されるような反米抵抗運動や、20世紀後半に台頭した反植民地主義思想との連続性の中で、イランは国益最大化を志向して中東秩序の再編を試みてきたと論じる。その根底には強い「力への意志」が存在する。ホメイニ師およびハメネイ師という二人の最高指導者の下で、その戦略は「米国を水際で阻止する」という形で具体化された。したがって、今日の対米抵抗政策は革命の単純な輸出ではなく、地政学的・戦略的計算に基づく国家行動として理解すべきである。各章の詳細については次号で検討したい。
