干物作りの楽しみ方
はじめに
魚を開き、塩水へくぐらせ、表面の水分をそっと拭き取る。
いつもの鮮魚が網の上へ並ぶと、それだけで少し違った食材に見えてきます。時間を置いて表面がさらりと乾き、焼いたときに皮が香ばしく立ち上がるところまで、自分の手でつないでいくのが干物作りです。
「魚をさばけないと難しいのでは」「専用の干し網が必要?」「外へ干して傷まないか心配」と感じるかもしれません。けれど、最初から大きな魚を一尾さばいたり、何日も天日へ干したりする必要はありません。魚売り場で開いてもらったアジなどを使い、塩をして冷蔵環境で短時間乾燥させるところから始めると、家庭でも工程を追いやすくなります。
干物というと保存食の印象がありますが、現在よく食べられている一夜干しのようなものは、昔ながらの乾物ほど水分を抜いているわけではありません。家庭で作る場合も「塩をしたから長持ちする」と考えず、生魚を扱う料理の延長として冷蔵・冷凍し、食べるときは十分に加熱することが大切です。
魚をただ焼くのとは少し違い、水分をどこまで抜くか、塩をどの程度きかせるか、どの魚を使うかによって仕上がりが変わる。干物作りは、台所で魚そのものをじっくり知っていける、小さな食の手仕事です。
干物作りの基本情報
主な楽しみ方 魚を下処理し、塩をして乾燥させ、自家製の一夜干しや塩干しを作る
おすすめの頻度 月1〜2回ほど
一回の作業時間 下処理から干し始めるまで30〜60分ほど
乾燥にかかる時間 数時間〜半日ほどを目安に、魚の大きさや方法に合わせる
最初に作りやすい魚 アジ、イワシ、カマスなど、比較的小ぶりで干物に向く魚
主な場所 自宅の台所と冷蔵庫。季節や環境が合えば、衛生対策をしたうえで屋外乾燥もできる
始めやすさ 包丁、まな板、ボウル、バットなど家庭の調理道具を使えるため、新しくそろえる物は少ない
難しさを感じやすいところ 魚の下処理、塩加減、乾燥具合の見極め。最初は一種類の魚を少量だけ作ると違いをつかみやすい
干物には、魚をそのまま乾燥させる素干し、塩をしてから乾燥させる塩干し、みりんなどで味付けして乾燥させる調味干しなど、さまざまな種類があります。
家庭で最初に取り組みやすいのは、アジなどの魚を開き、塩水に漬けてから表面を乾燥させる一夜干しに近い作り方です。工程が短く、一尾ごとの変化も見やすいため、「干すことで魚がどう変わるのか」を知る入口になります。
干物作りにかかる費用
干物作りは、専用機械を買わなくても始められます。包丁、まな板、ボウル、バットなどが家庭にあれば、初回の費用はほとんど魚代が中心です。
初めて作る日の費用
アジなどの魚 500〜1,500円ほど
塩 家庭にあるものを使えば追加費用はわずか
キッチンペーパーなど 数十〜100円ほど
必要に応じて干し網や網付きバット 1,000〜3,000円ほど
合計すると、手持ちの道具を使う場合は一回600〜1,600円ほどから始められます。魚の種類、大きさ、尾数、季節によって価格差が大きいため、毎回同じ金額になる趣味ではありません。
高価な魚を使う必要もありません。最初は、その日の鮮魚売り場で状態のよい小ぶりの魚を2〜4尾ほど選び、少量を確実に扱う方が向いています。
毎回かかる費用
費用の中心は魚です。
アジやイワシなどを少量作る日なら1,000円前後で収まることもありますが、カマス、サバ、ホッケなど魚を変えたり、大きな魚を使ったりすれば1,500〜2,500円ほどになることもあります。
塩やキッチンペーパーは一回に使う量が少なく、専用の調味料も基本の干物には必要ありません。
月2回、一回1,000〜1,500円ほどの魚を使うなら、年間の材料費はおおよそ24,000〜36,000円ほど。とはいえ、夕食用に購入する魚を「今日はそのまま焼かず、干物にしてみる」という楽しみ方なら、すべてを趣味の追加費用として考える必要はありません。
続けるなら追加できる道具
干し網 1,000〜3,000円ほど
網付きバット 1,000〜2,000円ほど
食品用温度計 1,000〜3,000円ほど
家庭用フードドライヤー 数千円〜1万円台程度から
フードドライヤーがあれば、天候に左右されにくくなりますが、最初から必要なものではありません。干物を何度か作り、「もっと乾燥条件をそろえたい」と感じてから検討するくらいで十分です。
干し網も屋外乾燥をしなければ必須ではありません。専用品を先に増やすより、まず家庭にあるバットや網を使い、自分がどのくらいの頻度で作りたいのか確かめる方が無駄を減らせます。
干物作りをおすすめする3つの理由
1.同じ魚でも、水分が抜けるだけで味と食感が変わる
生のアジと、一晩ほど乾燥させたアジ。
使っている魚は同じでも、焼いたときの仕上がりはかなり違って感じられます。表面の余分な水分が減ることで皮は香ばしく焼けやすくなり、身には魚そのものの味がまとまって感じられるようになります。
干しすぎなければ、身の中にはほどよく水分が残ります。外側には焼き目が付き、中はふっくらとしている。その境目を自分で作れるところが、市販品を焼くだけでは味わいにくい面白さです。
一回目は少ししっとり、次はもう少し乾かしてみる。二尾を別々の時間で引き上げて食べ比べるだけでも、乾燥という工程が味へどう影響するかが分かってきます。
2.魚ごとの違いを、料理する前から楽しめる
干物作りを始めると、魚売り場を見る目が少し変わります。
アジはどう開くのか。イワシなら丸干しにできるのか。脂のあるサバを干すとどうなるのか。季節によって並ぶ魚が変わるたび、「これは干したらどんな味になるだろう」と考えられるようになります。
魚料理では、焼く、煮る、揚げるといった調理法へ目が向きます。干物ではその前に、魚の大きさ、身の厚み、脂、水分、皮の状態を見ることになります。
同じ塩水と同じ乾燥時間でも、小さな魚と厚い切り身では仕上がりが同じになりません。魚そのものに合わせて工程を少しずつ変える必要があり、それが干物作りを単純な保存作業ではなく、何度も試したくなる料理にしています。
3.仕込む時間と食べる時間が分かれている
干物作りには、料理を一気に完成させない面白さがあります。
午前中に魚を買い、昼過ぎに下処理をする。塩をして冷蔵庫へ入れ、夕方に状態を確認する。翌朝、表面がほどよく乾いた魚を冷凍し、数日後の夕食に焼く。
作業そのものは長くありませんが、完成までに時間が挟まります。その待ち時間も含めて一つの仕込みになるため、休日に少しだけ台所仕事をしたいときにも向いています。
味噌や梅干しのように何か月も待つわけではなく、夕食のおかずのように一時間ですべて終わるわけでもない。その中間にある、半日から一日ほどの時間が、干物作りならではのちょうどよい楽しさです。
最初の一枚は、アジの開きから
初めてなら、アジが分かりやすい魚です。
スーパーや鮮魚店では、一尾のまま販売されていても「開きにしてください」と頼めることがあります。魚をさばくところまで一度に覚えようとせず、最初は下処理をお願いし、塩と乾燥の工程だけ経験する方法でも十分です。
用意するものは多くありません。
アジ
塩
水
ボウル
キッチンペーパー
バット
網またはざる
保存容器や冷凍用袋
包丁とまな板は、丸魚を自分で処理するときに使います。魚を開いた状態で購入するなら、最初の一回は包丁作業をほとんどせずに作ることもできます。
魚を選ぶ
干物は乾燥させるからといって、鮮度が落ちた魚を使う料理ではありません。
魚の状態を確認し、購入後は寄り道せず持ち帰ります。気温の高い日は保冷バッグや保冷剤を使い、帰宅したらすぐ冷蔵庫へ入れます。
丸魚を自分で扱う場合は、できるだけ早く内臓を取り除きます。作業を始める直前まで冷やし、台所へ長時間出したままにしないことが基本です。
開いて、きれいにする
アジの干物では、腹側または背側から開き、内臓やえらを取り除いて平らな形にします。
最初からきれいな開き方を目指さなくても大丈夫です。骨に多少身が残ったり、左右の厚みがそろわなかったりしても、自宅で食べる一枚なら問題ありません。
ただし、内臓や血のかたまりが残っていると臭いや傷みにつながりやすいため、ここは丁寧に確認します。水で洗った後は、キッチンペーパーで余分な水分をしっかり拭き取ります。
魚を洗った水や汁が周囲へ飛び散らないよう、作業範囲を小さくしておくと後片付けもしやすくなります。
塩加減で、干物の印象が変わる
下処理をした魚は、塩をしてから乾燥させます。
塩を直接振る方法もありますが、最初は一定濃度の塩水へ漬ける「立て塩」の方が、魚全体へ比較的均一に塩を回しやすくなります。
伝統的な塩干しでは10〜20%程度の塩水が使われることがありますが、実際の濃度や漬け時間は魚の種類、大きさ、厚みによって変わります。家庭では薄味の一夜干しも多いため、「濃いほど安全」と考えるのではなく、信頼できるレシピの塩分濃度と時間を一組として守る方が安心です。
二尾を作るなら、最初は同じ条件でそろえます。
一回作って塩辛ければ、次は漬け時間を短くする。味がぼんやりしていれば少し調整する。このように一度に一つだけ条件を変えると、自分の好みへ近づけやすくなります。
みりん、しょうゆ、砂糖、ごまなどを使った調味干しもありますが、最初から味を複雑にすると、塩と乾燥による変化が分かりにくくなります。まずは魚、塩、水だけで一枚作ってみると、干物そのものの面白さがよく見えます。
干す方法は、季節と暮らしに合わせる
「干物なのだから、日なたへ干さなければいけない」と思う必要はありません。
干物には天日乾燥もあれば、機械や乾燥設備を使う方法もあります。家庭では、冷蔵庫内で網付きバットにのせて表面を乾かす方法なら、外気温や虫の影響を受けにくく、初めてでも管理しやすくなります。
魚の下へ網を置くと、底面にも空気が触れます。途中で一度状態を見て、必要なら向きを変えます。
目指すのは、完全にカチカチになるまで水分を抜くことではありません。
表面へ触れたときに最初のような濡れた感じがなく、身が少し締まっている。それでいて内部には水分が残っているくらいが、一夜干しらしい仕上がりです。
冷蔵庫によって風の流れや湿度が違うため、「必ず何時間」と決めるより、最初の状態と数時間後を見比べます。作った日、魚、重さ、塩水、漬け時間、乾燥時間を簡単にメモしておくと、二回目からかなり調整しやすくなります。
屋外で干してみたい場合
涼しく乾いた季節には、干し網を使って屋外乾燥を楽しむ方法もあります。
風に当たりながら少しずつ表面が乾く様子は、干物作りらしい時間です。ただし、気温や湿度が高い日、雨の日、蒸し暑い時期は向きません。
虫や鳥が触れないよう干し網を使い、魚をむき出しでベランダへ置くことも避けます。住宅環境によっては魚のにおいが周囲へ広がるため、近隣への配慮も必要です。
天候が微妙なら「せっかく準備したから」と無理に外へ干さず、冷蔵庫へ切り替えます。
自然条件まで含めて楽しめるのが天日干しですが、干物作りは天日干しを成功させることが目的ではありません。安全に食べられる状態まで仕上げることを優先します。
焼く瞬間までが、干物作り
乾燥が終わった干物は、それで完成ではありません。
家庭で作る一夜干しは水分が残っているため、常温で長期保存できる乾物とは分けて考えます。その日のうちに食べない分は、冷蔵庫へ入れたまま長く置かず、早めに一枚ずつ包んで冷凍しておくと扱いやすくなります。
保存袋へ入れるときは、できるだけ空気を抜きます。作った日と魚の名前を書いておけば、冷凍庫の奥で分からなくなることもありません。
食べるときは中心まで十分に加熱します。
グリルなら皮や身の焼け方を見ながら火を通し、フライパンなら魚焼き用ホイルなどを使う方法もあります。干した魚は生魚より表面が乾いているため、焼き色が付きやすく、香ばしい香りも立ちやすくなります。
焼き上がった干物へ大根おろしを添える。
少しだけすだちやレモンを絞る。
炊きたてのごはんと味噌汁を合わせる。
特別な献立にしなくても、自分で仕込んだ一枚があるだけで、いつもの朝食や夕食が少し違って見えます。
魚を安全に扱うために
干物作りでは、乾燥そのものより「生魚を扱う料理」であることを忘れないことが大切です。
買ったら早く冷やす
魚は購入後、できるだけ早く冷蔵します。
特にアジ、サバ、イワシ、サンマなどでは、常温に長く置くような扱いを避けます。こうした魚では、不適切な温度管理によってヒスタミンが生成されることがあり、一度できたヒスタミンは後から加熱しても取り除けません。
「最後に焼くから大丈夫」ではなく、買ってから食べるまで温度管理を続けることが大切です。
内臓は早めに取り除く
丸魚を使う場合は、鮮度のよいうちに内臓を取り除きます。
アニサキスはアジ、サバ、サンマ、イワシなどさまざまな魚介類に寄生することがあり、魚が死んで時間が経つと内臓から筋肉へ移動することがあります。
下処理の際には身を目で確認し、異物がないか見ます。
そして、塩をしたからアニサキスが死滅するわけではありません。家庭で一般的に行う塩漬けや酢による処理だけを対策として考えず、最後に十分加熱して食べます。
生魚に触れた器具をそのまま使わない
魚を切ったまな板や包丁、ボウルには、生魚の汁が付いています。
そのまま野菜や加熱済みの食品を置かず、作業後は洗剤でよく洗います。生魚を触った手も洗ってから、保存袋や冷蔵庫の取っ手などに触れるようにします。
台所が広くなくても、「魚を扱う場所」と「完成した物を置く場所」を分けるだけで交差汚染を減らせます。
においや見た目に違和感があれば食べない
乾燥途中で異常なにおいがする、表面に不自然な変化がある、温度管理に不安がある。
そうした場合は、「焼けば大丈夫」と自己判断して食べない方が安全です。
初めてのうちは大量に作らず、一回に二〜四尾ほどにすると、下処理、乾燥、保存まで目が届きやすくなります。
最初に必要な道具は、ほとんど台所にある
干物作り専用として必要なものは、意外と多くありません。
最初に必要なもの
包丁
まな板
ボウル
塩
計量器具
キッチンペーパー
バット
網またはざる
保存袋または保存容器
丸魚をさばかず、開いた状態で購入するなら、特別な魚用包丁も必要ありません。普段使っている包丁で扱える範囲から始められます。
続けるなら用意したいもの
網付きバット
魚専用として使いやすいまな板
食品用温度計
干し網
デジタルスケール
網付きバットがあると、冷蔵庫乾燥でも魚の底へ空気を通しやすくなります。
デジタルスケールは、魚や水、塩の量を毎回記録したいときに便利です。「前回は何となく塩を入れた」という状態から抜け出すだけで、同じ味を再現しやすくなります。
最初は買わなくてよいもの
大型のフードドライヤー
業務用の乾燥機
高価な出刃包丁
大型の干し網
魚専用の冷蔵庫
真空包装機
家庭で数尾の干物を作る段階では、なくても困らないものばかりです。
干物作りが定着してから、「雨の日にも多めに作りたい」「冷凍保存をもっと整えたい」と感じたときに、必要な物だけ増やします。
魚を変えると、また別の干物になる
一度アジを作ったら、次は同じ方法で別の魚を試せます。
イワシ
小ぶりなものなら扱いやすく、魚のうまみが濃く感じられます。身がやわらかいため、下処理では崩さないよう丁寧に扱います。
カマス
細長い魚で、開き干しにすると身の淡い味と香ばしい皮を楽しめます。アジとは違う上品な味わいを比べられます。
サバ
脂が多く、焼いたときの香りも強い魚です。厚みがあるため、小さなアジと同じ乾燥時間で考えず、身の状態を見ながら調整します。
切り身
丸魚だけが干物ではありません。
鮭や白身魚などの切り身を軽く塩で締め、冷蔵庫で表面を乾燥させる方法なら、魚を開く作業をせずに「水分を抜く料理」の面白さを試せます。
魚をさばくことと、干物を作ることを同時に覚える必要はありません。切り身、開き、小魚、丸魚と、少しずつ扱える範囲を広げれば十分です。
塩だけではなく、味の方向も広げられる
基本の塩干しに慣れたら、調味干しへ進めます。
みりん、しょうゆ、砂糖を使うみりん干しは、塩干しとは違う甘辛い香りが生まれます。表面へごまを加えると、焼いたときの香ばしさも変わります。
ただし、最初から何種類も仕込む必要はありません。
アジの塩干し。
次は同じアジのみりん干し。
その次は別の魚。
一回につき一つだけ条件を変えると、何が味を変えたのか分かります。
食べたときに「塩が少し強かった」「もう少し乾かした方が好き」「この魚は脂が多いから薄味が合う」と短く記録しておくと、レシピを見るだけだった干物作りが、少しずつ自分の料理へ変わっていきます。
続けるほど変わる五つの楽しみ方
第1段階 一枚のアジを干物にしてみる
最初は、下処理済みのアジを二尾ほど用意します。
塩をする、表面を乾かす、冷蔵・冷凍する、焼いて食べる。その一連の流れを一度経験することが、この段階の楽しみです。
市販の干物では見えなかった「魚が干物になる途中」を知るだけでも、十分に新鮮です。
第2段階 自分の好きな塩加減と乾き具合を探す
何度か同じ魚を作ると、好みが見えてきます。
薄味で身がやわらかい方が好きなのか。少し長く乾かし、皮を香ばしく焼く方が好きなのか。
塩分濃度、漬け時間、乾燥時間を少しずつ変えながら、自分の食卓に合う一枚を探します。ここでは新しい魚を増やすより、同じ魚を繰り返す方が違いを感じやすくなります。
第3段階 季節の魚へ広げる
基本が分かってきたら、魚売り場でその時期に並ぶ魚を見ます。
アジ、イワシ、カマス、サバなど、魚が変われば身の厚みも脂も違います。同じ干物という料理でも、魚ごとに塩の入り方や乾き方が変わります。
「今日は何を干そうか」と考えながら鮮魚売り場を見ること自体が、趣味の一部になっていきます。
第4段階 塩干しと調味干しを使い分ける
魚そのものの味を楽しみたい日は塩干し。
ごはんに合う甘辛い味が欲しい日はみりん干し。
小さな魚は丸干しにする。
同じ「干す」という工程から、複数の料理へ広げられるようになります。自分の好みだけでなく、一緒に食べる人や献立に合わせて仕込みを選ぶ楽しさも出てきます。
第5段階 季節の仕込みとして暮らしへ取り入れる
さらに続けると、干物作りを特別なイベントにしなくても楽しめるようになります。
魚売り場で状態のよい魚を見つけた日に二尾だけ仕込む。涼しく乾いた季節には天候を見ながら干す。何枚か作った日は冷凍し、忙しい日の夕食へ回す。
一枚の作品を完成させる趣味というより、魚と季節を見ながら食卓を整える習慣へ変わっていきます。
旅行先で土地の干物を食べれば、「どう開いているのだろう」「塩は強いだろうか」「自宅で近いものを作れるだろうか」と、以前とは違うところへ目が向くようになります。
あわせて楽しみたい関連する趣味
魚料理
魚料理は、焼く、煮る、蒸す、揚げるなど、魚ごとに合う調理法を探していく趣味です。干物作りで魚の身の厚みや脂、水分を見るようになると、生の魚を料理するときにも、その違いが分かりやすくなります。
燻製作り
燻製作りでは、食材へ煙の香りをまとわせながら、水分や温度を管理して仕上げていきます。干物とは方法が異なりますが、「食材から水分を減らすと、味や香りがどう変わるか」という部分でつながる楽しみがあります。
和食
自家製の干物が一枚できると、次に考えたくなるのが、ごはん、味噌汁、大根おろし、漬物などとの組み合わせです。干物だけを作って終わらず、一食としてどう整えるかまで楽しみたい人には、和食も自然につながります。
一枚の魚に、少しだけ時間を足してみる
鮮魚売り場で買った一尾を、その日のうちに焼く。
それも十分おいしい食べ方ですが、そこへ塩をする時間と、乾かす時間を少し足してみると、魚はまた違う表情を見せます。
水分を拭き取ったばかりの身が、数時間後には少し締まっている。翌日、それを火にかけると皮から香ばしい香りが立ち、箸を入れれば中にはまだやわらかな身が残っている。その変化を最初から最後まで自分で見られることが、干物作りの面白さです。
初めての休日なら、大きな干し網も特別な魚も必要ありません。
下処理をしてもらったアジを二尾買い、塩をして、冷蔵庫でゆっくり表面を乾かしてみる。
市販の干物を食べていたときには見えなかった半日ほどの時間が、一枚の魚の中にあることに気づけたら、そこから次に干してみたい魚もきっと増えていきます。
休日のよりみち帖では、気軽に試せるものから、少しずつ時間をかけて深めていくものまで、さまざまな趣味やレジャーを紹介しています。「次の休日は何をしよう」と迷ったとき、新しい楽しみを見つける小さなきっかけになれたらうれしいです。これからも思わず試してみたくなる趣味を丁寧に紹介していきますので、ぜひフォローして、次の記事も覗いてみてください。
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