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トンデモタイミー その2


新種のタイミーが現れた。今回のはなかなか強敵だ。いつもヘラヘラしてる店長が初めて本気でブチ切れていた。



その新種は、50代半ばくらいの女性タイミーだったのだが、私は出会って5秒で違和感を覚えた。最初の「おはようございます。今日はよろしくお願いします」というやり取りだけで、「なんかちょっと距離感おかしくね…?」と思ったのだ。



妙に馴れ馴れしいというか、親しみを込めてくるというか。無理矢理ポジティブに捉えるならフレンドリーということになるのかもしれないが、それがちょっと不快な感じなのだ。たったひとこと挨拶を交わしただけで相手をなんとなく不快にさせるって、すごい技である。今までどういう仕事をしてきた人なのだろう?



店長の話だと、飲食店経験は長いそうである。英語も話せるとのことで、「いい人だったらスカウトしたいなー」と言っていた。私も新しい人と知り合えることを楽しみにしていたのだが、なんかちょっとお近づきになりたくない感じだ。私の本能が危険信号を出している。



もちろんそんな心の内はおくびにも出さず、私は笑顔で業務の内容を説明した。タイミーさんにやってもらうのは主にバッシング(テーブルの片付け)と、洗い場での食器の仕分けだ。飲食店経験者の場合は大した説明もいらず、難しいことは何もない。様子を見て、できそうだったら料理運びを頼むこともあるため、一応テーブル番号も教えておいた。



最初に気になったのは、彼女の返事が「うん、うん、ああはいはい」だったことである。彼女はたしかに私より歳上だが、社会人の態度としてそれはどうなんですか。あと、「了解〜」も気になる。バックヤードではいいかもしれないが、ホール内では従業員同士であっても「かしこまりました」と言い合うのがうちの店のルールだ。だがそう伝えても一向に改善する様子がない。



彼女は英語が話せるとのことだったが、それも怪しい。



私の空耳でなければ、食器を持ってお客様の近くを通るときに、「えくすきゅーずみー、アイ キャン ディッシュ」と言っていた。「!?」と思った私は、家に帰ってから思わず「I can dish」をAIで調べてしまった。何か私の知らない慣用句でもあるのかと思って。当然AIにはそんな言い回しはない、と言われたが。笑



中間バッシング(食べ終えたお皿を下げる)も、変な下げ方をしてくる。定食セットの食器のひとつだけとか、お客様のテーブルの上にほかのテーブルで下げてきた食器を置いてから重ねるとか。それを指摘すると、返事は「ああはい、わかってます」だ。
(わかってるならやるんじゃねぇ💢)



あんまり(ていうか全然)気の長いほうじゃない私は、もう彼女を見ないようにした。イライラするからだ。なるべく視界に入れないようにしながら自分の業務を淡々とこなした。



洗い場に行くと、フィリピン人のおばちゃんが彼女にめちゃくちゃ怒っていた。「ちょっとアナタ!食器投げないでヨ!」と(食器を投げるとかあり得ないんだが)。しかし彼女は「ああ、はーい」と言うだけでまた投げて置いたようで、おばちゃんを「ちょっと!!どういうつもり!?💢」と怒り心頭にさせていた。



当然店長の耳にも入り、店長は彼女を裏に呼び出して注意したようだ。通常、タイミーさんに注意をするということはない。タイミーさんというのは店にとっては助っ人だし、「来てくれてありがとう」という気持ちが大きいからだ。どこも人手不足なので、ワーカーさん側からの評価が大事という理由もある。



しかし、店長に注意されてもなお、彼女は変わらなかった。フィリピン人のおばちゃんたちをこれ以上怒らせると大変面倒なことになるため、もう食器の下げはやらせず、お冷出しだけをやってもらうことにした。「いらっしゃいませ。ご来店ありがとうございます」と言ってテーブルに水をおくだけだ。バカでもできる。



だが、これも彼女は普通にできない。
なぜか勝手にドリンクブースに入ってアルコールグラス用のコースターを取ると、お冷と一緒に持って行く。高級店じゃないんだからお冷にわざわざコースターを使うなと店長が注意すると、「結露がテーブルにつくじゃないですか」と反論する。店長が「ここの店のやり方に合わせてくれないと困るんだよ!」と怒ると、「こっちのほうがいいと思っただけです。そんなに怒らないでください」と言い返す始末。



私がレジに入っている時にお客様が来店すると、勝手にご案内を始め、その後の予約の関係などで入れてほしくない席に勝手に入れる。またまた店長が「勝手に案内しないで!」と怒ると、「レジの方(私)がお客様に気づいてないみたいだったから」とのたまう。
(いやいや!「ご案内しますのでお待ちください」って声かけてるから💢)



勝手にオーダーも取ってきてしまうので、「オーダー言われたら、少々お待ちくださいって言って(我々を)呼んで!」と何度言われても勝手にメモして取ってくる。メニューによってこちらから訊かないといけない項目もあるため、私たちがもう一度伺いに行こうとすると、「もうオーダー取りましたから!」と大きな声で言う。いいからお前は黙っとれ!



ほとほと疲れ果てた私たち従業員が、「もうあいつはブロックして」と店長に言うと、店長は「もちろんそうする💢評価も最低にしとくから!」と、めずらしくブチ切れながら請け合った。








数日後、ランチ時の一番忙しい時間帯に、1本の電話がかかってきた。「こんな時間にかけてくるやつ誰だよ!」と切れながら店長が電話に出ると、相手はあの新種のタイミーだった。





「そちらのお店が気に入ったので働きたい」と言われたそうだ。笑
(もちろんお断りである。)







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