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タティングレースの楽しみ方

はじめに

舟のような小さなシャトルから糸を引き出し、指へ掛けた輪の中をくぐらせる。表目と裏目を一つずつ結び、細い糸の上へ小さな結び目を並べていくと、やがて丸いリングの縁に、花びらのようなピコットが現れます。

タティングレースは、細い糸で作られた繊細な見た目から、「難しい技法をいくつも覚えなければ作れないのでは」と思われやすい手芸です。けれど、基本となる動きは限られており、最初は一つのシャトルとレース糸を使い、小さなリングを結ぶところから始められます。

編み針を何本も使う必要はなく、大きな作業場所も取りません。道具と制作途中の糸を小さなケースへまとめられるため、自宅の机ではもちろん、少し空いた時間にも取り出しやすい趣味です。

ただし、糸をただ結べば形になるわけではありません。結び目を芯の糸へ移し、あとから動かせる状態にする感覚をつかむことが、最初の大切な入口になります。今回は、自宅で月2回ほど取り組む場合を想定し、必要な道具、費用、基本の結び方、最初の作品、糸やシャトルの選び方、失敗したときの戻り方まで紹介します。


タティングレースの基本情報

主な楽しみ方 シャトルに巻いた糸で結び目を作り、リングや曲線をつないでレース模様を仕立てる

おすすめの頻度 月2回ほど。基本の動きに慣れる時期は、短時間でも週に数回触れると感覚を覚えやすい

1回の制作時間 約60〜110分

短時間で楽しむ場合 約20〜35分から

準備と片付けを含む時間 約70〜130分

主な場所 自宅の机、リビングの一角、個人の作業スペース

最初に必要なもの タティングシャトル、明るい単色のレース糸、糸切りばさみ

最初の作品 一つのリング、小さな花、しずく形のモチーフなど

始めやすいところ 道具が少なく、材料も小さなケースへ収まり、作品一つに使う糸も多くない

難しく感じやすいところ 結び目を正しく移す動きと、糸を引く力加減をつかむまでに練習が必要なこと

楽しさの中心 同じ結び目の反復から、リング、ピコット、曲線が少しずつ連なっていくこと

休日にまとまった時間が取れる日は、小さなモチーフを一つ仕上げられます。短時間だけ楽しみたい日は、シャトルへ糸を巻く、リングを一つ練習する、前回作ったモチーフの糸始末をするなど、工程を分けて進められます。

タティングレースは、糸を結んで作るレース

タティングレースは、舟形のシャトルへ糸を巻き、一定の結び目を繰り返して模様を作るレース技法です。かぎ針編みのように針で糸の輪を引き出して編み地を広げるのではなく、糸へ結び目を移しながらリングや曲線を作ります。

基本となる結び目は、表目と裏目を組み合わせたダブルステッチです。そこへ意図的に糸の間隔を残すと、小さな輪であるピコットができます。ピコットは飾りになるだけでなく、別のリングや曲線をつなぐ場所としても使われます。

一つのシャトルだけでも、リングを連ねた花や小さなモチーフを作れます。糸玉から続く糸や二つ目のシャトルを加えると、リングとリングの間へブリッジと呼ばれる曲線を作り、より複雑な模様へ広げられます。

見た目は細かくても、作品は同じ動きの組み合わせで作られています。最初から完成図のすべてを理解しようとせず、ダブルステッチ、ピコット、リングという順番で一つずつ覚えると、模様の構造が見えやすくなります。

タティングレースにかかる費用

入力データでは初期費用が約1万円とされていますが、シャトル、糸、糸切りばさみだけなら、そこまで大きな費用はかかりません。家庭に小さなはさみがある場合、基本の道具と糸を合わせて2,000円前後から試せます。

最小限の道具で始める場合

タティングシャトル 1個または2個で約500〜1,000円前後

レース糸 1玉約400〜800円前後

糸切りばさみ 手持ち品を使えば0円。新しく用意する場合は約500〜2,000円前後

初期費用の目安 約1,000〜3,000円前後

シャトルは一つでも練習できますが、色を替えたり、二本の糸を使った模様へ進んだりするときには、二つあると便利です。最初から五つ入りのセットや、複数の大きさをそろえる必要はありません。

初心者向けキットから始める場合

小さなモチーフやアクセサリーのキット 約1,500〜4,000円前後

キットには、作品に必要な糸、金具、作り方の説明などがまとまっています。商品によってシャトルが含まれるものと含まれないものがあるため、購入前に内容を確認します。

初回は、完成写真の華やかさだけでなく、使用する技法が少ないものを選びます。「初心者向け」「基本のリングで作る」「写真や動画による説明がある」といった表示があると進めやすくなります。

一作品にかかる材料費

小さな花やしずく形のモチーフは、糸を一玉すべて使うわけではありません。一玉の糸から複数の小作品を作れるため、一作品分の糸代は数十円から数百円ほどに収まることがあります。

ピアス、イヤリング、ネックレスなどへ仕立てる場合は、金具、丸カン、チェーン、ビーズなどの費用が加わります。小さなアクセサリーなら、一作品あたり約200〜1,000円前後を見ておくと、材料を選びやすくなります。

大きなドイリー、つけ襟、長い縁飾りなどは使用する糸の量が増えます。完成までに複数の糸玉が必要になることもあるため、最初から大作を選ばず、小さなモチーフで糸の使い心地を確かめます。

続ける場合の年間費用

月2回ほど、小さなモチーフやアクセサリーを作るなら、年間の材料費は約5,000〜15,000円前後が一つの目安です。金具やビーズを多く使う場合、教室へ通う場合、さまざまな色の糸を集める場合は費用が増えます。

一方で、同じ糸を複数の作品へ使い、手持ちのシャトルを続けて使えば、毎回必要なのは少量の糸だけです。シャトルは消耗品ではないため、通常の使い方であれば頻繁に買い替える必要はありません。

教室やワークショップへ参加する場合

1回完結の体験講座は、材料費を含めて約2,000〜5,000円前後が目安です。定期教室では、月謝や回数券のほか、教材費、糸代、交通費がかかる場合があります。

タティングレースでは、結び目を移す動きが写真だけでは分かりにくいことがあります。動画を見ても手の動きがつかめない場合は、一度だけ体験講座へ参加し、糸の持ち方と力加減を見てもらう方法もあります。

費用を抑える方法

最初は、標準的な大きさのシャトル一つ、見やすい色の太めの糸一玉、手持ちのはさみだけで始めます。細い糸、ラメ糸、段染め糸、ビーズ、アクセサリー金具は、基本の結び目が作れるようになってから加えれば十分です。

糸は色数を一度に増やさず、一作品に使う量を確かめてから買い足します。最初から大巻きを選ぶより、使いやすい太さと色を見つけるために、小巻きの糸を一つ試すほうが無駄を減らせます。

タティングレースをおすすめする3つの理由

1.一本の糸から、輪と曲線が立ち上がる

作業を始めたとき、手元にあるのはシャトルへ巻かれた一本の糸だけです。表目と裏目を繰り返し、並んだ結び目を引き寄せると、まっすぐだった糸が丸いリングへ変わります。

リングの縁へピコットを加えると、花びらや小さな歯車のような形が現れます。次のリングをつなげれば小さな花になり、ブリッジを加えれば、模様の間にやわらかな曲線が生まれます。

布を切って形を作るのではなく、糸の結び目そのものが輪郭になります。細い糸が少しずつ模様へ変わっていく過程を、指先に近い場所で見られることが、タティングレースならではの魅力です。

2.少ない道具で、続きから始めやすい

基本の制作に必要なのは、シャトル、糸、はさみという小さな道具です。針を何本も並べたり、布を広げたりする必要がなく、机の一角でも取り組めます。

制作途中の作品も、シャトルと一緒に小さな袋やケースへ収められます。前回どこまで進めたかをメモしておけば、次の休日に同じ場所から再開できます。

数十分だけ時間がある日は、リングを二つ進めるだけでもかまいません。大きな作品を一度に完成させるのではなく、一つの結び目、一つのリングを積み重ねられるため、暮らしの中へ取り入れやすい手芸です。

3.小さなモチーフから、身につける物や飾りへ広がる

小さな花を一つ作れたら、そのままカードへ添えたり、布小物へ縫い付けたりできます。金具を加えれば、ピアス、イヤリング、ペンダント、ブローチなどのアクセサリーにも仕立てられます。

同じモチーフを複数つなぐと、しおり、コースター、ドイリー、つけ襟などへ広がります。布の端へ縫い付けて、ハンカチやポーチの縁飾りにする楽しみ方もあります。

糸の色や太さを替えるだけでも、同じ図案の印象は変わります。白い細糸なら静かなレースらしさが生まれ、明るい太糸なら結び目がはっきり見える親しみやすい作品になります。一つの基本模様から、用途と雰囲気を変えられるところも長く楽しめる理由です。

初めて用意したい道具と材料

タティングシャトル

タティングシャトルは、糸を巻いて使う舟形の道具です。中央へ糸を巻き、先端から必要な長さを少しずつ引き出しながら結び目を作ります。

初回は、標準的な大きさで、先端に角の付いたシャトルが使いやすいでしょう。角は、ピコットへ糸を通して模様をつなぐときに役立ちます。かぎ針が先端に付いた製品もありますが、まずは一般的な角付きシャトルから試せます。

シャトルには、一体型とボビンを交換できる型があります。一体型は構造が簡単で軽く、最初の一つに選びやすい形です。交換式は糸の入れ替えがしやすい一方、ボビンや本体の感触に好みが分かれるため、必要になってから検討します。

大きなシャトルは多くの糸を巻けますが、手の大きさによっては扱いにくく感じます。最初は容量よりも、指で無理なく持ち、糸を引き出しやすい大きさを優先します。

レース糸

初めての糸には、明るい単色の太めのレース糸が向いています。白、生成り、淡い水色、薄い桃色などは結び目の形が見えやすく、表目と裏目を確認しやすくなります。

黒や紺などの濃い糸は、結び目の境目が見えにくいことがあります。細い糸や毛羽のある糸、ラメ糸、色が短い間隔で変化する段染め糸も、基本の動きに慣れてから試すと扱いやすくなります。

タティング専用糸のほか、作品に合ったレース糸を使えます。ただし、やわらかすぎる糸や毛羽立ちやすい糸は、結び目を移すときに引っかかる場合があります。最初は、表面が滑らかで、結び目をほどくときにも糸の構造が分かりやすい綿糸が無難です。

糸切りばさみ

細い糸をきれいに切れる、小型の手芸用はさみがあると便利です。家庭にあるはさみを使う場合は、糸を引きちぎらず、端を整えて切れるか確認します。

作品のすぐ近くで糸を切ることもあるため、大きな裁ちばさみより、先端を動かしやすい小型のはさみが向いています。使用後は刃を閉じ、シャトルや作品と分けて保管します。

続けるなら加えたいもの

二つ目のシャトル、細いかぎ針、ピコットゲージ、細いとじ針、ビーズ通し、作業中の糸をまとめるケースなどは、作りたい作品に合わせて加えます。ピコットゲージは、ピコットの長さを一定にしたいときに使う道具ですが、初回から必須ではありません。

細いかぎ針は、ピコットへ糸を通してつなぐときに役立ちます。角付きシャトルで作業できる場合もあるため、使っている図案やシャトルに合わせて選びます。

最初は買わなくてよいもの

何色ものシャトル、大量のレース糸、専用収納棚、高価なアクセサリー金具は、最初には必要ありません。細糸用と太糸用の道具を一度にそろえるより、一つの糸とシャトルで基本の結び目を安定させることを優先します。

ビーズを使った作品も華やかですが、糸へビーズを通す順番や、シャトルへ巻ける量まで考える必要があります。まずは糸だけの小さなモチーフを作り、リングとピコットの動きが分かってから挑戦します。

最初は、リング一つをきれいに閉じる

初めての作品では、複数の模様が連なる大きなドイリーより、一つのリングや、リングを数個つないだ小さな花を選びます。最初の目標は、華やかな作品を作ることではなく、結び目が動く状態を作り、リングを閉じる流れを知ることです。

1.シャトルへ糸を巻く

シャトルの中央へ、糸が片側へ偏らないように巻きます。必要以上に詰め込むと、シャトルの先端が開いたり、糸を引き出しにくくなったりするため、最初は少量で十分です。

糸玉から直接シャトルへ巻き、練習に必要な長さを残して切ります。図案に指定がある場合は、その長さと巻き方を優先します。

2.糸を指へ掛ける

シャトルから引き出した糸で輪を作り、利き手と反対側の指へ掛けます。指を少し開き、輪の張りを調整しながら、シャトルを持つ側の手で糸をくぐらせます。

最初は、手を大きく開きすぎたり、反対に糸を強く張りすぎたりしやすくなります。指が疲れない程度の張りを保ち、結び目を一つ作るたびに持ち方を確認します。

3.表目と裏目を結ぶ

表目と裏目を順番に作り、二つで一つのダブルステッチにします。大切なのは、結び目が固定される糸を取り違えないことです。

正しく結べていると、作った目を芯になる糸の上で動かせます。目が動かない場合は、そのまま数を増やさず、糸の通し方と力の向きを見直します。

4.結び目が動くか確かめる

数目作ったところで、結び目を指で軽く動かしてみます。芯の糸の上を目が移動できれば、リングを閉じられる状態です。

最初のうちは、すべて結んでから間違いに気づくより、二目、三目ごとに動きを確かめます。短い間隔で確認すると、ほどいて戻る範囲も小さくできます。

5.ピコットを作る

ピコットを作る場所では、前の目との間に少しだけ糸を残し、次の目を結びます。その間隔が、リングを閉じたときに小さな輪として立ち上がります。

最初からすべて同じ大きさにそろえようとすると、手へ力が入りやすくなります。まずはピコットがどのように形になるかを確かめ、作品を重ねながら間隔を整えます。

6.リングを閉じる

指定された数の目を作ったら、結び目が動くことをもう一度確かめます。芯の糸をゆっくり引き、並んだ目を円の形へ寄せていくと、リングが閉じます。

強く一気に引くと、糸がねじれたり、ピコットがつぶれたりすることがあります。輪の形を見ながら少しずつ引き、最後に結び目を寄せます。

一つのリングが閉じれば、タティングレースの基本となる動きを一通り経験したことになります。最初のリングが少しゆがんでいても、どこで目が動き、どこで止まったのかを見られれば、次の練習につながります。

最初につまずきやすい「結び目を移す」動き

タティングレースを始めた人が迷いやすいのは、シャトルを糸の輪へ通すことより、結び目を正しい糸へ移す動きです。見た目では結び目ができていても、芯になる糸へ移っていなければ、目を動かせず、最後にリングを閉じられません。

糸を通したあと、両手で強く引き合うのではなく、片方の糸の張りをわずかに緩め、もう片方を張ることで、結び目が移ります。成功すると、目が芯の糸に沿って滑るようになります。

最初は表目だけを数回練習し、目が動くかを確かめます。次に裏目だけを練習し、最後に表目と裏目を一組として結びます。二つの動きを一度に覚えようとせず、手順を分けると違いが分かりやすくなります。

写真では糸が重なって見え、どちらを緩めるか判断しにくいことがあります。公式の解説動画などで、手の動きをゆっくり確認し、必要なら再生を止めながら同じ位置へ糸を置きます。

何度試しても目が移らないときは、糸を強く握りすぎていないかを確認します。指へ掛けた糸を張り続けたままでは、結び目が移る余地がなくなります。わずかに緩める瞬間を作ると、動きが見つかることがあります。

リング、ピコット、ブリッジを順番に覚える

リング

リングは、ダブルステッチを並べ、最後に芯の糸を引いて円形へ閉じた部分です。花びら、葉、しずく、円形の模様など、さまざまな形の土台になります。

最初は同じ目数のリングを繰り返し、閉じたあとの大きさを比べます。目の数が同じでも、糸を引く強さによって大きさが変わるため、自分の力加減を知る練習になります。

ピコット

ピコットは、目と目の間へ残した小さな糸の輪です。飾りとして並べるほか、別のリングやブリッジをつなぐ場所になります。

長いピコットは軽やかで華やかに見え、短いピコットは模様が詰まって見えます。最初は図案どおりの位置へ作ることを優先し、長さの調整は作品を重ねながら覚えます。

ブリッジ

ブリッジは、リングとリングの間などへ作る弧状の部分です。糸玉から続く糸や二つ目のシャトルを使い、リングとは異なる持ち方で結び目を並べます。

リングだけの作品に慣れてからブリッジを加えると、手の持ち替えや糸の役割を理解しやすくなります。リングとブリッジが交互に並ぶと、花、雪の結晶、縁飾りなど、タティングレースらしい広がりのある模様を作れます。

ピコットをつなぐ

二つ目のリングを作る途中で、前のリングのピコットへ糸を通すと、別々だった模様をつなげられます。シャトルの角や細いかぎ針でピコットから糸を引き出し、その輪へシャトルを通してから次の目を作ります。

つなぐ場所を間違えると模様の向きが変わるため、図案上の印を確認します。リングを閉じる前に、前の模様との位置関係を見る習慣を付けると、早めに間違いへ気づけます。

目の大きさと力加減をそろえる

最初の作品では、目の大きさやピコットの長さが少しずつ違っていても不自然ではありません。大切なのは、強く締めることではなく、毎回なるべく近い力で結ぶことです。

目を固く締めすぎると、芯の糸の上で動かしにくくなり、リングも閉じにくくなります。反対に緩すぎると、結び目の間に隙間ができ、完成後に形が崩れやすくなります。

一目ずつ完成形へ押し込もうとせず、結び目を作り、前の目へ静かに寄せる動きを繰り返します。数目ごとに全体を見て、詰まりすぎていないか、目が動くかを確認します。

同じ図案を、同じ糸でもう一度作ることもよい練習です。一作目と二作目を並べると、リングの大きさやピコットの間隔がどのように変わったかを確認できます。

うまくいかないときの見直し方

リングが閉じない

リングが閉じない場合は、途中の目が芯の糸へ正しく移っていない可能性があります。無理に強く引かず、目がどこまで動くかを確認します。

閉じる前であれば、動かない目までゆっくり戻り、結び直せることがあります。何度も糸を引いて毛羽立ってきた場合は、短い練習部分として残し、新しい糸でやり直す方法もあります。

途中で目が動かなくなる

最初の数目は動くのに、途中から止まる場合は、その場所で結び目が移っていない可能性があります。数目ごとに目を滑らせて確認すると、早い段階で気づけます。

糸を強く締めすぎても動きにくくなります。目を作った直後に強く引き切らず、芯の糸を保ったまま前の目へ寄せます。

ピコットの長さがそろわない

最初は目測で作ってもかまいませんが、作品全体で長さをそろえたい場合は、厚紙へ印を付けた簡単な目安や、市販のピコットゲージを使えます。

ただし、すべてのピコットが同じ長さとは限りません。図案によって、飾り用、つなぎ用、長い装飾用が分かれているため、作る位置も確認します。

リングの向きを間違える

複数のリングを作ると、作品の表裏や次に向ける方向が分からなくなることがあります。リングを閉じる前に、完成図と現在のモチーフを机へ置き、次のリングがどちらへ開くかを確認します。

向きを変える工程がある図案では、説明にある「返す」「リバースワーク」などの指示を見落とさないようにします。迷った場所へ小さな付箋を貼ると、再開するときにも位置を確認しやすくなります。

糸がねじれる

シャトルを何度も回すうちに、糸へねじれがたまることがあります。シャトルを一度手から離し、糸が自然に戻るまで下へ垂らすと、ねじれを減らせます。

無理に指でしごくと糸が毛羽立つことがあるため、作品を持ったまま静かにねじれを逃がします。

最初の作品は、小さな花かしずく形から

初回には、リング一つで作るしずく形や、同じリングを数枚つないだ小さな花が向いています。使う技法が少なく、目の数とピコットの位置を確認しやすいためです。

一色の太めの糸で作り、完成したモチーフは紙の上へ置いて形を見ます。多少ゆがんでいても、最初の一つは結び方と閉じ方を覚えた記録になります。

二つ目には、リングとブリッジを交互に使う小さな円形モチーフを選びます。三つ目以降で、ピコットを複数箇所へつなぐ作品や、二色の糸を使う作品へ進むと、技法が急に増えすぎません。

アクセサリーに仕立てる場合も、最初から左右同じ大きさが必要なイヤリングを選ぶより、一つで完成するペンダントトップやブローチが取り組みやすいでしょう。一つのモチーフを最後まで仕上げてから、同じ物を二つ作る練習へ進みます。

糸の太さと色で、同じ図案の表情が変わる

太めの糸は結び目が見えやすく、リングやピコットも大きく仕上がります。練習用のモチーフ、存在感のあるアクセサリー、バッグへ付ける飾りなどに向いています。

細い糸では、一つひとつの目が小さくなり、繊細で軽やかなレースに仕上がります。ただし、目の位置や間違いを見つけにくくなるため、基本の動きが安定してから挑戦します。

単色の糸は結び目と模様の形が分かりやすく、図案を確認しながら作る練習に向いています。段染め糸は、結んでいるうちに自然に色が変わり、同じ図案でも一つずつ異なる表情が生まれます。

ラメ糸や金属的な光沢のある糸は、アクセサリーや季節の飾りに華やかさを加えます。一方で、糸の種類によっては滑り方や硬さが異なるため、最初から大きな作品へ使わず、小さなリングを一つ作って扱いやすさを確かめます。

余った糸を組み合わせるときは、太さの差にも目を向けます。大きく異なる糸を同じ図案へ使うと、リングの大きさや結び目の密度が変わります。違いを表現として使う場合を除き、近い太さの糸を選ぶと形をそろえやすくなります。

作品を仕上げ、形を整える

最後まで結び終えたら、図案の指示に従って糸端を始末します。結び目へ糸端を通す、裏側へ縫い込む、専用の仕上げ剤を少量使うなど、作品と糸に合った方法を選びます。

糸端を短く切りすぎると、処理しにくくなります。必要な長さを残してからシャトルの糸を切り、仕上げが終わったあとに余分を整えます。

完成したモチーフが少し波打っている場合は、糸の取り扱い表示を確認したうえで、形を整えて乾かします。台へ無理に強く引っ張るのではなく、リングやピコットを指で整え、本来の形へ近づけます。

アクセサリー金具を付ける場合は、モチーフの一部分へ負担が集中しない場所を選びます。丸カンが開いていないか、糸が金具の角で傷つかないかも確認します。

洗える糸で作った作品でも、ビーズ、接着剤、金具を加えると扱い方が変わることがあります。完成品を身につけたり贈ったりするときは、糸と副資材の両方に合った手入れ方法を考えます。

作品と道具を小さくまとめて保管する

制作途中のモチーフ、使用中のシャトル、同じ色の糸、図案は、一つの袋やケースへまとめます。別の作品の糸と混ざらず、次に開いたときも同じ材料で再開できます。

シャトルへ糸を巻いたまま保管する場合は、糸端がほどけないよう、シャトルの切れ込みやケースへ収めます。糸を強く巻いたまま長く置くと癖が付くことがあるため、途中作品がないシャトルは必要に応じて糸を外します。

図案には、現在のリングや段へ印を付けます。「リングを三つ完成」「次は二つ目のピコットへ接続」など、一行だけ書いておくと、数週間空いても戻りやすくなります。

はさみ、細いかぎ針、とじ針などは、作品と一緒に無造作へ入れず、小さな道具入れへ分けます。針や金具の数を確認し、床や布の間に残っていないことを見てから片付けます。

長く楽しむために気をつけたいこと

タティングレースでは、細い糸と小さな結び目を長く見続けます。作業面を明るくし、手元を見るために顔を近づけすぎないよう、糸の色が無理なく見える位置へ整えます。

30分から1時間ほど作業したら、シャトルを置き、指を開閉します。肩を動かし、遠くを見てから再開すると、同じ姿勢と細かな視線を区切れます。

糸を強く引く動きを繰り返すと、指先へ糸が食い込んだり、親指や手首が疲れたりすることがあります。固く締めるほどきれいになるわけではないため、目が動く程度の力を保ちます。

はさみ、かぎ針、とじ針など、先端のある道具は使用後に本数と置き場所を確認します。小さなシャトルやビーズは、子どもやペットが口へ入れない場所へ保管します。

アクセサリーを作る場合は、使用する金具の素材も確認します。自分以外の人へ贈る、販売する場合は、金属の種類、強度、手入れ方法など、分かる範囲を伝えます。

図案や作品を公開・販売するときは、使用したレシピの利用条件を確認します。完成品の販売を認めているか、作者名の表示が必要か、図案や制作途中の画像を転載できるかは、教材や作者によって異なります。

続けるほど変わる五つの楽しみ方

第1段階 結び目を移し、リングを一つ閉じる

最初は、表目と裏目を一組ずつ作り、結び目が芯の糸の上を動く状態を覚えます。数目ごとに動きを確認し、最後に糸を引いてリングを閉じます。

小さな輪が一つできれば、基本の流れを経験できています。形が少しゆがんでいても、正しく動いた目と、途中で止まった目を見比べることが、次の一つにつながります。

第2段階 同じ大きさのリングとピコットを並べる

基本の動きに慣れたら、同じ目数のリングを繰り返します。糸を引く力、目を寄せる位置、ピコットへ残す間隔を意識し、一作目よりも落ち着いて形を整えます。

花びらのようにリングをつないだ小さなモチーフでは、一つずつの違いが全体の表情になります。完全に同じでなくても、どの部分をそろえたいかが見えるようになります。

第3段階 ブリッジ、接続、二色使いへ広げる

リングへブリッジを組み合わせると、模様の間へ曲線が生まれます。前のピコットへ次のリングをつなぎ、複数の部分を一つのレースへまとめます。

二つのシャトルや別の色の糸を使えば、リングとブリッジの色を分けることもできます。図案を追うだけでなく、糸がどの道筋を通って模様になっているかを考える楽しさが増えていきます。

第4段階 糸と用途を選び、作品群へ育てる

技法が安定すると、同じ図案を太糸、細糸、段染め糸、ラメ糸で作り比べられます。アクセサリー、縁飾り、季節のオーナメントなど、完成後の使い方に合わせて素材を選びます。

花、雪の結晶、植物、幾何学模様といったテーマを決め、同じ色や雰囲気で複数の作品を作ることもできます。一つのモチーフが、少しずつ自分らしいシリーズへ育っていきます。

第5段階 レースを暮らしや人とのつながりへ広げる

完成したモチーフを布小物へ縫い付ける、カードへ添える、アクセサリーへ仕立てるなど、作品の居場所を考えます。図案を読み解く楽しさから、自分で目数やつなぎ方を考える制作へ進むこともできます。

作品を記録して公開する、展示へ参加する、誰かへ贈る、依頼に合わせて色を選ぶといった広がりもあります。販売や指導は選択肢の一つですが、必ず目指す必要はありません。

同じ結び目を静かに繰り返し、自分のための一枚を作り続けることも、十分に深い楽しみ方です。タティングレースは、作品の大きさではなく、一本の糸とどのような時間を重ねたいかによって続け方を選べます。

あわせて楽しみたい関連する趣味

マクラメ

マクラメは、ひもを手で結び、模様や立体的な形を作る手芸です。タティングレースより太いひもを使うことが多く、結び目と力加減がそのまま模様になる感覚を、より大きな動きで楽しめます。

細い糸の結び目に疲れた日は、キーホルダーやコースターなど、手元で構造を確認しやすい作品へ気分を変えられます。


刺繍

刺繍は、布へ針を通し、糸で線や面、模様を加える手芸です。タティングレースのモチーフを布へ縫い付け、周囲へ刺繍を加えると、糸だけで作ったレースと布の表現を一つの作品へ組み合わせられます。

同じ細い糸を扱いながら、空中で輪郭を作るタティングレースと、布の上へ模様を残す刺繍の違いを楽しめます。


編み物

編み物では、かぎ針や棒針を使い、糸の輪を連ねて平面や立体の編み地を作ります。タティングレースより大きな面を作りやすく、コースター、袋物、帽子、衣類など、日常で使う作品へ広げられます。

編み物で作った小物の縁へタティングレースを加えたり、余った糸を小さなモチーフへ使ったりと、二つの手芸を行き来することもできます。


小さなシャトルから、糸の花がほどけていく

最初にシャトルへ巻かれた糸は、まだ一本の細い線にすぎません。表目と裏目を重ね、ピコットのための間を残し、最後に糸を引くと、その線が丸いリングへ変わります。

初めから目を均一にそろえたり、細い糸で大きな作品を仕上げたりする必要はありません。まずは明るい色の太めの糸を選び、結び目が動くことを確かめながら、リングを一つ閉じてみてください。

その一つを隣へつなぐと花になり、曲線を加えるとレースらしい広がりが生まれます。小さなシャトルと一本の糸の間から、休日の机に置ける繊細な模様が、少しずつ立ち上がっていきます。


休日のよりみち帖では、気軽に試せるものから、少しずつ時間をかけて深めていくものまで、さまざまな趣味やレジャーを紹介しています。「次の休日は何をしよう」と迷ったとき、新しい楽しみを見つける小さなきっかけになれたらうれしいです。これからも思わず試してみたくなる趣味を丁寧に紹介していきますので、ぜひフォローして、次の記事も覗いてみてください。

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