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Healthcare Fraud and Abuse Laws②~各論(Anti-Kickback Statute, Physician Self-Referral Law, Exclusion Authorities, Civil Monetary Penalties Law)~


※本投稿は「Healthcare Fraud and Abuse Laws①~総論、各論(False Claims Act)~」の続きです。

3. Anti-Kickback Statute(AKS)[1]

概要

Anti-Kickback Statute(AKS、反キックバック法)は1972年に社会保障法改正(Social Security Amendments of 1972)の一部として制定されました。その後、数度の改正により規制対象が拡張されるなどして現在の形となっています。

AKSは、連邦のヘルスケアプログラムに関与する者が、過去または将来の紹介に対する報酬を提供したり受け取ったりすることを禁止する刑事法です。

HHS(保健福祉省)のOffice of Inspector General(OIG、監察総監室)によれば、その趣旨は、キックバックにより生じうる過剰(不必要)なサービスの提供、プログラムに関する費用の増加、医療上の意思決定に関する腐敗、患者に対する不適切な誘導、不公正な競争といった問題を防ぐことにあります[2]。

なお、日本でも「保険医療機関及び保険医療養担当規則」(いわゆる「療担規則」)において、保険医療機関が患者紹介の対価として経済上の利益を提供することにより、患者が自己の保険医療機関において診察を受けるよう誘引することは禁止されていますので(療担規則第2条の4の2第2項)、日本でヘルスケアビジネスに従事している方からしても、キックバックを禁止するというAKSの考え方に違和感はないと思われます。

規制対象となる行為

AKSでは、

  • 連邦のヘルスケアプログラムで償還可能な商品またはサービスを提供する、または提供するよう手配するために、患者を紹介する見返りとして、または、

  • 連邦のヘルスケアプログラムで償還可能な商品、施設、またはサービスの購入、リース、注文、またはそれらの手配や推奨をする見返りとして、

故意かつ意図的に報酬(remuneration)要求し、または受け取る者重罪(felony)となります。

また、上記の報酬(remuneration)を申し出る、または支払う者も同様に重罪(felony)になります。

これらの禁止は広汎な行為態様を対象とするものであり、直接的または間接的であるか、また公然的または秘密的であるかを問わずすべての活動が規制対象に含まれます。

AKSでいう報酬(remuneration)には、現金、現物、その他の形式を問わず、価値のあるものがすべて含まれます。例えば、報酬は、その額に関係なく、現金、現金同等物、費用負担の免除または補助金の形をとる場合があります。独立した企業間の取引において公正な市場価値(fair market value)であると判断される場合であっても、ここでいう報酬に該当する可能性もあります。このように、AKSは、連邦のヘルスケアプログラムによって償還可能な商品またはサービスの紹介を誘導することを目的の1つとする報酬に関するあらゆる取決めをカバーすると解釈されています。

罰則

AKS違反は重罪とされており、最大で10万ドルの罰金、10年以下の懲役またはその両方が科せられます。

また、下記5で後述しますが、有罪判決が確定した場合、MedicareやMedicaidを含む連邦のヘルスケアプログラムから強制的に除外される可能性があります。

さらに、前回の投稿でも一部触れましたが、AKSに違反した請求は虚偽または不正な請求であるとされ、False Claims Act(FCA、不正請求防止法)上の責任や後述のCivil Monetary Penalties(CMPs、民事上の罰金)の責任も生じさせます。

セーフハーバー

AKSに対しては、法令上の適用除外(セーフハーバー)も定められています。AKSの適用対象外となる行為は10以上の類型が示されていますが、例えば「対象となる商品またはサービスの提供における雇用のために、雇用主が従業員(当該雇用主と善意の雇用関係を有する者)に支払う金額」[3]にはAKSは適用されないと定められています。

4. Physician Self-Referral Law(通称Stark law)[4]

概要

Physician Self-Referral Law(医師の自己利益のための患者紹介に関する法)は、1989年に包括的予算調整法(Omnibus Budget Reconciliation Act of 1989)の一部として制定されました。当初はMedicareで償還される臨床検査サービスへの患者紹介のみを規制対象としていましたが、1993年の包括的予算調整法により対象となるサービスが拡大され、またMedicaidも対象となりました。

本法の発案者Pete Stark(カリフォルニア州選出の元民主党下院議員)にちなんで、Stark lawと呼ばれています。

規制内容[5]

Stark lawは、例外の要件を満たさない限り、

  • 医師が、自身(または近親者)が金銭的関係を有する団体からMedicareまたはMedicaidの償還を受ける特定の指定医療サービス(designated health services)を受けるよう患者を紹介すること、および

  • その団体が、不適切に紹介された指定医療サービスについてMedicareまたはMedicaidに請求すること(または他の個人、団体、第三者支払者に請求すること)

を禁止しています。

ここでいう金銭的関係とは、当該団体の所有権または投資に関する利益、当該団体との報酬の取決めを意味します。

規制対象となる指定医療サービス(designated health services)は以下のとおりです。

  • 臨床検査サービス

  • 理学療法サービス

  • 作業療法サービス

  • 外来言語聴覚療法サービス

  • 放射線およびその他の画像診断サービス

  • 放射線療法サービスおよび消耗品

  • 耐久性のある医療機器および消耗品

  • 非経口および経腸栄養剤、器具および消耗品

  • 義肢、装具、補綴器具および用品

  • 在宅医療サービス

  • 外来処方薬

  • 入院および外来の病院サービス

責任

Stark lawは厳格責任(strict-liability)であり、法律違反の意図の証明は必要とされません。

Stark lawに違反する請求をした者は、指定医療サービスの償還拒否不正に提出された請求に基づき支払われた金額の払戻し、および不正に提出された請求1件につき最大1万5000ドルのCMPの対象となります。

また、脱法であることを知りながら、あるいは知るべきでありながら、そのような取決めを行った医師または団体は、取決め1件につき最大10万ドルのCMPの対象となる可能性があります。

5. Exclusion Authorities[6]

OIGによる除外権限

OIG は、すべての連邦のヘルスケアプログラムへの参加から個人および団体を除外する法的権限を有しています。除外には義務的なものと裁量によるものの2種類があります。

OIGは、以下の有罪判決を受けた個人および団体をすべての連邦のヘルスケアプログラムへの参加から除外することが義務付けられています

  • Medicareまたは州のヘルスケアプログラムに基づく商品またはサービスの提供に関連した犯罪の有罪判決

  • 患者への虐待またはネグレクトに関する有罪判決

  • その他のヘルスケア関連の詐欺、窃盗、横領、受託者責任の違反、またはその他の財務上の不正行為に対する重罪の有罪判決

  • 規制薬物の不法な製造、流通、処方、または調剤に関する重罪の有罪判決

また、OIGは、以下の事由を含む17の事由のいずれかに該当する場合、裁量により個人や団体を除外することができます。

  • Medicareや州のヘルスケアプログラムに関与しないヘルスケアの不正行為に関連した軽罪(misdemeanor)の有罪判決

  • 連邦政府、州政府、または地方政府が資金提供するプログラム(ヘルスケアプログラム以外)における不正行為

  • 規制薬物の不法な製造、流通、処方、または調剤に関する軽罪の有罪判決

  • 専門的能力(professional competence, professional performance)または財務の健全性を理由とするヘルスケアを提供するためのライセンスの一時停止、取消し、または返納

  • 不必要または標準以下のサービスの提供

  • 連邦のヘルスケアプログラムに対する虚偽または不正な請求の提出

  • AKSに違反する取決めへの関与

  • 医療教育ローンまたは奨学金の債務不履行

  • 制裁対象団体への所有者、役員、または管理職としての支配

除外による効果

除外された者によって提供された、または除外された者の指示または処方箋に基づいて提供された商品またはサービスに対しては、連邦のヘルスケアプログラムからの支払いは行われません。また、除外された個人または団体が提供した商品またはサービスに対して連邦のヘルスケアプログラムに提出された請求への支払いは、過払いとして扱われます。

また、OIG は、連邦のヘルスケアプログラムから支払いが行われる可能性のある商品やサービスを提供する目的で、連邦のヘルスケアプログラムへの参加から除外されていることを知っている、または知っているはずの個人または団体 を(雇用またはその他の方法で)手配または契約した個人および団体に対して、CMPを課す法的権限を有しています。

これに関して、OIGは、除外された個人および団体のリストであるList of Excluded Individuals and Entities(LEIE)を公開しています[7]。OIGは、過払いおよびCMPの責任を回避するため、連邦のヘルスケアプログラムに参加する団体に対して、個人及び団体を雇用または契約する前にLEIEを確認することや、現在の従業員および請負業者の除外状況を判断するためにLEIEを定期的に確認することを推奨しています。

6. Civil Monetary Penalties Law(CMPL)[8]

OIG は、Civil Monetary Penalties Law(CMPL、民事罰金法)に基づき、CMP損害賠償に代わる賦課金連邦のヘルスケアプログラムからの除外を求めることができます。この権限により、OIGは、連邦のヘルスケアプログラムや他のHHSのプログラムに関連する様々な不適切な行為に対処しています。

CMPLは一見するとFalse Claims Act(FCA)と似た部分もありますが、FCAの案件はDOJ(司法省)がHHS(保健福祉省)に代わって連邦裁判所で追求するのに対して、CMPLの案件は、OIGがHHS内の手続として行政法判事の下で追求する行政事件となります。

CMPLは、行為の類型ごとに罰金額を定めています。例えば、虚偽の請求には、虚偽の請求があった商品またはサービス1件につき最大2万ドルの罰金が課され、不適切なキックバック行為には、違反1件につき最大10万ドルの罰金が課されます。

以下は、CMPの責任を問われる可能性のある行為の例です。

  • 請求通りに提供されていない商品やサービスに関する請求であること、あるいは虚偽または不正な請求であることを知っている、あるいは知るべきであるはずの請求を提示すること

  • 連邦のヘルスケアプログラムから支払いが行われる商品やサービスを提供する目的で、連邦のヘルスケアプログラムへの参加から除外されていることを知っている、あるいは知るべきである個人または団体を手配したり、(雇用その他の方法で)契約したりすること

  • 医療上必要でないことを知っている、あるいは知るべきである医療その他の商品またはサービスの請求を提示すること

  • AKS に規定されている行為を行うこと

  • 判明している過払い金を報告せず、返還しないこと

  • 緊急の病状または陣痛で病院の救急部門に来院した患者に対して、適切な検診を提供しないこと

  • 連邦のヘルスケアプログラムの下で提供された商品またはサービスに対する虚偽または不正な支払い請求のための虚偽の記録や陳述を作成すること


前回の投稿から2回にわたってHealthcare Fraud and Abuseに関する法律を紹介してきました。日本では馴染みのない法律も多くありますが、ヘルスケアに関する不正行為には、民事、刑事、行政それぞれの観点から重いペナルティが課されるということを認識いただけたのではないかと思います。

次回は、これらの不正行為を防止するためのコンプライアンスプログラムの考え方を示している「General Compliance Program Guidance」を紹介いたします。


[1] 42 U.S.C. § 1320a-7b(b)

[2] HHS(https://oig.hhs.gov/compliance/physician-education/fraud-abuse-laws/

[3] 42 U.S.C. § 1320a-7b(b)(3)(B)

[4] 42 U.S.C. § 1395nn

[5] CMS(https://www.cms.gov/medicare/regulations-guidance/physician-self-referral?redirect=/physicianselfreferral/)を参照しています。

[6] 42 U.S.C. § 1320a-7

[7] https://exclusions.oig.hhs.gov/にてLEIEのデータベースを検索できます。

[8] 42 U.S.C. § 1320a-7a

(写真:ホワイトハウス)

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